YOASOBI、「夜に駆ける」から『NHK紅白歌合戦』出場、1st EP『THE BOOK』発売までの軌跡を徹底解説

『紅白』で初のテレビパフォーマンス

 「夜に駆ける」のヒットで始まったYOASOBIの2020年、その掉尾を飾ったのは、冒頭でふれた大晦日の『第71回NHK紅白歌合戦』への出演だった。演奏曲はもちろん「夜に駆ける」。同曲は、LINE MUSICの年間ランキングで、BGM/着うた/カラオケの三部門で首位を記録したのを筆頭に、JOYSOUNDの「おうちカラオケ」ランキングで年間1位、Spotifyの年間ランキングでは国内バイラルチャート1位、『MTV Video Music Awards Japan 2020』で最優秀楽曲賞を受賞したほか、Billboard JAPANの『Billboard Japan Hot 100』で年間総合1位を獲得……と、文字通り彼らの代表曲にして、2020年を代表する楽曲となった。

 演奏は、埼玉県東所沢市にある角川武蔵野ミュージアム内の「本棚劇場」からの中継で、映像演出は「夜に駆ける」のMVを手掛けた藍にいな。「小説を音楽にする」のがコンセプトのYOASOBIにとっては、まさにうってつけの場所である。

 この日のためにAyaseが用意したイントロに導かれてカメラが室内に入ると、そこには3万冊の本が並ぶ高さ8mの巨大本棚が出現、カメラがステージ中央に立つikuraをあおり、また俯瞰すると、本棚がまるでマンモス団地と見紛うほどの異様な迫力を生み出した。本棚で作られた壁面にはプロジェクションマッピングによって、蛍光色で彩られた幻想的な空間が浮かび上がり、演奏中はMVと同様に、蝶が舞い、飛散する場面も。また、本棚のそこかしこに据えられた複数のモニターでは「夜に駆ける」の映像が再生され、時折り、本棚やモニターにタイムコードが投影される。まさに圧巻の初パフォーマンスだった。なお、当日はサポートメンバーとして、禊萩ざくろ(Key / Cho) AssH(Gt) 仄雲(Dr) やまもとひかる(Ba)の4人が脇を固めた。

初のCD『THE BOOK』発売

 そして年が明けた2021年1月6日。ついにYOASOBIにとって初のCD『THE BOOK』が発売された。これまで配信限定でリリースされた6曲に加えて、本作のために書かれたインストゥルメンタル2曲と、昨年CFで披露されていた新曲「アンコール」(原作・水上下波『世界の終わりと、さよならのうた』)を加えた全9曲を収めた1st EPは、完全生産限定盤の特製バインダー仕様で、各曲ごとに歌詞カードの紙質を変えるなど、随所に工夫が凝らされた永久保存版である。また、タワーレコード限定で『THE BOOK』収録全曲の初音ミクver.を収録したAyase名義による『MIKUNOYOASOBI』も同時発売。これは事前アナウンスなしのサプライズリリースだ。さらに、この日はテレビアニメ『BEASTARS』第2期オープニングテーマとして、原作者の板垣巴留によって書き下ろされたオリジナル小説『自分の胸に自分の耳を押し当てて』を基に書かれた新曲「怪物」が配信限定シングルとしてリリース。三皷梨菜のディレクションによるMVは、1月13日から配信中だ。次いで1月20日には、同番組のエンディング「優しい彗星」のリリースが控えている。

YOASOBI「怪物」Official Music Video (YOASOBI - Monster)

 以上、駆け足でYOASOBIの活動を追ってきたが、最後にふれておきたいのが、彼らのオフィシャルファンクラブ『CLUB 夜遊』について。1月6日にプレオープンし、現在無料会員登録を受付中。グランドオープン後は、弾き語りや朗読など、ここでしか聞けない番組が配信されるほか、様々な企画が予定されているようだ。2月14日には、初の配信ライブも開催される彼ら、これからもその動向から目が離せない。

■濱田髙志(はまだ たかゆき)
アンソロジスト。これまで国内外で企画・監修したCDは500タイトルを数える。テレビ、ラジオ番組の企画・構成や、書籍編集を手掛け、主にアーカイブを得意とする。
「週刊てりとりぃ」主宰。

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