ファーストサマーウイカ、“新たな肩書き”への挑戦 音楽の変遷から辿る生き方

ウイカ、音楽の変遷から辿る生き方

また歌って欲しいと言ってくださる人の声が、私の全ての原動力

ファーストサマーウイカ

――そんなBILLIE IDLE®での活動も経て、ソロデビュー曲の「カメレオン」で約7年ぶりにメジャーに戻ってきていかがですか?

ウイカ:まず「メジャーアーティスト」という肩書きが新たに乗っかってきたのはめちゃくちゃ嬉しい。自分のソロ曲は過去にBILLIE IDLE®で1曲あったけど(「恋のマジカルバイブレーション」、2016年の『"4 in 1" THE OFFICIAL BOOTLEG』収録)、それもスピンオフ的な感じだったから、これは本当に私だけの曲なのでめちゃくちゃ嬉しいです。今までの私の手段って、周りが緑だったら私は赤色みたいな、その中で一番目立つ色を選択したりとか、そういう風に周囲を察知して色を変えていくことで隙間産業をする、みたいなことだったんですよ。でも、ソロとなると隙間がないから、今まで培ってきた技が使えない。そこは「やれんのかな?」って、楽しみではありますね。わからないからこそやってみたい。今回、阿部真央さんに素晴らしい曲を書いていただいて。真央さんが本当に細かく私という人間をヒアリングしてくれて、オートクチュールのごとく作ってくれたんです。それに真央さんの想いも乗っている。真央さんの服のサイズが私にもぴったりだったんですよね。そこにいろんな人が私というアイテムを使って、いろいろ遊んでくれる。私は、自分という存在を一個中において、もう一歩外から見る。そういう作業は今までと変わらなかったんです。例えば歌番組に出るにしても自分の中に監督や脚本家を立てれば、作業的には今までと同じで。ただ、ソロっていうのはそういうジャッジをする人が、第三者ではなく自分の中にいて、そしてお客さんに届ける。これも楽しそうだな、って。そこを不安要素にする必要は全然ないと感じました。

――「MEETS CAREER」(※2)のインタビューでは、天才ではない、1位ではない人間ならではの芸能界での戦い方について語っていましたが、歌手としての戦略はありますか?

ウイカ:もちろん外側の戦略はユニバーサルの皆さんにお世話になっていますが、どういうキャラクターでやっていこうとかって考えた時に、さっきも隙間産業の話をしたけど、今度は自分の中での隙間産業ですよね。今までのいろんな自分たちを集結させて、そのどれでもない私がまだあると思っていて。かっこつけたりしても等身大の自分を見せることがアーティストだと思うけど、自分では満足できるようなものを生み出せる気がしない。そこで「嘘のない等身大の私というのを他己紹介的に表現したい」って思った時に、同世代でずっと等身大の自分を嘘なく表現してきた阿部真央さんにご依頼させていただいて。結果「カメレオン」ができて。自分で自分を描くよりも、私という人間をさらけ出してくれた歌詞とメロディで、生み出してくださった真央さんには恐怖すら感じました(笑)。自分自身との向き合い方を、私とほとんど近い思考回路で書いてくださったから、今まで才能がなくてやれなかった「私の作り上げたい世界」と、まだ見せたことのないファーストサマーウイカとしてのアーティスト像を「カメレオン」をきっかけに出していきたいですね。

ファーストサマーウイカ – カメレオン【Official Music Video】

――今の状況ならもっと浮かれてもいいはずなのに、とことん客観的だしロジカルですよね。

ウイカ:野心があるわけでもなく、今の自分に満足していないわけでもない。でも、飽き症でせっかちだから、限られた人生の中で全部やってみたい、という好奇心だけはあるんですよね。今マスに出てこれたというのは、言い方はアレだけど確変みたいな、もう超ラッキーなだけで。確変はいつか終わるけど、この時期に私を知ってくれた層もいるから、またその人たちと新しい仕事ができるかもしれない。そう思うと将来の不安もない。本当に仕事がなくなったら、仕事が来るようにまた何かやると思います。

――いやー、ウイカさんが自己啓発セミナーをやったら儲かりそうですね(笑)。

ウイカ:あはは! ただ、やっぱり自発的にやれる人間だったらもっと早く大成していたと思います。だから「人とやりたい」というのが大きいんでしょうね。

――それにしても高校を卒業してから、劇団員、派遣OL、女優、アイドル、notアイドル、タレントと活躍してきて、今度はソロシンガー。この間、私のハードディスクから、2014年公開のウイカさんの主演映画『月震のかずみ』も出てきたんです。そういう自分の活動の変遷は、ウイカさん自身の目にどう映りますか?

ウイカ:本当に節操がないなと思います(笑)。基本挫折のない人生で、その場にあるおもしろそうなものとかに、お金とかもあまり気にせず飛びついているだけ。でも、だから今があると思うし、逆に言えば「私はもう女優としてしか夢がない」みたいな思いがなかったからこそ全部体験できたというのもある。たぶんそれは今後も変わらないと思うし、そこに固執しすぎることもない。ただやるときはめちゃくちゃこだわるし、そのプロジェクトが興行としてちゃんと成立するようにがんばる。その作業が楽しいというのもあるので。アーティストって、本当はもっと自分に酔っていて、圧倒的な存在であってほしい。まぁそれを演じる日が来るかもしれないけど。ステージにいる時はそうありたいと思うけど、それ以外のところでは、ぶっちゃけみんなと一緒で、同じように「何者でもない凡人な自分」みたいな葛藤はたぶん一生拭われることがないから。そういう気持ちを代弁できる人になりたい。でも、劣等感というより憧れに近いんだよな、天才みたいな人たちって。その人たちと一緒に仕事をしていたい。そのためには能力があって価値がなきゃいけないから、高めていく日々。

――最後に、今後も歌手活動は続けていく予定はあるんでしょうか?

ウイカ:今までの人生も全部そうですけど、自分の意思で入ってやっているから、歌手活動も一日でも長くやっていきたいし、ひとりでも多くの人に作品、功績を見てほしい。その意思を突き動かしてくれるのは、応援してくださるファンの方達がいるから。また歌って欲しい、ステージを観たいと言ってくださる人の声が、私の全ての原動力です。その声に、過程と結果で全力でお返ししていきたい。夢や展望みたいなものはないけど、例えば歌謡祭みたいなテレビの大きい歌番組に出たいとか、ひとりでツアーを回ったことがないからやりたいとか、アーティストになったからこそできる具体性のある目標はある。もうひとつは、ファンの皆さんが観たい、と言ってくれる景色が私の目標です。それを一個一個積み上げていきたいです。

(※1)https://twitter.com/FirstSummerUika/status/354859429218365440
(※2)https://meetscareer.tenshoku.mynavi.jp/entry/202101-uika

ファーストサマーウイカ「カメレオン」
ファーストサマーウイカ「カメレオン」

■リリース情報
「カメレオン」
作詞・作曲:阿部真央
編曲:akkin
2022年2月22日(月)
配信はこちら

ティザーサイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる