映画『キャラクター』なぜ主題歌も“異色のキャスティング”に? プロデューサー 村瀬健が語る、ACAね×Rin音×Yaffleコラボの狙い
「Fukaseさんを見て『両角いた』と直感した」
売れない漫画家・山城圭吾は、ある日偶然、殺人事件の犯人・両角を目撃する。両角に強いインスピレーションを受けた山城は、両角をキャラクター化したサスペンス漫画を描き、大ヒット。ところが、作品内の事件を模倣した殺人が現実で発生するようになるーー。
完全オリジナル脚本の映画『キャラクター』。主演に菅田将暉と、俳優初挑戦となるFukaseという異色のキャスティングを配したこの映画の仕掛け人・村瀬健に、この映画、そして主題歌について話を聞いた。
いい奴だから悪人を描けない。そう言われ、漫画家を諦めかけていた山城は、両角と出会ったことで人生が一変する。それとともに、自分の中に潜んでいた残虐な側面を引きずり出されていくことになる。
「菅田将暉くんが、山城の気持ちがわかると言ったんです。自分は才能がないと思っていて、自分には打てないホームランを打っている人を見ると憧れるし、ああはなれないと思うことはよくあって、それがまさしく山城が両角を見た時に感じたことだと。だから、山城が両角を自分のキャラクター化してしまったように、才能を求めて禁断の木の実を齧る気持ちがよくわかる、と。今人気絶頂の菅田将暉でさえそれを思うんだとしたら、クリエイターってどこまでいっても“向こう側”に憧れている存在なのかもしれないと感じました」
そんな菅田/山城の対の存在である殺人鬼・両角にキャスティングされたのが、SEKAI NO OWARIのFukaseだ。
「両角は得体のしれない、もしかしたら幻かもしれないような人、絶対に人を殺しそうにないのにやってしまう、みたいな危うさを持った人をイメージして探していました。そんな時にSEKAI NO OWARIのライブで、ファンタジックな『RPG』とダークな『ANTI-HERO』を歌っている時のFukaseさんの表情の落差を見て、『あ、両角いた』と直感したんです。そこから俳優としてFukaseさんを口説くのに2年かかりました」
「映画を一番表しているのはACAねさんの声なんじゃないか」
俳優のキャスティングも異色なら、「主題歌のキャスティング」も異色なのが『キャラクター』だ。藤井風などの楽曲プロデュースで知られるYaffle、若者から圧倒的な支持を受ける新世代ラッパー・Rin音、ずっと真夜中でいいのに。の作詞・作曲・ボーカルのACAねという類を見ないコラボによる主題歌「Character」はどのように生まれたのか。
「まず劇伴を誰に作ってもらうか考えた時に、2021年に公開する意味のある音にしたいと思いました。じゃあ、誰が一番“今”の音を出してるか考えたら、Yaffleさんだなと。劇伴って普通あんなに遊ばないんですけど、『キャラクター』のメインテーマは隅の方で鳴ってる音とか、1番と2番で締めがいちいち違っていたりとか、そういう感じがすごく2020年代の音楽っぽい。主題歌は当初、僕の中ではバキバキのギターサウンドをイメージしていたんですが、Yaffleさんの作る劇伴の今っぽい渇いた感じを聴いているうちに『ギターサウンドではないな』って思ったんです」
「それと同時に、メインキャストを菅田将暉さんとFukaseさんという異色の組み合わせにしている以上、音楽も面白いものにしたい気持ちがあった。それでふと『このメインテーマを主題歌にすればいいじゃないか』と思ったんです。この音にラップと、女性の声が乗ったらめちゃめちゃカッコいい主題歌ができるんじゃないかと」
そこから、Yaffleの制作したメインテーマを基盤に、ACAねとRin音が「キャスティング」されることになる。ACAねは主題歌の話が出るより前から、『キャラクター』予告編のナレーションを担当することが決まっていた。ACAねがナレーションするのも、今回が初めてのことだ。
「そのナレーションの『キャラクター』という声があまりによかったんです。なんなら、この映画の世界観を一番表しているのってACAねさんのこの声なんじゃないかと思ったくらい。それで、ダメもとで『ずっと真夜中でいいのに。ではなく、ACAねさんとしての参加ってありですか?』と打診しました」
「Rin音さんは今でこそ『snow jam』に代表されるようなメロウなイメージを持たれていますが、MCバトルで相手をディスってきたアグレッシブなラッパーです。『人は誰しも裏があって、本当の顔は誰もわからない』というのが、映画『キャラクター』の裏テーマなんですが、優しいイメージのRin音さんの中には別の攻撃的な顔があるんだって考えた時に、この映画にぴったりだなと」
Yaffleが当初劇伴として制作したメインテーマは1分程度のもの。それをYaffleに5分弱の“歌モノ”に伸ばしてもらい、メロディもリリックもないトラックをACAねとRin音に送って制作を依頼。その際、それぞれが担当するパートの位置を指定する以外、具体的なオーダーは出さなかったという。
「ずっと真夜中でいいのに。には以前も僕の映画の主題歌を作ってもらったことがあるんですが(『約束のネバーランド』主題歌『正しくなれない』)、そのときに、ACAねさんは作品の中身を理解する読解力がずば抜けている上に、それを歌詞とメロディと歌声でとんでもないところまで跳躍させてくれる人だと感じました。なので、今回はあえて何も言わないで、ACAねさんがこの映画を観て何を思うか、というのを見たかったんです」