“2020年代型茅ヶ崎サウンド”鳴らすSPiCYSOL、メジャーデビュー伝えた渋谷CLUB QUATTRO公演

SPiCYSOLによる2020年代型茅ヶ崎サウンド

 また、甘くレイジーなムードはセクシーなエレキのリフならではだし、それが素直なリリックと溶け合った「Mellow Yellow」、骨太なファンクビートとマイナーチューンで艶っぽさもありつつ、車の窓をオープンにして高速を走るような体感を得た「BOHO」も、恋愛をポジティブかつロマンチックに表現するこのバンドのキャラクターが横溢していた。R&Bやソウルの濃厚さではなく、爽快な聴感やバンドグルーヴを持ちつつスウィートな気分にさせてくれるバンド。日本ではなかなか貴重だ。サウンド面でのハイブリッド感に加えて彼らが新鮮なのは、恋が始まる瞬間のオープンマインドを後押ししてくれるリリックや曲展開なのではないだろうか。

 後半のMCでは改めてメジャーデビューが決まったことをファンを目の前にして発表し、大きな拍手が贈られる中、新曲「ONLY ONE」を生披露。TELASAオリジナルドラマ『主夫メゾン』の主題歌でもあり、〈どんな僕でいても君が笑ってくれるから〉や〈豪華な家に住んでいたって 街の外れのメゾンだって〉とドラマとのリンクを見せ、変わらないのは君がオンリーワンであることだと着地する。KENNYがフロアの様々な方向を指しながら〈You are the only one〉とリフレインしたのは演出ではなく、素直な気持ちの表現に見えた。本編ラストの「Two Eyes」もユニークで、民族的な笛の音に聴こえるのが実はギターリフで、1曲の中の音楽的なレンジの広さが、学習とか研究的なものではなく、好奇心やピュアなJOYの感情から生まれていそうなのが、このバンドらしい。

 あっという間の本編10曲がフィニッシュし、一足早く会場と配信視聴者限定で「ONLY ONE」のMV解禁の流れかと思いきや、所縁のある著名人、大黒摩季、ベリーグッドマン、浦和レッズの槙野智章選手、そしてMVでも演じている結木滉星からのコメントが映し出され、思わぬサプライズに「これがメジャーのやり方かぁ!」と、驚きと嬉しさを隠せなかった4人。交友の幅の広さはイコール、様々なフィールドでファンを獲得している証。この時世を肩肘張らずに生きるスタイルが、メジャーデビューによってより知られていくことになりそうだ。なお7月3日の通称“波の日”には自身最大規模となる Zepp DiverCity(TOKYO)での自主企画も決定。彼らの作る有機的なつながりをイベントでも確認できそうだ。

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Qetic」「SPiCE」「Skream!」「PMC」などで執筆。音楽以外にカルチャー系やライフスタイル系の取材・執筆も行う。

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