神谷浩史、畠中祐、梶裕貴……需要高まる声優アナウンス “声”を用いて届ける重要なメッセージ

 また言うまでもなく、神谷や畠中と肩を並べ『進撃の巨人』の主人公エレン・イェーガー、『僕のヒーローアカデミア』の轟焦凍役としてアニメファンのみならず幅広い層に名を知らしめた梶裕貴は、昨年7月から山梨県・富士急ハイランドの園内放送に起用されている。流れるアナウンスは種類が豊富、閉店間際や雨天にしか聴けないアナウンスもあるようで、梶のアナウンス聞きたさに訪れるファンもいるそうだ。

 こうした声優アナウンスの需要が高まっている背景には、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』の大ヒットや『進撃の巨人』の原作が最終回を迎え、TVアニメもファイナルシーズンに突入したことが関係していると思われる。『鬼滅の刃』が普段アニメに馴染みのない人やライト層を取り込んだことによって、花江夏樹や鬼頭明里、下野紘といった声優の名前が知れ渡るように。彼らはバラエティ番組にも昨年から多数出演し、花江に至ってはドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)に俳優としても登場。下野も『レッドアイズ 監視捜査班』(日本テレビ系)に通信指令センターの声でドラマ初出演を果たし、同じく日本テレビ系のドラマで現在放送されている『ネメシス』の予告ナレーションを担当するなど、幅広い活躍を見せている。さらに、梶も『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系)に出演、『呪術廻戦』の七海建人、『極主夫道』(Netflix)の龍など昨今の話題に引っ張りだこの津田健次郎は昨年放送されたNHK連続テレビ小説『エール』の語りを務め、『第十五回声優アワード』では主演男優賞を受賞した。

 一時は偏見的な見方によって“オタク文化”とも受け取られてきたアニメ作品が大衆化しつつある今、声優たちは熱量のあるファンを多数獲得し、また若い世代を中心に絶大な支持を誇っている。なおかつ、それぞれに個性があり、少し耳にしただけで誰が喋っているかがすぐに分かる彼ら最大の魅力である“声”は、重要なメッセージを幅広い層に届ける上で大きな武器となるだろう。これまでは聞き逃すことの多かった館内アナウンスやパトカーからの呼びかけに耳を傾けると、好きなキャラクターと同じ声が流れてくるかもしれない。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。

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