シングル『WILL』インタビュー
TRUEが語る、5周年で得た音楽観と『WILL』への思い 「叶えたい夢があるから、止まるわけにはいかない」
京都アニメーション制作の映画『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』がついに9月18日より公開。そして、TRUEの劇場版主題歌シングル『WILL』も9月16日にリリースされた。TRUEにとっては、劇場版『劇場版 響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜』主題歌を表題にした『Blast!』から1年半ぶり通算15枚目となるシングルとなり、作品のフィナーレを飾るにふさわしい楽曲であると同時に、自身のデビュー5周年の集大成ともいえる内容となっている。彼女はいかにして『WILL』に辿り着いたのか。これまで歩んできた道程を振り返ってもらった。(永堀アツオ)
私にできることがきちんとあるってことを再確認できた
ーー改めて、昨年、2019年にアニソンシンガーTRUEとして5周年を迎えた心境からお伺いできますか。
TRUE:あまりひと一区切りとは思ってなくて。あくまでも通過点の1つだと思っているので、5周年を経て、何か明確に変わったというわけではないと思うんですけど、2019年はリリースよりもライブをやり続けた1年になっていて。そこで得たものはすごく大きかったし、その1年間があったからこそ、今回の曲で1つの集大成と言えるような楽曲が作れたんじゃないかなと思います。
ーーそのライブを通して得たものというのはなんでしたか。
TRUE:それまでは曲を作り続けた5年間でもあったので、自然とリリースすることに重きを置いていたところがあったんですね。でも、ライブをたくさん重ねるごとに、お客さんと一緒に曲を育てているんだっていう感覚があったし、私とお客さんの気持ちの行き来があるんだなってことをより実感できたんですね。それと同時に、個人的にもいろんなことがあった1年だったので、私の曲に救われている人がいるっていうことも身をもって感じることができたし、何より私自身が、自分の曲に救われる日が来るっていうことも初めて体感したんです。これまで、いろんなことがあったときに、音楽を作ったり、歌ったりすることしかできない自分がすごく歯痒かったんですけど、昨年は逆に、音楽があってよかったなって思えたし、私にできることがきちんとあるってことを再確認できた。とても意味のある時間だったなと思います。
ーー5周年記念コンサートを含め、ライブが多数決まってました。
TRUE:そうですね。止まらずに歌う環境があったので、とにかくたくさん歌い続けて。そこで、自分自身が歌っている意味とか、音楽に対しての向き合い方を再確認できました。こうして私が前に進んでいる姿を見て、一緒に前に向かって歩いていこうっていう気持ちになってくれたら嬉しいなと思います。
ーーライブでは過去5年間にリリースしてきた曲もたくさん歌ったと思いますが、シンガーとして転機になった曲を挙げるとすると?
TRUE:たくさんありましたね。私の音楽人生は、もともとはポップスを歌っている期間があって。その後、たくさん回り道もして、いろんな世界を見せてもらって、今、ここにたどり着いて。ここ=TRUEが、私にとっては最後の真実の場所だと思ってるんですけど、まず、TRUEとしてもう一度歌う力を与えてくれたデビュー曲「UNISONIA」は大事だし、その後に、音楽の楽しさと辛さとやりがいを教えてくれたのは、アニメ『響け!ユーフォニアム』だし、『転生したらスライムだった件』のED「Another colony」はこの先も音楽を続けていく上で負けない強さをくれました。ポイントポイントで欠かせない大切な曲がありますね。
ーー今、ポップスを歌っている期間の話がありましたが、その頃はご自身にとってどんな日々でした?
TRUE:とにかく自分のために曲を作って、自分のためだけに歌っていました。それが若さってことなのかな。でも、その時よりもはるかに今の方が、自分が唄う歌や周りの環境に温かみを感じていて。それはきっと、私の意識の差だけだと思うんです。当時を思い出すと……すごく素直なことを言うと、もっと色んなものや人を大事にできたらよかったなって思います。やっぱり、当時は、世の中の10代の子たちも一緒だと思うんですけど、周りにある環境が永遠に続くような錯覚があって。今は永遠なものなんてないって知ってるし、自分の置かれている環境がどれだけ恵まれているか理解しているつもりです。
ーー大人ですね。どんなものもいつか終わりが来ることを知ってるっていう。
TRUE:そう。あくまでも今、振り返ってみるとっていうことですけどね。その時はただ、目の前にあることに一生懸命なだけだったから。今、思うと、もっと違うやり方もあったし、もっと違う向き合い方もあったなって思います。今の方が歌を唄うことに対して真摯に向き合うことができているし、心の底からはるかに楽しいって思えます。諦めないで続けてきて本当に良かったです。
ーー2011年に作詞家に転向し、2012年から本格的に活動を始めました。
TRUE:作家になった当時は必死すぎて記憶があまりなくて(笑)。
ーーでも、2012年にはFairies「Beat Generation」で有線音楽優秀賞を受賞してるじゃないですか。とても幸先のいいスタートですよね。
TRUE:ありがとうございます。でもすんなり受賞できたわけではなくて、最初の頃は曲もないまま書いた歌詞をマネージャーに添削してもらって、書き直して、また提出してっていうことをしてて。コンペに参加させてもらうようになってからも、一つのデモに数パターンの歌詞を提出するっていうことを繰り返していたんですね。そんな中で、一番最初にお仕事をいただいたのはフライングドックの野崎(圭一/音楽プロデューサー)さんで、本当に譜面の書き方から、作詞家としての仕事の仕方から、1から教えていただいて。最初が山口理恵さん(「Eternally」)で、そのあとに南里侑香さんの曲を何曲か書かせていただいたんですけど。
ーー現在もフライングドックが制作しているワルキューレに作詞家として携わっているのは、期待に応え続けてきた結果ですよね。
TRUE:ありがたいです。本当に野崎さんには感謝しかないです。今は、なかなか人を育てようっていう環境は持てなかったりするから。本当に1から全部教えてもらいましたからね。
ーーそして、2014年に、作詞家・唐沢美帆としての活動に加えて、アニメ『バディ・コンプレックス』のOP主題歌「UNISONIA」で、アニソンシンガー・TRUEとしてデビューしました。「UNISONIA」はご自身にとってどんな曲になっていますか。
TRUE:当時の私の憧れそのものですね。アニソンシンガーはこういうものであってほしい、もっと世の中にこういうアニソンが出てきてほしいっていう気持ちをそのまま曲にして歌っていて。今、思うと、ちょっと恥ずかしいというか(笑)。自分の理想が強すぎて、その理想に自分を当てはめようとがんじがらめになってるんですよね。もっと伸び伸び表現すれば良かったし、もっと好き勝手に、自分のことを描けば良かったなっていう気持ちもありますね。でも、あのときはあれが精一杯だったので、それはそれで正解だと思うんですけど。
ーーアニメ『響け!ユーフォニアム』(2015年〜2019年、以下『響け!』)は1期と2期のOPテーマ、劇場版2作品の主題歌を担当してます。
TRUE:いちばん付き合いが長い作品だと思います。TRUEとしてデビューしたての頃に、ちょうど京都アニメーションさんと知り合って。『響け!』のアニメが今年で5周年なので、制作期間を入れたら本当にデビューからずっと一緒に歩んでいる作品です。1期のOP主題歌「DREAM SOLISTER」がきっかけでたくさんの方に私の声を届けることができて。人生を変えてくれたし、私の見てる世界もすごく広げてくれた作品だったと思います。この作品と出会ってからなんですよね。自分のことを書こう!と思ったのは。
ーー自分のことを書こうというのは?
TRUE:『響け!』はガムシャラにコンクールの金賞を目指して頑張る話なんですけど、それだけではなくて、心理的な葛藤を生々しく描いた作品なんですね。キャラクターを通して自分の心の奥底と向き合っているうちに、自分が感じていることをそのまま曲にしないともったいない、私も葛藤しなければいけないなと思ったんです。それまで私が描いていた理想とする人は、きっと私が思っているのとは別の人だし、私はその人には決してなれない。そこに自分を置いていても、それ以上、世界は広がらないし、どんどん狭まっていくだけだろうっていうことを、作品を通して感覚的に感じ取ることができた。もっとわがままに、自分のことを書いてもいいのかなって思ったんです。だから、それ以降は、自分のことを書くようにしてます。
ーーそれは、TRUEとして歌う曲を唐沢美帆が作詞する場合はっていう意味ですよね。
TRUE:そうですね。もちろん、キャラソンだったり、アニメの登場人物が唄うテーマソングは違います。私=TRUEに任せてもらった場合は、歌ってるシンガーの人生の重みが乗らないと作品にも失礼だと思うんですよ。まず、大前提として、作品の本質を理解していなければ、曲は書けません。その上で、その作品を通して自分を見たときに出てきた言葉を素直に歌詞にしていく。自分が自然に綴っていく言葉の中で作品の色みたいなものが出せるのが理想だと思って書いてますね。
ーーもうひとつ、『転生したらスライムだった件』(2018年〜2019年)についても聞かせてください。ED主題歌と挿入歌を担当していて、「Another colony」はフェスでも人気曲になってます。
TRUE:作品との出会いはその時その時で受け取るものが違うんですけど、『転スラ』との出会いで、今後、どういう音楽を打ち出していこうかっていう音楽性がより明確になりました。もちろん、作品によって、いろんな曲調のものをリリースしていくと思うし、曲の振れ幅はすごく大きくていいと思っているんですけど、『転スラ』に関しては、私の音楽の真ん中に立っている軸が一番今までで出せたんじゃないかなって思ってます。
ーーそれは、どんな音楽だと言えばいいですか。
TRUE:とにかくブレずにまっすぐに強い。そんな力強さをロックのサウンドに乗せて届けられたんじゃないかなって思います。なんというか、等身大で歌えたんですよね。過度に自分より幼くなることもなく、大人びることもなく。そのままで歌たえましたね。