さとうもか、変態紳士クラブ GeGから正体不明の者まで“入居”するMAISONdes ジャンルの垣根超えた“ここでしか聴けない”音楽
謎多き音楽プロジェクト”MAISONdes”(メゾン・デ)が、注目の楽曲を着々と発表し続けている。
プロジェクトのイントロダクション的なものとして公開された「MAISONdesの窓」の映像には、こんな文言が表示される。
『どっかのアパート、六畳半。誰かの歌』
『ひとつひとつの部屋にそれぞれ窓があるように、ひとりひとりの住人にはそれぞれの物語と歌がある。』
2021年2月より、「どこかにあるアパート」を舞台に、「部屋」を割り当てるような形で楽曲を順次公開してきたMAISONdes。どの楽曲も、サムネイルではイラストが窓枠に収められ、MVのオープニングはアパートのドアを開くアニメーションに統一されており、視聴者は部屋の住人の生活を覗き込むような形で楽曲を聴くことになる。また、YouTubeや公式Twitterでは「#六畳半ポップス」というタグが使われているが、これは1970年代、若者の生活にフォーカスを当てた音楽が多数生み出されたことでジャンル化された「四畳半フォーク」からインスパイアを受けているのではないかと想像される。
また、MAISONdesの「入居者」となる楽曲はすべて、yamaやくじらなど、インターネットやSNSを主戦場とする話題のアーティスト達のコラボレーションの形を取っている。いわゆるレーベルでも、単なるコラボとも違う。個々人が実力派のアーティストが、「アパートの一室」をキーワードに手を組んで楽曲を生み出していくのだ。そんな今までにない切り口で音楽を提供するMAISONdesは、私たちに何をもたらしてくれるのだろう。
MAISONdesの第1弾、「101号室」を飾ったのは、「春を告げる」で押しも押されぬ存在となったシンガーyamaと、「大迷惑星。」などで話題となった泣き虫による「Hello/Hello」。セブン-イレブンのオリジナルWEBアニメの第1話の主題歌でもあるこの曲は、爽やかでメロディアスなロックサウンド。曲調は前向きだが、〈彼方の星空に”またね”と囁くように〉などの歌詞からはどことなく「別れ」を感じ冴える切なさも漂っている。MAISONdesのコンセプトである「部屋の住人」という観点から考えると、遠く離れた地で借りたアパートで、故郷を思っているような曲でもあるのかもしれない。
続く第2弾、「310号室」に入居するのは、川谷絵音も絶賛するシンガーソングライターのさとうもか、「春を告げる」を手がけたくじらによる「For ten minutes, for a hundred yen」だ。直訳すると「10分100円」となるこのタイトルは、歌詞の冒頭に登場するコインランドリーの料金から来ているのだろう。等身大の女の子の生活を歌ったメロウなシティポップで、〈引いたまま布団 脱ぎっぱなしの寝巻き〉や、〈隣の部屋は今日もうるさいけど〉など、具体的な描写で生活感をより強く描き出しているのが特徴だ。