声優 石川由依、キャラの成長と共に変化する表現 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』などから考察

 3月6日、『第十五回 声優アワード』の受賞者が発表された。その年に最も印象に残る声優や作品を表彰してきたこのアワードも、2006年から始まって今回で15回目となる。現状ではアニメ専門誌や映画賞以外で、「声優」について評価・表彰するものとしては非常に多くのファンに認知されている賞といえよう。

 この15年の間に、アニメ作品がそれまで以上に眩いスポットライトを浴び続けることになり、本アワードも部門の新設や選定そのもののフローが、徐々にアップデートされ続けてきた。数年前には、「外国映画・ドラマ賞」「ゲーム賞」を新設し、「声優」の職位や役割をよりオープンな形で評価しようと試みている。

 こういったアワードで注目されるのは、やはり主演を務める「主演男優賞」「主演女優賞」を誰が射止めるのか? というところだ。第十五回の主演男優賞に選ばれたのは津田健次郎、そして今回のこの記事では「主演女優賞」を受賞した石川由依に注目したい。

石川由依『UTA-KATA旋律集 Vol.1~夜明けの吟遊詩人~』(通常盤)

 子供時代、6歳のころ劇団ひまわりへ入団し、地元の兵庫から東京へと住まいを変え、2002年からは『赤毛のアン』『家なき子』『銀河鉄道の夜』といった名作ミュージカルシリーズにて主演を務めるほどの実力者へとなっていった。

 2007年〜2009年においても数は少ないがいくつかのアニメ作品に声優として出演しており、特に『DARKER THAN BLACK -流星の双子-』(MBS、TBS系)におけるターニャ・アクロウ役は、花澤香菜演じるヒロインの蘇芳・パブリチェンコとの関係性を含め、非常に印象に残る演技であった。

 その後、舞台女優としてのキャリアを着実に重ねていた彼女だが、再び声優として担当したのが2013年に演じた『進撃の巨人』でのミカサ・アッカーマン役、そして『ガンダムビルドファイターズ』(テレビ東京系)でのコウサカ・チナ役だろう。

 実は、石川が『声優アワード』内の賞を受賞するのは今回が初めてではなく、この年に助演女優賞を受賞している。この時の受賞に大きく影響を与えたであろう作品は、『進撃の巨人』で演じたミカサ役。普段は感情表現が控え目で、クールかつ口下手なミカサは、主人公のエレン・イェーガーに対する気持ちの強さや巨人への憎悪は人一倍強く、激情にかられることもしばしばある。

 アニメ作品における「無口キャラ」「クールキャラ」は、視聴者が想像する以上に演技するのが難しい。喜怒哀楽の振り幅が小さいため、体全体を大きく動かしたり表情をこまめに変えたりなどの分かりやすさではなく、頷き・目の動き・頬の赤み具合など、繊細にアニメーションで表現されることが多い。

 しかも声優がアフレコを行う際には、完成されたアニメーションではなく、ほぼ線書きのみの絵コンテに対して声をあてることが多く、「どんな感情をどこまで表に出すか?」「声そのものの大きさ、声色やトーンはどの程度か?」など、色々と考えながら声をあてなくてはいけない。

 「無口キャラ」「クールキャラ」の微々たる心境変化をしっかりと象るにはとても高度な演技分けが必要になってくるし、キャラクター本人はもとより、マーブル模様のように変化していく人間の感情そのものへの読解力がなければ、演技者として表現するのはとても難しいものになるだろう。

 もちろん声優自身の考えだけでなく、監督や音響監督スタッフを含めてすり合わせし、キャラクターに感情を吹き込んでいく。ストーリーから考えられる感情の揺らぎと昂ぶりを、想像を働かせて表現するのだ。

 その後、石川は『ガーリッシュナンバー』(TBSほか)の片倉京役や『エロマンガ先生』(BS11ほか)の高砂智恵役、アニメ『アイカツ!』シリーズでの新条ひなき役など印象的なキャラを演じていた。