櫻坂46、“立候補制センター”に表れた力強い意志 3列目メンバーが個々の魅力発揮した『BACKS LIVE!!』レポ

櫻坂46、“立候補制センター”に表れた意志

守屋茜

 「思ったよりも寂しくない」では守屋茜が前へ。今年副キャプテンを退任した彼女。その後のインタビューで少々気になる言葉を見かけた。自分のポジションに対して「期待しちゃいけない」(『B.L.T. 2021年5月号』より)と達観したような姿勢でいるという。しかしこの日の守屋は何か吹っ切れたように表情が良い。いつカメラに抜かれても弾けていた。これまでずっと副キャプテンとして活動しながら、自分自身とグループとのバランスで悩んでいたそうだ。だがおそらくこの日は、しっかりと自分を出していくということに気持ちを切り替えられていたのだろう。

土生瑞穂

 「それが愛なのね」では土生瑞穂が魅せる。近頃また一皮剥けた感のある土生は、ディスコ調のこの楽曲を妖艶に、かつ大人っぽく表現する。トークタイムで「今日は皆さんを幸せにして帰します」と意気込んでいたように、終盤へ向けて客席を煽り、会場のボルテージを一段階上げ、華麗にパフォーマンスし終えていた。

大園玲

 「なぜ 恋をして来なかったんだろう?」のセンターは大園玲。新加入組の中では唯一2作連続で選抜入りを果たした大園だが、今回のライブで“グループを背負う感覚”を知れたという。真ん中に立つ彼女の表情は生き生きとしていて、ステージ全体のポジティブなエネルギーを引き出している。”任せたくなる”頼もしいステージだった。

増本綺良

 「Buddies」のセンターは増本綺良。“仲間”という言葉を冠したこの曲を、メンバーたちとともに満開の笑顔で踊り切る。櫻坂46随一の不思議キャラとして、普段は増本ワールド全開の彼女だが、この日は踊りも笑顔も“キラキラ”としていて、この期間の努力と成長が存分に感じ取れた。

武元唯衣

 そして本編ラストの「BAN」のセンターに立ったのは武元唯衣。「私は、今日ここで生まれ変わります」の言葉とともに高難度のこの曲に挑んだ。彼女は、この曲を最初に聴いた時に「(歌詞が)全部自分に言われている気がした」という。そのため「今日も自分に言ってやろうという気持ちで踊った」のだとか。武元からはそうした楽曲に込めた熱い思いもさることながら、表情や動き全体からライブそのものを楽しんでいる雰囲気が伝わる。それは、彼女の人懐っこい愛らしいキャラクター性があるからこそなのだろう。センターに立ったことで、改めてそうしたメンバー個人の個性が浮き立っていたような気がした。

 オリジナルとは違ったフォーメーションで新鮮な感動を呼んだ今回のライブ。そういう意味では、欅坂46時代の2ndアニバーサリーライブと多少近いものがある(参考:欅坂46がデビュー2周年ライブで表現した、“ガラスを割る”ということ)。しかし、あの時とはまた違った意味を帯びているように思うのだ。グループが成長していくためには「私たちこそが立ち上がらなければいけない」という強固な当事者意識。3日間を通して出演者全員がセンターを務めたというのも大きいが、何より立候補制によって、センターに立ったメンバーそれぞれのリアルな思いが背景に感じられた。

 アンコールは「櫻坂の詩」を披露。ライブの途中には、先輩後輩がお互いに感謝の手紙を読み合う一幕もあり、メンバー全員が手を取り合ってこのライブに挑んできたことが分かる。最後はダブルアンコールで再び「BAN」を披露。会場のボルテージが最高潮に達したところで終演した。出演者全員が見せた目覚ましい成長に、ファンから惜しみない拍手が送られていた。

 7月には日向坂46との合同イベント『W-KEYAKI FES 2021』の開催も予定されている。今回の舞台で得た経験を糧に、“強くなった櫻坂”を見せてほしい。

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi/https://twitter.com/az_ogi)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる