EXILE、まだ見ぬ世界へ前進する意志 「PARADOX」で示した“新体制の現在地”

 4月27日発売のEXILEによる2021年第一弾シングル『PARADOX』から、「YELLOW HAPPINESS」「PARADOX」の先行配信がスタートした。

EXILE「PARADOX」

 シングルの表題曲である「PARADOX」は、フューチャーハウス感の強いアッパーなEDMサウンドが強調されたダンスチューン。SKY株式会社の採用向けCMに起用されており、ダンサー・俳優の大貫勇輔、俳優・柿澤勇人が躍動感あるダンスを披露するという、ビート感を活かしたCMがオンエアされている。

 タイトルの「PARADOX」は、詞を見る限り“逆説”、つまり“常識の反転”、そこから転じて“従来イメージからの脱却”を意味しているものと思われる。もっとも、EXILE TRIBE名義のシングル『RISING SUN TO THE WORLD』に収録された新体制一発目の楽曲「RED PHOENIX」の詞にも類似した要素はあったが、今作のそれはより具体的かつ強固なものだ。

 何よりもまず印象的なのは、サビ直前の〈Fun fun we hit the step & step & step〉、そして2番Aメロの〈強く蹴って踏み出そう/いつかの“まだ知らないゾーン”〉という、明らかに彼らの代表曲「Choo Choo TRAIN」の詞を踏襲した2つのフレーズ。それぞれ文字で見てこそ分かり易いが、このビート感と音色の中で聴くと、意外と気がつきにくいのが心憎い点でもある。無論、これは〈それぞれに光るプレステージ/壊しながら挑み続ける〉というフレーズにもあるように、過去の栄光に縋ることなく前進し続けるという彼らの決意の表明だ。

 また、2番Aメロには〈テセウスのStar ship〉というフレーズがあるが、これは「ある物体において、それを構成するパーツが全て置き換えられたとき、過去のそれと現在のそれは『同じそれ』だと言えるのか否か」という同一性におけるパラドックスを指す、“テセウスの船”に由来するとみて間違いないだろう。なおかつ、このフレーズから続く〈未知への旅さ (Take a gamble)/Change or die なら今がそのタイミング〉という一節からしても、この箇所はEXILE ATSUSHIの勇退により最初期(いわゆる“第一章”)のメンバーが完全に居なくなった現在のEXILEを連想せざるを得ない。つまり、この曲は“テセウスの船”を用いることで新体制EXILEの現在地を進んで明示的にしながら、今なおこの時を“未知の世界へ飛び込む契機”であると真っ向から宣言してみせているのだ。

EXILE「PARADOX」

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