サザンオールスターズのエンタメ性が凝縮 観る者すべてに活力を与えた『ほぼほぼ年越しライブ』開催の大きな意義

 サザンオールスターズが、2020年12月31日、横浜アリーナから無観客配信ライブ『サザンオールスターズ ほぼほぼ年越しライブ2020「Keep Smilin’ 〜皆さん、お疲れ様でした!! 嵐を呼ぶマンピー!!〜」supported by SOMPOグループ』を開催した。サザンの配信ライブは、2020年6月25日に行われた『サザンオールスターズ 特別ライブ 2020 「Keep Smilin' 〜皆さん、ありがとうございます!!〜」』に続き2度目。カウントダウンライブは2014年の『サザンオールスターズ 年越しライブ2014『ひつじだよ!全員集合!』』以来6年ぶりだった。

 昨年6月の配信ライブでは、他のアーティストに先がけ、大規模な会場・人員での公演を実現。“配信=小規模のステージ”という常識を打ち破り、その後に増加した“アリーナクラスの配信ライブ”への流れを作り出した。大晦日の公演でもサザンは、バンド編成、ダンサー、演出を含め、これまでのリアルライブと比べても遜色ない規模のライブを体現してみせた。

 また6月の公演に比べて、(特にライブ前半は)よりマニアックな選曲で攻めていたのも印象的だった。コアなファンを中心としたカウンダウンライブは、レアな楽曲が聴けることも大きな魅力。配信ライブでもそのスタイルを維持し、視聴者からは「神セトリ」「泣ける選曲」などのコメントが数多く寄せられた。

 選曲、演出、パフォーマンスを含め、“これぞサザン!”と称すべきステージを繰り広げたカウントダウン公演。それはまさに、コロナ禍以降のエンターテインメントの在り方を明確に示唆するものだったと言っていいだろう。

 まず映し出されたのは、こたつを囲んだメンバーの姿。桑田佳祐(Vo/Gt)、関口和之(Ba)、松田弘(Dr)、原由子(Key)が「サザンのライブを観ながら年越しなんて、初めてじゃない?」とマッタリ喋ってると、Uber Eatsならぬ“ケーガーニーツ”の配達員に扮した野沢秀行(Per)が登場。届けられたのは年越しそばではなく、“マンピー”のカツラ……というコント仕立てのオープニングだ。こんな演出が楽しめるロックバンドはまちがいなくサザンだけだろう。

 桑田の「嵐を呼ぶマンピー……!?」の一言から画面が切り替わり、ライブ映像がスタート。「サザンオールスターズ!!」という格闘技イベント風のコールとともにメンバーが登場し、桑田のボトルネック奏法によるギターから最初の楽曲「ふたりだけのパーティ」(アルバム『タイニイ・バブルス』/1980年)。そして、根強い人気を持つ「My Foreplay Music」(アルバム『ステレオ太陽族』/1981年)」と80年代のナンバーを続け、往年のファンを歓喜させた。

写真=西槇太

 地球を模した球体型LEDが現れ、テニスプレイヤーの錦織圭、将棋の藤井聡太など各分野で活躍した人々がスクリーンに映し出されるなか「東京VICTORY」(シングル『東京VICTORY』/2014年)へ。メンバー、スタッフが拳を挙げながら“Wow?”と叫び、桑田が〈どうせ生まれたからにゃ/いのちの限り旅を続けよう〉と歌う映像からは、“日本を少しでも元気づけたい”という強い思いが伝わってきた。

写真=関口佳代

 「全国のファンのみなさんの魂と共に、半年ぶりに横浜アリーナに帰ってまいりました。コロナウイルスというこれまでに経験したことのない災害の年が、まもなく暮れようとしております。来年こそは幸せな年でありますように、祈りを込めて。サザンオールスターズ、新たな素晴らしい夜明けに向けて、楽しく過ごして参りたいと思います!」という言葉の後は、レアな楽曲を次々と演奏。リトルフィートへのリスペクトを注ぎ込んだサウンド、日本のお正月をテーマにした歌詞をハイブリッドさせた「いとしのフィート」(アルバム『熱い胸さわぎ』/1978年)、オーセンティックなレゲエを取り入れた「恋するマンスリー・デイ」(シングル『恋するマンスリー・デイ』/1980年)、サザンロックと歌謡を融合させた「夜風のオン・ザ・ビーチ」(アルバム『ステレオ太陽族』/1981年)といった初期の楽曲でファンを喜ばせる。ロック、レゲエ、ソウルなどの幅広いルーツミュージックを誰もが楽しめる日本語のポップスに結びつけてきたサザン。ライブ序盤で演奏された初期の名曲からは、このバンドの革新性が今もまったく色褪せていないことを証明していた。首元に真っ赤なキスマークを付け、ケレンミと叙情性を共存させた歌を響かせる桑田も絶好調だ。

 やはり80年代の名曲である「Ya Ya(あの時代[とき]を忘れない)」(シングル『Ya Ya(あの時代[とき]を忘れない)』/1982年)では、お客さんが“密”な状態で盛り上がる過去のライブ映像が映し出される。さらにラテン風味を色濃く反映した「愛は花のように(Ole!)」(アルバム『Southern All Stars』/1990年)、プログレ×サイケデリックな音像の「世界の屋根を撃つ雨のリズム」(シングル『BLUE HEAVEN』/1997年)、球体のビジョンに満月を映し出すなか、古き良き昭和を想起する「栄光の男」(シングル『ピースとハイライト』/2013年)などを披露。80年代〜10年代までを自在に行き来しながら、驚くほど幅広い音楽性をたたえた名曲を、奥深いバンドグルーブとともに体感するーーそれはまさに「これこそサザンの真骨頂!」と快哉を叫びたくなる場面だった。

 ギターのイントロが鳴った瞬間に、コメント欄に歓喜の声が押し寄せた「LOVE AFFAIR〜秘密のデート〜」(シングル『LOVE AFFAIR〜秘密のデート〜』/1998年)からライブは後半へ。スクリーンに横浜の夜景が映されるなか、ハンドマイクの桑田は客席とカメラに向かって手を振り続ける。さらに「ボディ・スペシャルII(BODY SPECIAL)」(シングル『ボディ・スペシャルII(BODY SPECIAL)』/1983年)では、シックなジャズアレンジから原曲通りのロックチューンに移行する演出も。音楽そのものを極上のエンターテインメントに結びつけるアイデアと技術に唸らされた。

 仮面&下着姿の女性ダンサーがフライングを決めた「エロティカ・セブン EROTICA SEVEN」(シングル『エロティカ・セブン EROTICA SEVEN』/1993年)からは、まさに“嵐を呼ぶマンピー!!”というタイトルに相応しいド派手なクライマックスに突入。「スタンド、スタンド、アリーナ、画面越し、その日は必ずやって来るぞ!」という名シャウトが飛び出した「BOHBO No.5」(シングル『BOHBO No.5 / 神の島遥か国』/2005年)で勢いをつけ、本編最後の「マンピーのG★SPOT」になだれ込む。“嵐”という文字が書かれたカツラを被った桑田は、移動式のクレーンに乗り、紙吹雪を撒き散らす。客席では“ねぶた祭”をはじめ各地方の祭りの衣装をまとったダンサーが舞い踊り、祝祭ムード全開でカウントダウンへ。「マンピーのG★SPOT」(シングル『マンピーのG★SPOT』/1995年)の解放的なパワーを改めて実感できるシーンだった。

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