和ぬか、TikTokでのヒットはなぜ生まれた? 数十秒で心掴む“未知なる才能”を紐解く
そんな和ぬかが、4月19日に新曲「ニゲラ」をリリースした。
「ニゲラ」自体は、「寄り酔い」と同じく短尺のものが昨年の時点ですでにTikTok上で公開されており、こちらはさらに短い約10秒の動画だが、弾き語り動画は300万回再生を超えている。
今回新曲として公開されるフルバージョンの編曲を務めたのは、ボカロPとしても活動する100回嘔吐。コミカルなサウンドが多数投入され、祭囃子のような趣のにぎやかなアレンジに仕上がっている。〈愛憎 到来 ⼤抵 愛〉など、リズミカルで口ずさみたくなるフレーズが散りばめられているのも特徴的だ。そして実は、同じくすでにTikTokで公開されていた「限界アフター証明論」の歌詞を少しアレンジしたものがこの曲のサビになっている。2つをもともと知っていたファンにとっては驚きの構成かもしれない。
和ぬかが「ニゲラ」を最初に短尺バージョンで投稿した際、「未来がわかる人と付き合ってる設定の曲を作りました」という意味深な紹介文を添えている。そして、曲は〈あなたは未来がわかるのね〉という気になりすぎるフレーズからスタートする。
タイトルのニゲラとはキンポウゲ科の花の名前で、白や紫の花弁に見える部分が実は萼(がく)である一年草。一年草は、種をまいたその年しか花を咲かせない植物のことで、〈これ叶わぬ情なの?一年草〉などの歌詞を投稿時の紹介文と併せて考えると、曲中の2人の恋に長い未来がないことを〈あなた〉はもう知っているのかもしれないと想像される。そんな湿っぽくなりそうな心情も、あっけらかんと〈まあどうでもいっかそんなこと〉と綺麗に拭い去ってしまう、不思議な手触りの曲だ。
いろいろなエッセンスは感じつつ、既存のどの音楽とも少し違う気がする、和ぬか。数十秒で魅了して見せた和ぬかがこれからどのように枝葉を広げていくのか、未知な部分が多いからこそ、期待の大きな新しい才能である。
■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。Twitter(@erio0129)
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