ももいろクローバーZの歴史を紐解く 最終回:より具現化された「いま、会えるアイドル」のコンセプト

 そんななか、ももクロは自分たちができることにつとめた。『春の一大事』を一緒につくりあげた富士見市、東近江市、黒部市に新型コロナ対策の支援として寄付をおこなった。振り返ればももクロは、東日本大震災直後には義援金の寄付や被災地訪問、2016年熊本地震ではチャリティライブや自主的な炊き出し、また犯罪や事故で家族を失った子どもたちを元気づけるためにライブや舞台へ招待するなどしてきた。大変な思いをしている人たちに元気を届けようと、各地へ出向いていた。新型コロナで苦しいのは、ももクロも同じはず。それでもメンバーとスタッフは「みんなと会える場所」を守ろうと頑張った。ももクロが愛される理由は、そういった懸命な動きの数々にもあるだろう。

 2020年11月に無観客で生配信された『PLAY!』では、リアルタイムで視聴者からアンケートをとってセットリストの一部を決めていく参加型ライブも実施された。ここでも「会う」というテーマが一貫していた。気軽に会えない時代だからこそ、どうやったら気軽に会えるのか。まるで禅問答を繰り広げるかのように、ももクロは「いま、会えるアイドル」としてコロナ禍で活動している。

 映画『すくってごらん』では、こんな場面もあった。「金魚を追いかけると、うまくすくえない。待つことが大事だ」と。「ももクロの新たなフェーズ」について触れたいところだが、残念ながら2021年もツアーやイベントの開催延期や延期公演の振替開催が徐々に行われるなどイレギュラーな状態が続いており、これからどういった展開になるのか見えない。しかしマネージャーの川上とメンバーの言葉を信じるなら、ももいろクローバーZは終わることなくずっと続いていく。そしていつかきっと、また会いに来てくれる。どんな形であれ、かつてと同じように楽しませてくれるはずだ。私たちはそのときが訪れるのを待っている。

■田辺ユウキ
大阪を拠点に、情報誌&サイト編集者を経て2010年にライターとして独立。映画・映像評論を中心にテレビ、アイドル、書籍、スポーツなど地上から地下まで広く考察。バンタン大阪校の映像論講師も担当。Twitter(@tanabe_yuuki)

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