RAISE A SUILENは『バンドリ!』と音楽シーンを繋ぐ存在に? ロックバンドとして見据える未来

RASが語る、ロックバンドとしての未来

(Raychellの歌が)「怖すぎてスッと止めました(笑)」(紡木)

ーー今回のシングル『EXIST』もそうですが、RASは『BanG Dream!』という枠から飛び出して、ほかのアニメ作品の楽曲を歌う機会も少しずつ増えています。今回のシングルには4月スタートのテレビアニメ『擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD』(以下、『擾乱』)のオープニングテーマ「EXIST」、およびエンディングテーマ「Embrace of light」が収録されていますが、どちらもRASにとって新境地的楽曲に仕上がっています。

Raychell:そうですね。特に「EXIST」は、『BanG Dream!』プロジェクトにとっても初の和ロックサウンドになりますし。

夏芽:この曲はハーフテンポになったり倍テンポになったりと、リズムチェンジがかなり忙しいんですけど、『擾乱』の世界観を描いた楽曲なので、自然と「キッ!」みたいなシリアスな表情で叩いていて。それこそRaychellは3人ぐらい殺してそうな目で歌っているし(笑)。

Raychell:「EXIST」を歌うときは、3人ぐらい殺している気持ちで歌っています(笑)。

夏芽:なので、みんなもそういう気持ちで演奏しています。

Raychell:メンバー5人だから、合計15人ぐらいは……。

全員:(笑)。

ーーめちゃめちゃ物騒なバンドじゃないですか(笑)。そもそも、劇中でRaychellさん演じる花風エレーナ自体がそういう役柄ですものね。

Raychell:笑いながら人を殺す処刑人で、娼婦でもあり小説家でもあり、とても妖艶な女性なので。『BanG Dream!』プロジェクトのレイヤとはまた全然違う女性なので、そういう意味ではとても勉強になっています。

ーー倉知さんはどうですか? 和の音階を取り入れたフレーズも含まれていますが。

倉知:今回は音作りでも割れたピアノとか、かなり拘っていて。全体的に使っているリードのシンセの音もそうですし、ピアノの音もそうですし、いつもよりもおどろおどろしさをプラスしたような歪んだサウンドを意識しています。あと、ギターとのユニゾンも多くて、そこが私的には好きなポイントなんですけど。

小原:えっ、どこだっけ?

倉知:嘘? 「私、今ユニゾンしてるわ〜」って気持ちに浸って弾いてたのに(笑)。

小原:あのパートは「ビブラート効かせなきゃ!」ってことに必死だったから(笑)。あの間奏のフレーズは「EXIST」の中でも特に印象的で、ギターが歌っているような雰囲気を出すために、ビブラートをめちゃくちゃ効かせていただいております。

ーー今回、RASの武器として定着していた紡木さんのラップがないことに驚きまして。もちろんこれまでの楽曲でもラップのない曲は存在しましたけど、ここ最近の流れを考えるとラップを入れない表現で挑むことに新鮮さを覚えました。

紡木:ありがたいことに、最近はラップの入った曲が続いていたんですけど、この和ロックにチェルさんの声が合わさることが今回は重要なのかなと思っていて。しかも、この曲にはスクラッチもまったく入っていないんです。もともとスクラッチが入っていない曲でも、隙間を見つけてアドリブで入れたりしていたんですけど、今回は入れたら浮いちゃうねという話になって、パッドの音をメインに入れております。

ーー歌に関して、この歌詞の世界観を表現する際に意識したことは?

Raychell:「EXIST」に関しては、ディレクションで「Raychellさん、まずはもうちょっと恨んでみましょう」と言われて(笑)。歌詞が『擾乱』の主人公・雪(雪村咲羽)をモデルに描かれているので、彼女の中にある憎しみや生きる意味を歌で表現することを強く意識しました。その過程で「Raychellさん、じゃあ次は人を殺してみましょう」という感じで、雪と自分が重なるようにディレクションしてくださったんです。そうして録音した私の歌を聴いたメンバーは、最初「怖い!」と言っていて。夏芽からは「怖かったんだけど……」って連絡が来ました(苦笑)。

紡木:夜中に「新しい曲が上がってきた」と思って聴いたら、怖すぎてスッと止めました(笑)。

小原:私はカッコいい!と思いました。むしろ夜に聴いて「うん、そうそう!」と思いましたから(笑)。

倉知:私は「あっ、あっ……」っていう、なんとも言葉にし難いものがあって。「カッコいいけど……怖い……」という新感覚でしたね。

紡木:でも、今や超スルメ曲で一番大好き。昨日も楽屋でずっとこの曲を歌ってました。

倉知:いつも〈お前じゃない〉のところばかり歌ってるよね(笑)。

紡木:そこが本当にお気に入りで(笑)。

ーーしかもこの曲、テレビサイズ以降の2コーラス目からのアレンジがすごく手が込んでいて。エンディングまでの構成も起承転結がしっかりしていて、物語感が強いんですよね。

Raychell:そういう意味ではすごく美しい楽曲をいただけたなと思います。

夏芽:私は最初、怖いというところから入ったんですけど、何回か聴いているうちにそれがカッコいいに変わって、最近は美しさもわかるようになりました。なので、聴くごとに、演奏するごとにどんどん新しい発見のある曲ですね。

ーーその美しさも、さっきのディレクションの話じゃないですけど、死と隣り合わせにある美しさ、儚さが表れているのかなと。

Raychell:そうですね。『擾乱』自体が明治64年の、徳川慶喜が生きていたらの「ifの世界」で、きっとその頃は命の重さも今とは違っていて、それこそ人を簡単に殺せるし命を無駄にできる世界。その中で、処刑人として生きてきた人たちが命の重さをだんだん感じていくんです。生と死が常に隣り合わせにあって、恐怖も感じるんだけど、でも自分の進む道はこれしかないという生き様が描かれているので、ぜひアニメと一緒にこの楽曲を聴いていただけたらより楽しめるんじゃないかなと思いますね。

「裏と表、光と影が1枚のCDから伝わるんじゃないか」(Raychell)

ーー一方のエンディング曲「Embrace of light」は、がっつり聴かせるタイプのミディアムバラードです。

Raychell:これも今までのRASとは違ったテイストで、ディレクションのときは母性を出して、温かさだったり命の灯火だったり、そういうものが感じられるように歌わせていただきました。この曲は構成もちょっと変わっていて、真ん中に一番の盛り上がりが来るんです。そこも今までの曲とは違うので、意識して聴いてもらいたいなと思います。

ーーそう考えると、「EXIST」と表裏一体の曲なんですね。

Raychell:これはネタバレになるかもしれませんが……雪って血が青いんですよね。その理由は物語が進むにつれて明かされていくんですが、「EXIST」ではその青さが表現されていて、エンディングの「Embrace of light」では温かみのある赤が感じられるような表現になっている。そういう裏と表、光と影が1枚のCDから伝わるんじゃないかと思っています。

ーーこの2曲だけでも相当聴きごたえがあるのに、今作ではさらに「OUTSIDE RODEO」も収録。従来のRASらしさを提示した1曲です。

Raychell:この曲は『ガルパ』(スマホゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』)での、マスキングとロックのイベント楽曲なんです。

夏芽:2人がお互いのことをどんどん知っていきながらチームワークを作っていくストーリーというのもあって、ギターとドラムをかなりフィーチャーしてもらってます。これはライブでやったら盛り上がるだろうなあ。

小原:うん。間違いなくライブの鉄板曲になるだろうから、ぜひ演奏した際には一緒に拳を上げて盛り上がってほしいなと思います。

紡木:ラップのディレクションもかなり激しくて。自分が歌うフレーズを固めてレコーディングに臨んだんですけど、その場で「1番と2番とで変えましょう。その場のフィーリングでいいので、どうぞ。3、2、1」みたいな感じで録ったんです。なので、1番と2番とでBメロのラップの違いに注目していただけたらなと思います。

Raychell:ライブではどうなっちゃうんだろうね?

倉知:今の時点では全然固まっていないんですけど、またヘドバン、ツーステとかあるんですかね?

Raychell:頭を振っているイメージが強いかな。でも、マスキングとロックの曲だから、2人にバシッといってほしいな。

小原:せっかくだし、ドラムの隣で弾きたいですね。

夏芽:それで、掛け合いとかやってみたいよね。

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