さくらしめじ『春しめじのお花し』、表現力の大きな成長みせた新感覚エンタメライブ

さくらしめじ『春しめじのお花し』レポ

 さくらしめじにとって久しぶりの有観客ワンマンライブ『春しめじのお花し』が、4月4日に中野サンプラザで開催された。昼夜2公演のうち昼の部は“おふたり編”と題し、田中雅功と髙田彪我の2人が全編弾き語りでパフォーマンスする内容に。さらには演劇と音楽を融合させた新感覚エンタメライブに挑戦するものでもあるという。果たして2人はどんな楽しい時間を届けてくれるのか? 会場には開演前から大きな期待が渦巻いていた。

 この日の舞台となるのは、すべり台やブランコといった遊具とともに、大きな木と不思議なきのこが存在する公園。セリフを交し合いながら演技をする雅功と彪我によれば、そのきのこに幸せを与えればキレイな“幸せの花”が咲き、みんなが幸せになるのだという。そこで2人は今までで一番幸せだったときを思い浮かべながら歌を届けていくことになった。1曲目は甘酸っぱい感情を注いだラブソング「えそらごと」。軽快にかき鳴らされるギターと心地いいハーモニーにより、会場は一瞬でさくらしめじの世界に満たされていく。続く「Bun! Bun! BuuuN!」では、ギターを彪我にまかせ、雅功はタオルを振り回しながらステージ上を右に左に動いて盛り上げていく。観客は感染対策によって声が出せない状況ながらも、タオルや腕を振り回すことで楽しい一体感がしっかりと生まれていた。2曲を歌い終えると、きのこがキレイな音を発した。さくらしめじと観客が一緒に紡いだ幸せは、ちゃんと届いているようだ。

 さらなる幸せを与えようと、きのこに語り掛けるように「風とあるがままに今を歩こう」を歌い、きのこに寄り添うように座って「ストーリーズ」を届ける。「だるまさんがころんだ」では2人で向き合って、幸せの瞬間を色濃く練り上げていく。そこでまたきのこから音が鳴ったが、まだ幸せの花を咲かすには至らないようだ。「そもそも幸せって何だろう?」と根本的な疑問を投げかける雅功。それをきっかけに気持ちのすれ違いが生まれ、言い争いが始まることに。そして、「お前となんか歌うか!」とステージ上から消えてしまう2人……。その迫真の演技に観客たちは動揺を隠せず、会場には重たい空気が流れていく。

 エレキギターを抱えてステージに戻ってきた雅功と彪我は、心の中に広がる怒りをぶちまけるように激しいロックナンバー「たけのこミサイル」を演奏。ヘヴィでロックなさくらしめじの魅力を感じさせながらも、間奏ではにらみ合いながらまたもお互いにキツイ言葉を投げつけてしまう。常に仲睦まじい2人だけに、この展開にはドキドキが止まらない。観客たちの不安を受け取るようにステージ上のきのこも青白く発光している。

 その後、「ちょっと言い過ぎたかな」と後悔を滲ませながらも、お互いに素直になれない状態で「またたび」を披露。ステージの端と端に立ち、離れ離れになって歌う2人の姿に胸が痛む。だが、恋愛ソングである「別れた後に僕が思うこと」を、今の自分たちの状況に重ね合わせるように歌ったことでその距離は次第に近づいていく。そして、ラストの〈ありがとう/ごめんね〉のフレーズを歌ったことで、心のわだかまりはそっと氷解していった。お互いの大切さを噛みしめ、2人で歌うことの幸せをあらためて確信しながら「My Sunshine」を力強く歌うと、きのこはこれまでにないほど大きな音を鳴らし、公園の大木には美しいピンク色の花が咲き乱れることになった。

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