声優 岡咲美保、『転スラ』『シャニマス』などでの多彩な演技力と歌声 今後の活躍を占う
4月6日から放送がスタートしたTVアニメ『転スラ日記』(TOKYO MXほか)。『転生したらスライムだった件』(通称『転スラ』)のスピンオフ作品である同作で引き続き主人公のリムル=テンペストを演じるのが、声優・岡咲美保。本稿では『転スラ日記』放送を機に、同作以外にも様々な作品にメインキャストとして出演している岡咲の、主に演技面での魅力について語らせていただきたい。
含みの持たせ方にコメディセンス……巧みなセリフ回しが生む引力
まず、本稿執筆にあたり改めて振り返って感じたことは、「岡咲美保という声優は実に不思議な存在である」ということ。それは、メインキャストとして出演している作品での役柄やポジションがほぼほぼ異なるから。最初に彼女を知った後、他作品での役柄に意外さを感じたり驚いた方も少なくないことだろう。
岡咲にとって最初の出世作といえば、やはり初主演作である『転スラ』だろう。まず第1期では、特にモノローグにおいての飄々さが的確。これは大賢者とともにある強キャラならではのものであり、棒読みになりすぎず、かつ感情を乗せすぎず、それでいて視聴者を退屈させない、良い塩梅のものだったように思う。だが、シリアスさを増した第2期では、リムルの感情の揺れ動きを表現する機会も増加。中でも特に印象的だったのは、第35話でファルムス王国の国王と対峙したシーン。思わずゾクリとさせられた圧のあるセリフ回しには、国王への怒りに加えて、リムルが魔王になる覚悟をも内包していたようだった。
一方で、主に1期にて多かったコミカルなシーンで見せた、小気味良いテンポ感での掛け合いやセリフの振り切り具合などから感じられる、コメディ芝居の勘の良さも岡咲の魅力。他作品でも『ゾゾゾ ゾンビーくん』(テレビ東京系)ではイサム=少年役としてキッズ向けの不条理ギャグをもこなし、『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(TOKYO MXほか、以下『はめふら』)ではメアリ・ハント役を演じ、主人公・カタリナ(・クラエス)への重すぎる愛をコミカルに表現。7月放送開始予定の『はめふら』2期でのさらに振り切った芝居や、日常シーン中心の『転スラ日記』でのコミカルな芝居にも期待大だ。
もうひとつ、岡咲にとっての出世作と言える作品を挙げるなら、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』だろう。彼女が演じる市川雛菜は含みをもたせたセリフも多く、芝居によって見え方がガラリと変わってしまう、非常に難しいアイドル。だが、一度全体像に触れ、雛菜を理解してから序盤のセリフに改めて立ち返っても齟齬がなく、トータルで非常に腑に落ちる表現がなされていることがわかる。そういった内面的な部分に加え、声質の面からもわかりやすく“市川雛菜らしさ”を表現。丸みをもたせてゆったりめに話すことで甘い響きをもたせ、愛らしさを増幅させているのだ。これらの絶妙なさじ加減、特にプロデューサーの皆さんには改めて評価してもらいたい。
また、今後さらなる成長を期待させる役柄が、『ウマ娘 プリティーダービー』の桐生院葵。現状では断片的なボイスしか配信されてはいないが、トレーナーの名家に育った真面目で不器用でおしとやかな役どころをズバリ表現する、これまであまりみせてこなかったトーンの芝居に驚いた方も少なくないはず。もし今後、追加ボイスやフルボイスのシナリオが配信された際には、ぜひ注目してほしいポイントだ。