PEDRO、愛と感謝を爆音でかき鳴らした初の単独武道館レポート
BiSHのアユニ・Dによるソロバンドプロジェクト PEDROが、自身初の日本武道館単独公演『生活と記憶』を2月13日に開催した。ボーカル兼ベースのアユニ、ギターの田渕ひさ子、ドラムの毛利匠太だけではなく、観客の誰もがコロナ禍の日常に思いを巡らせていたはず。ライブの終盤、アユニが語りかけた「眠れない夜が来ませんように、元気に生きていてください」という客席に向けたメッセージを、帰り道に何度も反芻したくなる一夜限りの公演だった。
コロナ禍で、ライブ・エンターテインメント界はあらゆる打撃を受けていた。無論、2018年9月から活動を続けてきたPEDROも例外ではなかった。昨年は、3月から予定されていた『GO TO BED TOUR』の全公演が中止に。6月には、その最終公演を飾る予定だった新木場STUDIO COASTでの無観客配信ライブを行った。その後、8月にリリースした約1年ぶりの2ndアルバム『浪漫』を携え、9月からは有観客の全国ツアー『LIFE IS HARD TOUR』で全国9都市を行脚。今年1月から2月にかけては全国3都市を巡るライブハウスツアー『SOX & TRUCKS & ROCK & ROLL TOUR』を敢行し、日本武道館公演の直前、2月10日に2ndシングル『東京』をリリースした。
そして、満を持して行われた自身初の日本武道館公演。ソーシャルディスタンスの取られた客席からの熱い視線を受けて、会場中央にあるステージに立ったPEDROの3人は、渾身のパフォーマンスを繰り広げた。
1曲目は、PEDROの代名詞的な曲の印象が強い「自律神経出張中」。イントロが会場に鳴り響くと、アユニが「武道館!」と叫び、歓声を出せない環境でありながら、観客たちは曲のフレーズに合わせて、拳を力一杯にかざしながらステージに応えていた。
2曲目「猫背矯正中」と3曲目「来ないでワールドエンド」に続いて、アユニの「PEDROです、よろしくどうぞ」の一言を受けてスタートしたのは「WORLD IS PAIN」。疾走感溢れるメロディが記憶に残る「愛してるベイベー」では、ドラムスティックを頭上で叩き観客を煽る毛利につられて、客席に手拍子が広がっていった。
激しいドラムロールから始まる「後ろ指差すやつに中指立てる」と、ギターリフが耳に残るキラーチューン「GALILEO」で会場はさらにボルテージを増す。〈人間だもの〉と繰り返すフレーズが印象に残る「pistol in my hand」や「ボケナス青春」に続き、客席がじっと見守る中で歌い上げた「うた」が終わると、この日の公演にかける思いをアユニがつぶやいた。
ステージから360度の客席を見渡せる会場を見上げながら「うわ......。夢のようですね」とこぼしたアユニ。直前まで開催していたライブハウスツアーでは「ライブハウスならではの近さだったり暑苦しさだったり、匂いとか、特別なものを味わいました」と振り返り、当日の感想を語った。
初めて立った武道館のステージについて「本当に今日という日がやってくるのだろうかと感じていたんですけど、こうして無事に迎えられて、皆さんに感謝しかございません」と一言。その後、アユニの「今も地球は回っております。回転、スターティン!」の合図で、当初は南側を正面にしていたステージがグルッと半周。舞台上の彼女たちが北側を向くと、ライブは後半戦へと突入した。
後半戦は、幻想的なライティングの演出が目立った「浪漫」、自身で書き下ろした楽曲「へなちょこ」からスタートした。アユニの「山あり、谷あり、無問題!」の威勢のいい曲振りで始まった「無問題」では、ステージの正面から花道を通り、Music Videoにも登場する頭と下半身が牛、上半身だけが人間の“ケンタウロス”のようなキャラクターが乱入。ステージを縦横無尽に動きながら客席を煽り、メンバーと一緒に会場を盛り上げた。
ドラムソロでスタートした「Dickins」を披露すると、再びのMCへと続いた。「上京して、一番最初に住んだのは六畳一間の部屋で」と、回想したアユニ。「生活が一変したので、なかなか暮らしに追いつかなかったり、上手に眠れない日があったり、生ゴミの袋が溜まったり、丁寧な暮らしとは真反対な生活でした」とつぶやき、「でも、そんなほんのちっぽけな宇宙の片隅の小さな部屋で、私は、大きく叫びたがっていました。そんな曲です」と話して披露したのは、アユニ自身が作詞作曲した1曲「丁寧な暮らし」だった。