メジャーデビュー目前、mihoro*が歌う“嘘のない言葉” 感情と丁寧に向き合う次世代シンガーへの期待
どんな時代にも、“熱いシーン”というのが存在する。2010年代の後半はMega Shinnosukeやクボタカイ、向井太一などを輩出した福岡が注目されていたが、2020年代が始まり岡山のシーンがにわかに注目を集めている。
CMタイアップやドラマ主題歌に抜擢され、期待値の高まりがとどまるところを知らない藤井風。tofubeatsやaiko、川谷絵音といった著名人も絶賛し、5月にメジャーデビューしたばかりのシンガーソングライター・さとうもか。そして、Z世代の代弁者として熱い視線が注がれているのが、20歳のシンガーソングライター・mihoro*だ。
中学3年生の頃、部活の引退と共に父親の使っていたギターを触り始めた彼女。翌年には自身で制作も開始し、ライブハウスに立ち始めた。Z世代のアーティストというと、ネットを駆使し音楽を発信していくイメージが強いが、mihoro*の場合は生のライブに積極的だった。高校2年生のときには年70本、3年生のときには年80本のライブを学業と並行して行い、地元の岡山だけに限らず、大阪や東京などで精力的にステージを重ね、実力を培ってきたのである。
もちろん、ネットでの活動にも手を抜いていない。ツイキャスやMixChannelでの生配信、毎月のカバー動画投稿など、自身の存在を能動的に発信してきた。2019年1月~3月には、AbemaTVの恋愛リアリティショー『白雪とオオカミくんには騙されない』へも出演。胸の奥に秘めた気持ちを代弁してくれる“IT GIRL”として、同世代からの人気を高めた。
mihoro*の魅力は、歌詞にこめられた嘘のない生っぽさだ。かつて椎名林檎は、東京事変「女の子は誰でも」で〈女の子はお砂糖と薬味(スパイス)とで出来ている〉なんて歌っていたが、この配分について考えたことはあるだろうか。実際の女の子は、「砂糖:スパイス=9:1」なんてことは決してないし、よくて5:5、もしかしたら1:9なんて数字のほうがリアルかもしれない。mihoro*の紡ぐ言葉というのは、「砂糖:スパイス=1:9」のリアルがある。
「分かり合えないよ」では、〈嫌なこともそれも思い出と受け止められる程/私、強くはないの〉と赤裸々に弱さを吐露し、「ルサンチマン」では〈あんた私のことが嫌いでしょ/私はあんたが嫌いだよ〉と盛大に毒を吐く。表面を取り繕うことなんていくらでもできるだろうに、彼女はあえてその選択をしない。それは、もしかしたらmihoro*自身が楽観的なことを言うのが苦手であり、ものごとの悪いところへ目が行ってしまう性ゆえなのかもしれない。彼女は「ネガティブをポジティブに変換しよう」なんて叫ばれている世の中でも、無理にポジティブへ走ることなく等身大の自分を言葉にする。変換を挟まない生の想いがそこにあるからこそ、mihoro*の楽曲は同世代を中心に強い共感の渦を巻き起こしているのではないだろうか。