w-inds. 橘慶太×Hiroki対談【後編】 DJとポップスで異なる、ダンスミュージック制作の視点

w-inds. 橘慶太×Hiroki対談【後編】 DJとポップスで異なる、ダンスミュージック制作の視点

どこまでも正解がないのがトラックメイカーの宿命

Hiroki:KT(橘)ってゴリゴリなダンスミュージックってあんまり作らないですよね。「Get Down」はそっち寄りのサウンドではあるけど、上手くやってるなって思った。

Get Down(MUSIC VIDEO)/ w-inds.

橘:そう、あれぐらいが限界(笑)。俺がやるゴリゴリは、あれぐらいが一番の理想かな。どうしてもポップスにしたい部分はあるから。自分が歌うっていうのもそうだし、歌を入れて成立させたいというのはあるかな。でもさ、例えば俺がダブステップ作ってDJやってたら嫌じゃない?

Hiroki:(笑)。1回くらいDJやってるところは見てみたいな。

橘:それはよく言われる。

Hiroki:3、4年前とか、もっとDJ全盛期の時だったらいけたんじゃないかなと思いますけどね。

橘:俺も昔本当に一瞬悩んだんだよね。トラックを作り始めたきっかけが、ブルーノ・マーズのライブを見にいった時に「どんなに頑張ってもこの人を歌で抜くことは無理だ」と思ったことで。だとしたら自分の歌が世界に通用するわけないと思ったんです。考えたあげく歌は生まれつきの喉の才能でもあるから、トラックだったら世界と同じサウンドを俺も出せる。トラックメイクだったら世界と同じレベルに行けるんじゃないかなというのが一番最初の動機なんだよね。

Hiroki:それは何年前ですか?

橘:7年前くらいかな。その時にDJもガッと盛り上がってきていて。「俺もDJになって、トラックが良ければ世界でライブできるかな」って本気で思った時期があった(笑)。冗談抜きで、マジで歌を辞めてがっつり頑張ってみようかなと思ったこともあったんだけど、さすがにそれは応援してくれている人たちにも失礼だし、日本でそういう考えをわかってくれる人って当時は誰もいなくて。海外だと何十億とかものすごいビジネスになったけど、日本でもそうなるとは言えなかったしね。そういうのもあって夢は途絶えたよね。

Hiroki:でもDJはDJでダンスミュージックを作るのってめちゃくちゃ難しくないですか? 気を付けるところがたくさんあるし。

橘:そうかな? 俺はポップスのほうが難しいっていうか、ダンスミュージックのほうが簡単だと思っちゃうんだよね。

Hiroki:マジっすか。まずノれなきゃだめじゃないですか。それを作りだすのにすごく緻密な……。

橘:わかるよ。細かいビートとかグルーヴとか。

Hiroki:キックのキーがあったり、サブの出方とか、「上音がかっこいいけどノれない」みたいなこともあるし。

橘:究極言うとビートがかっこよければダンスってノれると思わない? でも、ポップスはメロディも歌詞もよくなきゃいけない。俺はそのほうが大変で、思いっきりかっこいいトラックの方が作りやすいかな。

Hiroki:自分で歌もやってるから、そこを計算するとそうなるのか。

橘:そうそう。いい歌、理想の形にするまでにすごく時間がかかるし。歌詞とトップラインのハマりとか、韻の踏み方とか。

Hiroki:それこそ「Beautiful Now」は前に聴かせてもらったものより、やっぱり完成したものを聴くとめっちゃよくなったなって思いました。

Beautiful Now(MUSIC VIDEO Full ver.)/ w-inds.

橘:それ、もうちょっと大きな声で言ってもらっていいですか(笑)。

Hiroki:でも文章になるからね(笑)。

橘:(笑)。いや、でもあの曲はめちゃくちゃ悩んで。歌詞の語尾とか発声とかもめちゃくちゃ考えたから。だからポップスは大変。トラックは1日あればたいていできる。メロディとか歌詞とか歌録りとか、全部しっかりやろうとしたら1週間ぐらいかかる。

Hiroki:じゃあ、トップラインや歌詞の時が一番悩むんですね。

橘:Hirokiは制作のどこで悩む?

Hiroki:それこそ1日でできちゃう時は、大体間違いなくいいものになるんだよね。それが3~4日かかったり、ちょっと途中でやめてまたやろう……ってなると、どんどん負のループになる。あれってなんなんでしょうね。もうそうなったら止めてイチから作ればいいんだけど。気になり始めたら、もういろいろなところが気になっちゃいますから。「別にこれでいいじゃん」と思う人がいっぱいいたとしても、自分の中にあるリファレンス、想像しているいいサウンドまで達していなかったら嫌なんですよ。

橘:作り始める時にどういう曲を作るかのリファレンスはなんとなくあるの?

Hiroki:あります。そのサウンドの鳴りを聴いて、なんでこれがかっこいいのか、このボーカルチョップがいいのか、キックがいいのかとかを考えながらイメージしていきます。KTはこれまで自分が作ってきた曲で完璧に納得いったことってありますか?

橘:完璧はないかもな。でも例えば、今「Dirty Talk」っていう前に作ったニュージャックスウィングの曲を聴くと、めっちゃいいと思ったりはする。あの時よりも今の方がよく聴こえるんだよね。作ってる時は何回も聴いてるし、作品として出す頃にはもう次の曲のこと考えてるから。

Dirty Talk(MUSIC VIDEO Full ver.)/ w-inds.

Hiroki:だいたい人に聴かせる頃にはもう飽きてるからね。何なら自分がすごく成長した気になって、前の曲を聴いて前のほうがいいなって思うこともある。

橘:ある。知識を入れるということが成長とは限らないんだよね。これは本当に難しい問題だと思っているんだけど、教科書どおりが100点ではない。前の荒かった時のほうが逆に良かったなという時ももちろんあるし。

Hiroki:聴いた感じ、そっちの方がパンチがあったり。

橘:エッジが立ってるなと感じたりもするよね。それが最近難しいなと思う。知識はやればやるだけついてきちゃうから。

Hiroki:引き出しは本当に増えますよね。

橘:そう。でもそれが良いとは限らないっていう。どこまでも正解がないのがトラックメイカーの宿命なのかもね。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる