“新アイドル”誕生の歴史

ももいろクローバーZの歴史を紐解く 第5回:有安杏果卒業、ももクロの決意

ももいろクローバーZ『田中将大』

 メジャーアイドルのなかでもトップ人気を誇りながら、その地位に甘んじることなく常に人々の好奇心を刺激し、全力でおもしろいことを追求し続けている、ももいろクローバーZ。そんなももクロのヒストリーを紐解きながら、あらためてグループの魅力を掘り当てていく、この短期連載。第5回は、電撃的に発表された有安杏果の卒業から、新境地をみせたアルバム『MOMOIRO CLOVER Z』までを振り返る(第1回〜第4回はこちら)。

有安杏果が卒業、別々の道へ“走れ!”

 「普通の女の子の生活を送りたいという想いが強くなり、わがままを受け入れてもらいました」。これは2018年1月15日、公式サイトに掲載された有安杏果の直筆の手紙の一文である。子役から芸能活動を始め、2009年7月にももクロへ加入。以降はライブやレッスンに明け暮れ、日本国内だけではなく海外公演も増えるなど、きわめて多忙な日々を送りながらも学業を両立させ、2017年3月には日本大学芸術学部写真学科を卒業した。

 雑誌『Quick Japan Vol.116』(2014年)のなかのワンコーナーで、「自分を不安にさせること」との質問に「未来」と回答した有安。またインタビュー記事のなかでは、ライターの小島和宏が「ひとつ気になる出来事があって」と有安に対して切り出し、「「GOUNN」のミュージックビデオ撮影現場で、2020年東京オリンピックが開催される頃、ももクロは何をしているのかと盛り上がるなか、有安だけが「私、まだ(活動を)やっているかな」とこぼしていた」と指摘。有安は、「明日のことはよくわかるっていうか、ものすごく考えるんですよ、私。何事に対しても自分で計画を立てるタイプなので(中略)なんか不安なんですよね、準備をしてないと。うん、準備をしたいんですよ、たぶん」と話していた。

 3年連続『紅白歌合戦』(NHK総合)出場、国立競技場でのライブ、レディー・ガガ、KISSらビッグネームとの共演、アメリカツアーなどを実現させ、グループはとてつもなく大きくなった。しかし同誌面のインタビューを今読み返してみると、有安は人一倍、将来に不安を抱えながら活動していたように思える。彼女は、自分が思い描く人生設計図に不安があった。それはアイドルとしての人気の浮き沈みや経済面、生活面ではなかった。パーソナリティの部分に不安が向いていた。

 1月21日、幕張メッセ国際展示場9〜11ホールで開催された『ももいろクローバーZ 2018 OPENING ~新しい青空へ~』で有安はももいろクローバーZを卒業した。〈今はまだ勇気が足りない!少しのきっかけが足りない!動き出して 僕の体 走れ!走れ!走れ!〉。代表曲のひとつとしてずっと歌われてきた「走れ!」のパフォーマンスは、違う道を歩むことになった有安と4人のメンバー、どちらの背中も押す素晴らしいものだった。

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