さくらしめじ、ハッピーなムード届けたクリスマスライブ 初の中野サンプラザ公演を振り返る

さくらしめじ、中野サンプラザ公演レポ

 シャンシャンシャンという鈴の音を合図に、スクリーンには雪の降る映像が映し出された。それに続き、『サンタと魔法のものがたり』と題された絵本のページが開かれ、世界中の人々にプレゼントを届けるサンタの物語がアニメーションで展開していく。そんなほっこりとするオープニングを経て、ステージ上に元気よく飛び出したのは田中雅功と高田彪我の2人ーー12月15日、彼らにとって初の舞台となる中野サンプラザにおいて、一足早いクリスマスを過ごすべく開催された『さくらしめじのHappy X’mash LIVE 2018 in 中野サンプラザ』はハッピーなムードで幕を開けた。

 巻き起こる大歓声の中、1曲目に届けられたのは新曲「123」。ギターをジャカジャカとかき鳴らし、歌声を高らかに響かせていく2人は本当に楽しそうだ。足を蹴り上げたり、大きくステップを踏んだりとアグレッシブな動きを見せる雅功。首にタンバリンをかけ、客席をしっかり見つめながら凛とした立ち姿でプレイする彪我。歌声のみならず、パフォーマンスにおいても個性の違いを感じさせながら、時にお互いに目をしっかりと合わせて1曲を共に紡いでいき、他にはないさくらしめじだけの世界をカラフルに描き出していく。

 「今日は最高の思い出を作りましょう!」と雅功が叫び、4人のダンサーを交えて披露されたのはアッパーな「スタートダッシュ」。曲中の“Ding Dong Ding”パートでは最高の一体感が生まれていく。続く「菌カツ!」でも、“き”“の”“こ”、“き”“ん”“かつ”を会場全員で叫び、曲が持つ楽しさを共有。オーディエンスをグイグイと巻き込んでいくライブスタイルがさくらしめじ流だ。

 憧れだったという中野サンプラザに立てた喜びを伝えたMCに続いては、爽やかなラブソング「ひだりむね」、大人っぽい表情を見せるAAAのカバー「恋音と雨空」、学生ならではの出来事を現役高校生としてリアルに届ける「せきがえのかみさま」を連続で。さくらしめじは多彩な魅力を持つデュオであるが、個人的には「恋音と雨空」の表現が強く印象に残った。シンガーとしての力量が如実に浮き彫りになるこういったテイストがオリジナル曲でも増えてくるとアーティストとしての面白みが俄然増す気がする。そんなことを思わせてくれるくらい、トーンを少し落とした2人のボーカルはかっこいい。

 そして、アーティストとしての表情を鮮烈に感じさせてくれたのが、2人のギターと歌だけで届けられた「きのうのゆめ」と「まよなかぴくにっく」だった。その演奏からは“フォークデュオ”というスタイルにこだわる彼らが抱いているであろうギターへの愛情をしっかり感じることができたし、シンプルなサウンドの上で絡み合う2人の声にも強い説得力が満ちていた。その愛らしいルックスと性格からアイドル的な人気を誇るさくらしめじではあるが、アーティストとしての存在感もまたシーンにしっかりアピールできるものだと思う。続いて披露された最新EPからの楽曲「My Sunshine」では、これまでにない斬新なサウンドとともに骨太なパフォーマンスを見せ、力強いメッセージを放っていく。その姿にもまたアーティストとしての強い矜持がにじんでいたように感じた。

 コレサワからの提供曲「届けそこねたラブソング」では楽しいクラップが巻き起こる。2人のギターだけで始まった後、力強いサウンドが融合していく「はじまるきせつ」では、カラフルな照明とともに、きのこりあん(ファンの総称)に向けられた素敵なメッセージを真摯に伝えていく。その後のMCでは冬の好きなところを“じめじめランキング”として発表。2人の微笑ましい回答に、会場はあたたかな笑い声に包まれた。MCで見せる無防備なほどのナチュラルな表情もまた彼らの大きな武器なのだと思う。

 「踊る準備はできてるかー!」という彪我の叫びをきっかけに後半戦へ突入。人気曲「てぃーけーじー」では、ギターを持たずにハンドマイクでステージ上を駆け回りながら歌う彪我の姿に観客たちのテンションもブチ上がる。全員で合わせた振り付けや、“T”“K”“G”のコール&レスポンスの楽しさたるや! 続いてプレイされたアッパーなダンスナンバー「ブン!ブン!BuuuN!」では、みんなでタオルを振り回して爽快な風を中野サンプラザに巻き起こす。雅功もギターを置いて、ハンドマイクで大暴れだ。聞けばこの曲、これまでにライブで1度披露されただけの未発表曲なんだとか。そんなことが信じられないほどに、ライブのキラーチューンとして機能していたことに雅功と彪我も驚いていた。上昇を続ける興奮はまだまだ続く。2人のアグレッシブなギタープレイからスタートした情熱的なロックナンバー「でぃすとーしょん」では、曲中で「一緒に遊ぼうぜ!」「もっと行けんだろ!」と雅功が客席を煽りまくる。この時、天井に設置されたミラーボールに向けて4筋のグリーンの照明がステージ上から照射されることで、クリスマスツリーのような四角錐を形作っていたのにも感動した。美しい光の粒が降り注ぐ中、さくらしめじのクリスマスパーティはまさにクライマックスの様相を呈していく。

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