服部隆之が考える、劇伴作りの美学

　また、この日に向けて服部のこれまでのインタビュー記事を読み漁ってきた町屋は、作品における音楽サイドは「黒子」であるというマインドに深く共鳴したと伝える。そこで服部が先輩として提言したのは「黒子だけど一言ものは言う」という考え方。そこには音楽サイドからしか見えないこともあり、その投げたボールによって映像サイドに気付きが起こることもあれば、そこから想像の枠を超えたものが生まれるという経験に基づく言葉であった。

　さらに「和楽器が特殊だからといってそこに忖度して書いていくとつまらない」という服部のアドバイスも。鈴華が語る和楽器バンドの強みは「無理をさせても和楽器の奏者がノーと言わない」ことであり、そこから面白い化学反応が生まれることにある。今回の『イチケイのカラス』と和楽器バンドの組み合わせにおいても新たなサウンドにおける挑戦を感じさせる「Starlight」が誕生した。

　リアルサウンドでは、オンエア終了後に鈴華、町屋、服部それぞれにインタビューする機会を得た。放送内で町屋は服部に近いマインドを抱いていたと語っていたが、服部も「自分がやったことに自信が持てないタイプ」として不思議と同じことを思っていたようだ。番組での共演を経て、服部は和楽器バンドについてこう語る。

「和楽器バンドのコンセプトは日本の音楽界の歴史的にも必然的に生まれてきた気がする。一つステレオタイプの型があって、売れる売れないに関しても、それをみんなが勝手に決めていて呪縛される。（和楽器バンドは）そういうのを取っ払ったところでどんどん活動されていくのでしょうし、お話を聞いていて眩しかった。いつもそういう風にならないようにしようと自分もやってるんだけど、知らないうちに歳を重ねてきて、たくさん人に会って、どんどん人生が擦れてくるんです（笑）。若い頃はそうじゃなかったなとか考えながら。日本を代表するワールドワイドなアーティストになる可能性だって十分にあるわけですから、これからも期待しています」

　服部の言葉を受け、鈴華も「表に立つパフォーマーとして、ボーカルがどういう世界観を作るのかがこの主題歌としての役割だと思っています。新しいサウンドに聴こえていると思うんですけど、和楽器バンドの可能性、表現としてみなさまに楽しんでいただいて、さらに和楽器バンドが広がっていくといいなという思いです」と「Starlight」を経てのバンドのビジョンを語る。

　町屋は20代の頃にテレビ局やラジオ局のBGM制作に関して、1日4曲から7曲くらいの楽曲を書き続けることを10年近く行っていた。インタビューの中で服部が何度も口にしていたのは、「和楽器バンドが主題歌を歌う作品のサウンドトラックを町屋さんが作ったら、もっと整合性が取れる」ということ。今回両者が初対面だったように、主題歌を担当するアーティストとドラマ音楽を作る作家が顔を合わせることは滅多にないのだという。「今回は奇跡的に僕が作ってるサウンドトラックと主題歌の親和性があったと思うんですよね。でも、劇伴と和楽器バンドの曲のバリエーションを作れたらよかったよね。うまく間を繋げていくような。そうなっていくとトータル的には面白いことになる。次回、そういう機会があればいいですよね」という服部の言葉に鈴華も「夢のようでございます」と答えた。

　予め互いに打ち合わせを重ね意識し合えば、さらにドラマに寄り添った主題歌と劇伴になるーーそんな夢のコラボレーションに期待したくなる3者の鼎談となった。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター／編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter（https://twitter.com/AKI_W_）

■ラジオ情報
『TOKYO SPEAKEASY』
放送局： TOKYO FM
放送時間： 毎週月曜 - 木曜 25:00 - 26:00（60分）
放送方式： 生放送

■Radiko　
タイムフリー視聴はこちら

■ドラマ情報
フジテレビ系“月9”ドラマ『イチケイのカラス』
キャスト＆スタッフ
入間みちお： 竹野内 豊
坂間千鶴：　 黒木 華
石倉文太： 　新田 真剣佑
井出伊織： 　山崎 育三郎
浜谷澪： 　　桜井 ユキ
一ノ瀬糸子： 水谷 果穂
川添博司： 　中村 梅雀
城島怜治： 　升 毅
日高亜紀： 　草刈 民代
駒沢義男： 　小日向 文世

[原作]
浅見理都
「イチケイのカラス」（講談社モーニングKC刊）
[脚本]
浜田秀哉
（『絶対零度』シリーズ、『やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる』他）
[音楽]
服部隆之
[主題歌]
Starlight / WGB（和楽器バンド）
[プロデュース]
後藤博幸
（『SUITS／スーツ』シリーズ、『ほんとにあった怖い話』シリーズ他）
有賀 聡
（ケイファクトリー）（『カンナさーん！』、『初めて恋をした日に読む話』他）
橋爪駿輝
（『嫌われる勇気』、『ペンション・恋は桃色』他）
[編成企画]
高田雄貴
（『刑事ゆがみ』、『黄昏流星群』他）
[演出]
田中 亮
（『コンフィデンスマンJP』、『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』他）
星野和成
（『チーム・バチスタ』、『SUITS／スーツ２』他）
森脇智延
（『SUITS/スーツ』シリーズ、『ほんとにあった怖い話』シリーズ他）
並木道子
（『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』、『モトカレマニア』他）
[制作協力]
ケイファクトリー
[制作・著作]
フジテレビ第一制作室

Twitter : https://twitter.com/ichikei_cx
HP：https://www.fujitv.co.jp/ichikei/index.html

■リリース情報
『Starlight』E.P.
2021年6月9日（水）リリース
配信はこちら

＜収録内容＞
1. Starlight（フジテレビ系月9ドラマ「イチケイのカラス」主題歌）
2. 生命のアリア（アニメ「MARS RED」オープニングテーマ曲）
3. ブルーデイジー
4. 雨上がりのパレード
5. Starlight – Instrumental -
6. 生命のアリア – Instrumental -
7.ブルーデイジー – Instrumental -
8. 雨上がりのパレード – Instrumental -
※M5～M8は、CD Only盤のみ収録。

「Starlight」E.P.の商品詳細・予約はこちら
https://sp.universal-music.co.jp/wagakkiband/starlight/

・真・⼋重流（FC限定）盤（全3形態＋DVD）
CD（全3形態=TOKYO SINGING盤＋MARS RED盤＋CD Only盤） ＋ DVD
※UM STORE 数量限定発売：￥10,780（税込）
スペシャルBOX仕様 / PDCS-1919

＜DVD収録内容＞
Artwork Behind the Scenes
"Starlight" Music Video
"Starlight" Music Video Behind the Scenes

B3サイズオリジナルポスター2枚
オリジナルポストカード
トレーディングカード（絵柄A、B、Cのいずれか全9種入り)

・初回限定TOKYO SINGING盤（CD＋Blu-ray）
￥5,500（税込） / UMCK-7107

＜Blu-ray 収録内容＞
JAPAN TOUR 2020『TOKYO SINGING』（全21曲）
Overture～TOKYO SINGING～
Calling
Ignite
reload dead
生きとしいける花
月下美人
Sakura Rising with Amy Lee of EVANESCENCE
ゲルニカ
刹那
生きかけた夢のあとがき
塵旋風
焔
Tokyo Sensation
オリガミイズム
宛名のない手紙
ドラム和太鼓バトル～響映轟弾・改～
日輪
Eclipse
Singin' for...
EN1. ロキ
EN2. 千本桜

トレーディングカード（絵柄A：Starlight ver.）全9種類の内1枚ランダム封入

・初回限定MARS RED盤（CD＋DVD）
￥2,420（税込） / UMCK-7108
「MARS RED」キャラクタ―原案 唐々煙さん描き下ろしジャケット仕様

＜DVD収録内容＞
"生命のアリア" Music Video（MARS RED ver.）※オリジナル編集「MARS RED」アニメーションMV
"生命のアリア" Music Video（和楽器バンドver.）
"生命のアリア" Music Video（和楽器バンドver.） Behind the Scenes

トレーディングカード（絵柄B：生命のアリアver.）全9種類の内1枚ランダム封入

・CD Only盤 （収録楽曲の全4曲インスト入り）
※Instrumental収録は、CD Only盤のみになります。
￥1,650（税込）/ UMCK-1678
アーティスト画家FeeBee描き下ろしジャケット

トレーディングカード（絵柄C：FeeBeeイラストver.）全9種類の内1枚ランダム封入

■和楽器バンド 関連リンク
公式サイト：https://wagakkiband.com/
YouTubeチャンネル：https://www.youtube.com/c/wagakkiband