橘慶太の「composer’s session」:Hiroki
w-inds. 橘慶太×Hiroki対談【前編】 歌からサウンドへ、“全部できるようになりたい”気持ちが運んだトラックメイクへの道
橘慶太が憧れるトラックメイクの“神様”的存在の人物とは
橘:普段はトップライナー(メロディを制作する作家)のToruくんと組んで楽曲を作ってるんですよね。
Hiroki:曲作りの途中から、サウンドはクラブミュージックでも、それに歌を乗せたものもやりたいなと思うようになって。Toruとのスタイルで一番近いのはK-POP。結構ゴリゴリしたサウンドだけど歌とラップを入れているような。そういう楽曲を二人で作っていろいろなところに提供したり、あとLDHのアーティストの楽曲はまたそれとは違うパターンで作ったりしていて。今は万遍なくいろいろやっていますね。
橘:ちなみに、マーティン・ギャリックスに憧れた時の一番好きなアーティストがマーティン・ギャリックス? 自分の神様的な存在の人はいた?
Hiroki:神様はいなかったですね。当時出ていたメジャーな曲は全部いいなと思っていたので。曲単位ではSkrillexとかも好きでしたけど。
橘:中にはあんまり好きじゃない曲もある。
Hiroki:ありますね。別に人物が好きっていうわけではなかったですね。
橘:なんか今っぽいね。そういうタイプって。
Hiroki:KTは神様いますか?
橘:マックス・マーティンっていう昔から好きなプロデューサーがいて。自分が曲を作るようになってからいろいろな曲のプロデューサーを調べるようになったんですよ。例えば、テイラー・スウィフト、ジャスティン・ビーバー……彼らにはもちろん才能があるんだけど、でも「こんなにみんながみんなトラックまでかっこいいはずがない」と、絶対何か秘密があるはずだと調べていったら、4人くらいとんでもないプロデューサーが海外にいることがわかって。その中の1人が、マックス・マーティン。向こうではナンバーワンですね。それで掘り下げていったら、自分が今まで好きだった曲のほとんどをマックス・マーティンが手がけていて。
Hiroki:すごい!
橘:「うそだ、これもやってた? これもやってた!?」って。自分が好きだったアッシャーの曲とか、テイラー・スウィフトの曲とかを全部手がけていたのを知って「神様はこの人だ」って思ったね。
Hiroki:自分だったらそこまでたぶん掘り下げてないですね。
橘:最近の海外の作品は基本的にコライトだから誰がどこを作っているかって正確にはなかなかわからないんだよね。
Hiroki:クレジットに書かれている人数もすごいですもんね。
橘:そうそう。誰がトップライナーなのかとか細かい情報は書いていない。でも蓋を開けてみると腑に落ちる時がたまにあって。ジャスティン・ビーバーの「Beauty And A Beat」はZeddが作っているって知ってた?
Hiroki:知ってましたよ。
橘:俺、最初知らなくて。でもZeddが作ってるって言われたらZeddの音なんだよね。そういうのがすごく楽しい。ちなみにその曲のプロデューサーもマックス・マーティン。
Hiroki:その楽しさはわかります。自分で曲を作っていればなおさらZeddがどこの何をやったのかまで気になりますよね。
橘:だから好きな曲は絶対クレジットを見て、その人の名前のインスタを見る。インスタを見て、DAWを使っている人をまず見つける。おおよそDAWを使っている人がトラックメイカーなわけ。
Hiroki:やってる風のやつじゃなくてね(笑)。
橘:そうそう(笑)。トラックメイカーは機材を触っている写真があるから。それでいうと、マックス・マーティンは今はたぶんトラックメイカーじゃないんだよね。プロデュースの総括だと思う。でも俺、理想はマックス・マーティンみたいになりたいんだよね。自分でトラックを作るのってやっぱり大変だから……。
Hiroki:トラック作りってちょっとサボると感覚が鈍りません? だから僕、今でこそJ-POPの曲をやってますけど、月に1曲はゴリゴリのクラブ系のサウンドも作るようにしていて。じゃないと忘れるんですよ。自分の前の曲を聴いて「これどうやってやったんだろう?」って。
橘:わかる。でもそれもたまにはいいんだよね。「なんでこんなにいい音出てるんだろう?」って(笑)。
Hiroki:「すげーこのグルーヴのやついいじゃん!」と思ってプロジェクトファイルを開くんだけど、めっちゃいい音が一発出てるけどサンプルで、大したことしてなかったり(笑)。
橘:ちょっとしたオートメーションだったりするんだよね(笑)。ところで今は音楽のスタイルとしては何が一番好きなの?
Hiroki:やっぱり、ダンスミュージックですかね。
橘:ダンスミュージックと言っても幅広いよね。ヒップホップもあるし、EDMもあるし。
Hiroki:僕、欲張りで、全部好きなんですよ。特定のものに絞りたくないというか。
橘:「全部できるようになりたい!」と思っちゃうよね。
Hiroki:そうなんですよ。例えば詳しくなくてもファンクにトライしてみると、それっぽくなるじゃないですか。ちょっと時間をおいて聴いて割とよかったりとすると、自分の中で1個クリアしたなと。そうやって常にいろいろなサウンドにチャレンジしています。K-POPのチャートを聴いて「これやばいな」と思ったら、別にそれが提供する曲ではなくても、とりあえず作ってみたり。とにかく欲張りなんですよ。全部できるようになりたい。かっこいいと思う曲が自分にできないのが嫌なんです。
橘:BTSの「Dynamite」がヒットしたときも「「Dynamite」みたいなの作りたい」って急に言ってきたよね(笑)。
Hiroki:そう。あれはスラップ音がかっこいい。
橘:それで急にファンクを作り出して。「これどうなってるんだろうね?」って二人で研究したね。
Hiroki:「なんでこんなに広がって聴こえるんだろう?」とか、そういうことを考えている時が一番楽しいですね。