『アイドル楽曲大賞2020』(インディーズ編)
ukka、クマリデパート、リルネードら楽曲が高順位 論客4名が語り合う、苦境にあるインディーズアイドルの現状と活路
11位から20位はアイドルシーンの多彩な現状が反映されている
ーーばってん少女隊からは「OiSa」が4位になりました。
ガリバー:ばっしょーと言えば、スカロック、パンクロックの印象が強いひとが多いかもしれませんが、「OiSa」はまた違った曲調が特徴的かなと思います。メジャーの超ときめき♡宣伝部の「トゥモロー最強説!!」に近いですけど盛り上がる感じ。
岡島:メジャーデビューシングル曲「おっしょい!」を作った渡邊忍(ASPARAGUS)さんが作った曲で、山笠のお祭りのかけ声の「オイサ」に乗っけている。宗像さんはワールドミュージックの専門家ですよね。
宗像:最近は、言葉が厳しくなってきまして、ワールドミュージックも植民地主義的な言葉だとよろしくないという潮流があり、グローバルって言葉になってきています。アイドルからグローバルを目指す、日本の伝統のリズムを取り入れていくという。これはグローバルミュージックですよね。単純にイントロを聞いて、リズムが跳ねる感じから違います。
ーーRYUTistは5位の「ALIVE」、9位の「ナイスポーズ」、さらに15位に「春にゆびきり」と、20位以内にアルバム『ファルセット』の楽曲が3曲ランクインとなりました。
岡島:アルバムに参加している作家陣がパソコン音楽クラブ、清浦夏実、北川勝利、沖井礼二、ikkubaru……と楽曲派フル装備、ストレートフレッシュみたいな感じで。上位にくるだろうとは思っていたけど最高では5位だったのが意外でしたね。
宗像:「平成のTomato n’Pine『PS4U』、令和のRYUTist『ファルセット』」と呼ばれたことに異論はないんですけど、それがアルバム部門で1位を取れなかったことには……。
ガリバー:アルバムとしての評価と単体での評価は分かれちゃう。単発の力が弱いとは言わないけれど、一遍の物語としてのアルバムの出来が素晴らしいからこそ票が散ってしまうのはしょうがない。それでも3曲入っているのはすごいですし。いい曲が多い故のジレンマかもしれないですけど。
ーー7位は開歌-かいか-の「ポプラ」です。
ピロスエ:2019年は21位(「かいかのMUSIC」)でギリギリトップ20に入らなかったんだよね。今回はちゃんと入ってきましたね。
岡島:sora tob sakanaを輩出したZi:zooが制作、プロデュースをやってますけど、ライブハウスのガイドラインをしっかり守る形でライブを続けて来ていた感じですよね。
宗像:「ポプラ」はハーモニーの美しさとポップさが融合していて非常に美しいですね。
岡島:オワリカラのタカハシヒョウリさんが作詞&作曲で、編曲がサクライケンタさん。
宗像:サクライくんっぽい音ですね。
ガリバー:開歌-かいか-は場を盛り上げるというよりハーモニーを聴かせることを重視するグループ。客席がじっと観るタイプのグループなので、ボーカルの力が届く点という点で、このコロナ禍ではプラスに働いたんじゃないかなという気がします。
岡島:止まらずに動き続けてきた成果が出たなという感じがしましたね。
ーーnuanceの「ハーバームーン」は8位となりました。
宗像:アルバムの中でもかなりラップ色が強い曲ですね。2019年は「タイムマジックロンリー」が4位に来ていました。nuanceは横浜のアイドルグループなんですが、常に変な曲を作ってくるんです。1位の「恋、いちばんめ」は分かりやすくディスコですけど、nuanceは変な色でラップを入れてくる。主人公が男性で「ロイド眼鏡」って単語が出てくるんですね。nuanceは特殊な違和感を持ち込むんですよ、平然と。変なイディオムが入ってくる。今年nuanceがいい曲いっぱい出した中でも、そこら辺の面白さが「ハーバームーン」なんだろうなと思いますね。めちゃくちゃいい曲ですね。
岡島:「タイムマジックロンリー」の「準備はいいですか?」などの男性のナレーション風のフレーズは、nuanceとコラボ曲を作ったり楽曲提供している、ラップグループ・絶対忘れるなの志賀ラミーさんが担当しています。これもその特殊な違和感を感じさせますよね。ちなみに僕はnuanceでいうと、今年は「雨粒」に入れましたね。
宗像:あれもいい。
ーーTask have Funは「星フルWISH」が10位にランクインしました。
ピロスエ:つんく♂提供曲の「あしたに向かうダイアリー」が話題になりましたけど、「星フルWISH」のほうが上位だったんですね。つんく♂曲のほうは、シンプルなアレンジで勝負した、しみじみ良い曲というか。でもフックという点では弱かったかもしれないですね。
ガリバー:つん♂タス♀の曲に関しては狙いすぎたんじゃないかなと思います。衣装を含めてプロデュースしてるんですけど、初めてヒールを履いていたり、今までにないことをやらしてみようと。曲のインパクトで言うと「星フルWISH」の方がタスクっぽくて、従来のファンからすると聴きなれた感じ。
ピロスエ:たとえば、ラストアイドルに提供した「夜中 動画ばかり見てる・・・」でのラップ入りR&Bのような曲調とかのほうが、インパクトあったかもですね。
ガリバー:いろいろ考えすぎたんじゃないかと思ってしまいますね。
宗像:「星フルWISH」はソウルフルな曲ですね。乃木坂46の「インフルエンサー」を作った作曲家の、すみだしんやさんですね。幅が広いなと思いました。
岡島:AKB48の「フライングゲット」と乃木坂46の「インフルエンサー」でレコ大を2回取っている実績のある人です。
ーー10位以下に関してはいかがですか?
ピロスエ:11位から20位ゾーンは面白いよね。サンダルテレフォンとかCROWN POP、NELNが上位にきたことで、アイドルシーンの多彩な現状が反映されているのがいいな、と。
岡島:サンダルテレフォンの小町まいさんと夏芽ナツさんは、もともと終演後物販卍のメンバーで、曲はディスコ風のものが多い。ライブもしっかりやっていましたし、2021年どこまで伸びるかって感じです。NELNはukkaのMVも撮っている森岡千織さんがプロデューサーとして参加しているグループで、「ノンフィクション」は2020年の失われたコロナ禍の夏を妄想した曲なんですよね。いい曲がいっぱいある中で、この曲が特に刺さったんだろうなと思いました。