登坂広臣、ØMIとしての表現に貫かれた信念 光と影の二面性から浮かぶ“生の肯定”
なお、公開中のMVでもやはり“色”は重要な要素となっている。「ANSWER~」に近しい仄暗い青の世界から始まり、徐々にサブリミナルのように明度の強い色味が挿入されて映像全体が明るみを増し、鮮やかな色彩に包まれていく。赤や緑の色調がゆらめきながら反転を繰り返す様子は“光”とも“影”とも捉えることができ、なんとなく示唆的だ。
また、EPには唯一リリースまで未解禁であったメロウなR&Bナンバー「Give up」が収録されている。失われた〈君〉の幻影を追い求め情念に身を焦がす、という他の3曲とは一線を画したストーリーの同曲は、ØMIのボーカルが特に鮮烈な印象を残す。時に語尾を跳ね、時に甘いウィスパーボイスを聴かせ、そして情感溢れるメロディアスなサビでは声のもつ濃艶かつ美麗な響きが活かされており、3分9秒と比較的短い中でも聴きどころの多い1曲だ。
この「Give up」を『ANSWER… SHADOW』の文脈で捉えるとするならば、三部作たる3曲を補完する存在と考えられる。他者との精神的な関わりの中には、時に理想を望むあまりに利己的な欲求や執着を抱き、一方的な関係に陥るものもある。この曲で歌われる身を崩すほどに強い愛情もまた人の心の内にある“影”の側面と言えるが、それでも〈何もかも/感じないことよりは〉と「ANSWER~」で歌われるように、それこそが“生”の喜びであるとも言える。
光がある限り必ずどこかで影が生まれ、強い光が当たればその分だけ影が濃くなっていく。ØMIの作り出す世界に浸る『ANSWER… SHADOW』の十数分間は、その“影”から見出した自己を〈君〉という“光”によって反転させる物語である。それは、光も影も取り込んだ一つの“生”の肯定として、力強く美しく鳴り響く。
※1:https://realsound.jp/2021/03/post-729680.html
■日高 愛
1989年生まれの会社員。