King Gnu、ヒゲダンがトレンドを変えた? NovelbrightやOmoinotakeら“美声ハイトーン”を担う若手バンド
今、勢いのあるバンドとは、どういったバンドだろうか?
安易に答えを出すのは難しいが、ここでいう“バンド”を『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』のような国内のメガ・ロックフェスによく名前が挙がるものに限定していけば、ある程度のトレンドが見えてくる気がする。もちろん、サウンド、メロディ、リズムアプローチ、パフォーマンス、キャラクター、色んな補助線を引くことができるけれど、ことボーカルの“声”を軸にして考えてみると、トレンドの内実がクリアに見えてくる。
例えば、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』が開催された当初であれば、ロックバンドのボーカルといえばDragon Ashだったり、くるりだったり、奥田民生だったり、渋い(という言い回しが適切かどうかは微妙なところであるが)歌声で魅了する人たちが多い印象だった。以降も、国内の大手ロックフェスで存在感を示すバンドといえば、ガレージな装いだったり、(甘さではなく)攻撃的な鋭さをもった声質のボーカルが多かったように思う。
しかし、あるタイミングからその様相が変わる。明らかにハイトーンな歌声を披露するバンドが増えてくるのだ。2010年代でいえば、KANA-BOONやクリープハイプやMY FIRST STORY、あるいは[Alexandros]や04 Limited Sazabysなど、様々な“ロック”のジャンルにおいて、ハイトーンなボーカルのバンドの躍進が目立つようになる。
2016年にはヤバイTシャツ屋さんが「流行りのバンドのボーカルの男みんな声高い」という歌を発表し、一定の共感を獲得していることからもわかるとおり、人気バンド=ハイトーンボイスというイメージが定着してきた印象を受ける。さらに2020年代に入っていくと、King GnuやOfficial髭男dismの躍進により、ハイトーンボイスそのものにさらなる更新が行われる。というのも、それまでのハイトーンボイスは、ロックバンドならではの“味のあるハイトーン”で魅了するバンドが多かったが、20年代は“美しい”という言葉で形容したくなるような抜けの良い高音や、ファルセットで魅了するタイプのハイトーンボーカルが増えてきたように思うのだ。
つまり、00年代から10年代にかけて、広義のハイトーンなボーカルのバンドがロックの様々なジャンルで増えて、20年代になると、より美しさが際立つハイトーンボーカルの躍進が目立つようになった印象を受けるわけだ。そんな流れを決定づけたのがKing GnuとOfficial髭男dismという二組、という見立てである。