クレナズム×クボタカイから映像作家 リチャード、ダンサー yurinasiaまで…‥カルチャーの複合で盛り上がる福岡シーンの今
音楽のみならず、様々なカルチャー同士が交差しながら互いに刺激を与え合っているのも福岡シーンが独自のブランド力を持ち始めた要因の1つと考えられる。
「フラッシュバック’82 feat.Rin音」のほか、Deep Sea Diving Club「cinematiclove」、Rin音「sleepy wonder」、クボタカイ「ベッドタイムキャンディー2号」のMVを手掛けたのは福岡在住の映像作家・リチャード。彼の作品はほとんどが県内で撮影され、土地に漂う空気感を見事にパッケージ。音楽とそれが生まれる場所を印象付けるのに大いに機能している。
日本テレビ系『スッキリ』でも紹介された福岡在住のダンサー・yurinasiaは運営するダンススクール・jABBKLABのメンバーとともに毎週金曜日にダンス動画をアップ。メジャー/インディー問わない選曲とオリジナリティ溢れる振り付けは注目を浴びつつあり、福岡のアーティストたちの楽曲を広く届けるきっかけとしても周知されつつある。
またクリエイティブクルー・BOATは現在の福岡カルチャーの連帯を語るうえで欠かせない。メンバー内にラジオディレクターを擁するMADE IN HEPBURNやメンバーが写真家やMV監督としても活動するYOHLUなどのバンド勢に加え、ラッパー、トラックメイカー、DJを含む総勢15人によるコレクティブで、楽曲、MV、写真や番組/イベントまでを創出する、表現の垣根なきチームだ。個々で活動しつつ、それぞれが適材適所でタッグを組む。この緩やかな繋がりと軽やかなフットワークは世代間を超えて福岡のクリエイターたちのスタンスとして共有されているように思う。
会場ごとにカラーが異なる沢山のライブハウス、個性的なブッキングを行うイベント制作会社、地域のインディーズミュージシャンを多く取り上げるラジオ局などももちろんだが、市を挙げて毎年9月に行われる音楽祭『FUKUOKA MUSIC MONTH』なども活発で、地域全体が積極的に若手アーティストをフックアップする意識を持っているのも特徴的だ。特定の誰かが力を持ち、福岡シーンを盛り上げているのではなく、アーティスト自身の発信力と、それを支えるメディアが今起こりつつあるムーブメントを形作っているのだ。
その他のバンド/アーティスト間の繋がりや、福岡在住のグラフィック/ファッションデザイナー、イラストレーターの存在など、記事内で紹介し尽くせないほどに福岡カルチャーの隆盛は留まることを知らない。この地にしっかりと定着しながら、どんな場所へも飛んでいける自由さは次世代のカルチャーシーンそのものを牽引していくのかもしれない。
■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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