西川貴教に聞く、2020年のマルチな活動ぶりとエンタメへの向き合い方 「これが本当に自分の生きる道」

西川貴教に聞く、2020年のマルチな活動

新しい組み合わせによってさらに研ぎ澄まされていく

ーー12月30日に新曲「As a route of ray」を配信リリース。この曲はスマホゲームアプリ『アズールレーン』のCMソングとして制作されたものですが、CMには西川さんも出演していましたよね。最初に観たときは……びっくりしました(笑)。

アズールレーン3周年記念 「As a route of ray」スペシャルムービー

西川:そうですよね(笑)。今年は僕がそういう舵を切っていたから余計にですけど、仕事の振れ幅が大きくて、SNSでは「仕事を選ばない人」みたいな扱いになっていましたね(笑)。そもそも最初にお話をいただいたのが一年半ぐらい前のことなんです。ただ、ありがたいことにスケジュールがぎちぎちに詰まっていて、いただいたオファーになかなかお応えすることができなかったんですね。それで正直に「やらせていただきたいんですけど、今はスケジュールの関係で難しいんです」と答えたら、「じゃあ一年待ちます!」と言っていただいたんですよ。そのお言葉をいただけた以上、もう何をやれと言われても応えようと思って受けたので、「やりたいことを100%やってください、僕は何でも受け入れます」って感じでした。

ーーそれがCMでの美少女艦船化だったと。

西川:そうですね。やる以上は徹底的にやりたいので、例えばコスチュームひとつとっても、「僕が信頼している制作チームと一緒にやっていただけるとクオリティを担保できると思います」と、ご紹介しました。

ーーCMソングの「As a route of ray」はASCAさんとのコラボ曲「天秤-Libra-」を制作したRUCCAさん(作詞)、菊田大介(Elements Garden)さん(作曲・編曲)のタッグによる書き下ろし。この楽曲は聴いた瞬間に「ああ、西川貴教の曲だ!」と納得できる仕上がりです。

西川: 2018年から本格的に西川貴教名義での音楽活動を始めてから、ありがたいことに本当にたくさんのミュージシャンや作家のみなさん、音楽に携わるみなさんが僕と組みたいと言ってくださって。それ以前はなかなかそういった機会を持つことがなくて、さっきの「置かれた場所で咲く」じゃないですけど、新しい組み合わせによって見たことがないような角度で自分のことを見ることができて、自分自身が今まで磨かれたことがない部分が、さらに研ぎ澄まされていくんじゃないかなと。僕はハードロックしか聴いていなかった学生時代からバンドを経てソロになって、まったく違う音楽性、まったく違うアプローチで自分がもがいていく中で「T.M.Revolution」というスタイルを導き出し、それによってたくさんのものを見せていただけた。もちろんT.M.Revolutionという存在は自分が築き上げたものですし大切なものなんですけど、そこからもうひとつレイヤーを上げたいなと。

 さっき仰ったみたいに、自分もいよいよ「満足」とか「楽しむ」みたいなことをどこかで置いていかなくちゃいけない年代に、どうしてもなりがちなところではあるんですけど、逆にここでもうひとギアを入れられるんじゃないか、自分が知らなかったゾーンに行けるんじゃないかと。新たな組み合わせ、新たなシナジーを裸一貫で自分から求めていく。ひとつの素材や原子の一部みたいに、西川貴教という最小限の組織に自分自身を戻すという狙いがあったので、この一年というのは特に、ASCAやJ、鬼龍院(翔)くんとのシナジーでまた全然違うケミストリーが生まれて、僕が狙っていた一年に結果的にできたと思います。

ーー「As a route of ray」のメロディやアレンジは西川さんが歌うことを意識して作られたものですが、歌う際に意識したことは何かありましたか?

西川:ありがたいことに、僕がこれまで作ってきたものを聴いて「いつか一緒にできたらいいな」と思っていたと言ってくださるクリエイターたちがたくさんいて、みんなの中に僕がどう歌っているかすでに鳴っていたりするんでしょうね。だから、レコーディングまでは色々ディスカッションするんですけど、レコーディング作業自体はただ曲に没入していくだけって感じです。特に今回の場合は、「天秤-Libra-」で気持ちいい関係が作れていたので、また新たなチャンネルを掘ってみようということで「As a route of ray」が生まれたんです。

西川貴教+ASCA「天秤-Libra-」Music Video (Short ver.) (TVアニメ『白猫プロジェクト ZERO CHRONICLE』OPテーマ)

 僕の中で「次にやるんだったらこのあたりを狙いたいな」というイメージがあったんですよ。4分打ちとも16分のゴーストとも取れないような感じで、展開が多くてスピード感もあるという、とにかく飽きさせないものを考えていた。かつ、クライアントのみなさんにも一年待っていただいて満を持してですから、求めてくれているもののさらに上へ行けるようにというのは、テーマとして狙っていました。

ーーこの爽快感の強い楽曲で2020年を締め括るというのも、気持ちいいですよね。

西川:出来もすごく気に入っていたけど、コロナの影響で色々なスケジュールが崩れてしまって、本当はもっと早くに届けたかったです。今はどうしても陰鬱な気持ちになりがちなんですけど、少しでもこういった楽曲で楽しんでもらえたらいいなと思いますね。

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