NEWS 加藤シゲアキが考える、体験を創る責任 ラジオで語られた“アイドル作家”への思い

自らを確立し、そして恩を返すために書き続ける

 アイドルグループNEWSのメンバーとして約18年、そして作家として約10年。よく「歌って踊ることがアイドルの本業だ」という声が聞こえてくるが、今やアイドルの本業とは「いくつもの期待に応えながら、自分自身を確立していく姿を見せること」そのものではないだろうか。

 とりわけNEWSは、波乱に満ちた歩みを持つグループでもある。何かを悪にすれば解決できるような簡単な話ばかりではないからこその葛藤と苦悩。自らを奮い立たせては壁にぶつかり、再び立ち上がっては打ちのめされの連続。それでも、彼は歩き続けてきた。

 そんな加藤の粘り強さが、彼の小説にもにじみ出ているように感じる。作品を練り上げていく作業にはもちろんのこと、新作を発表するたびに上がる様々な声に耐え、そしてまた新たな作品に向き合っていく。ラジオでは、今でも小説に取り掛かる度に「書いていいのか」と葛藤する瞬間があることも話していた。

 小説を書くために休みがほしいと言ったことはない。ラジオ『TOKYO SPEAKEASY』(TOKYO FM)にゲスト出演した際には、移動中の時間を利用したり、地方ロケには前乗りしてホテルに1人缶詰になったりと、生活の一部となった執筆活動の様子について話していた。対談相手となった燃え殻も、同じ小説家として加藤の生活に「こんなに大変な人はいないだろ」と感心。多忙な日々の中でも生き生きとした姿を見て多くの人が奮い立たされたように、きっと小説を生み出す人たちにとっても、その加藤のバイタリティは勇気づけられるものに違いない。

 そんな加藤の原動力として印象的なフレーズが「恩返し」だ。アイドルとして支えてくれたファンたちに活躍する自分の姿を届けることはもちろんのこと、アイドルの自分が小説を書き続けることでその面白さを伝え広げ、出版社や書店に還元していきたいのだと繰り返し語られてきた。恩返しとはゴールのない目標だ。だからこそ、きっと加藤はこれからも書き続けてくれるに違いない。

 30代で学生服を着ることもあるアイドルだからこそ、小説の登場人物として高校生活を追体験することもできるのだろう。また、役者として様々な時代の人生を生きることもできる。バラエティでは多くの人の考えに直接触れることもできる。そんな加藤の中だからこそ、キャラクターが動き出す。そして、加藤シゲアキというアイドル作家の才能開花を見守ることもまた、人々を癒やし、救い、そして奮い立たせてくれる物語でもあるのだ。

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