横山健が語る、ピザオブデスが培ってきた“人との向き合い方”「日常での理解の深さがすべて反映されていく」

横山健が語る、ピザオブデスが培ってきた“人との向き合い方”「日常での理解の深さがすべて反映されていく」

 11月20日、ピザオブデスが、所属バンドによる一発録り音源をレーベル主催のナンバリングシリーズとしてリリースしていく企画、PIZZA OF DEATH RECORDS presents 『BECAUSE IT’S 2020』を始動した。同企画のスタートには、「バンドとは何か、音楽作品とは、ライブとは、そしてレーベルとは一体なんなのかを考え続けた」というレーベルからのメッセージがともに添えられている。

 コロナ禍となった2020年において、音楽業界はライブの縮小をはじめ、これまでの活動の見直しが余儀なくされた。それはピザオブデスにおいても同様の問題だったのかもしれない。ピザオブデスは、4月にサブスクリプションサービスの解禁、5月にはYouTubeのライブ配信も行い、上述の『BECAUSE IT’S 2020』は、初めてレーベルの名前を冠した企画となる。

 そこで今回リアルサウンドでは、横山健に2020年を振り返るインタビューを行った。Ken Yokoyamaとして、ピザ・オブ・デス・レコーズ代表として今の思いを語ってもらった。(編集部)

何がバンドのためにいいか

ーー2020年、どんな年でしたか。

横山健(以下、横山):うーん……ミュージシャン、レーベル、いち社会人としては酷い年だった。こんなことが生きてるうちに起こるなんてなぁ、ぐらいの。でもいち人間としては、こんな年があってもいいんじゃないかとちょっと思ったり。

ーーそれはどういうところで?

横山:やっぱりのんびりできた。まぁ外は怖かったけど、ずいぶん家で「あぁ、今までこんな時間なかったな」って楽しめたから。もちろんそうすると……精神的に弛緩してくるわけですね(笑)。僕の場合は相当だらけた生活をして、これいいなぁって、ずーっと家で余裕ぶっこいてた感じ。はははは!

ーー(笑)。とはいえ、ピザオブデスの動きは早かったです。まず4月にサブスクリプションサービスの解禁がありました。(参考

横山:そう。これは数年前から話してたことで、タイミングがそこになっただけで、実は今年狙いすましてやったわけではなくて。やっぱりサブスクが台頭するにつれて、みんなで「俺たちどうしようか?」っていつも考えてた。これまでもLPからCD、CDからデジタルって移動はあったけど、ここまで聴かれるフォーマットが変わる事態に直面したのは初めてなの。音源のデジタル配信、iTunesの曲のバラ売りとかはあったけど、そういうのには俺、徹底的に抵抗してたはずで。もちろん「これはいい加減出しておかないと」っていう作品はデジタルで売ったりしたけど、でもやっぱり「こんなんで聴かれるはずねぇ、こんなの浸透するはずねぇ」とずっと思ってた。

ーーえぇ。そこはファンもよく知るところです。

横山:ところが思わぬ形でサブスクが出てきて、もうやってないことが完全にマイノリティになってしまう、拒否してるとお話にならなくなってしまうな、と。レーベルとして恰好つけるのもいいけど、これはミュージシャンの可能性を潰すなぁと思って。いつまで持ちこたえられるか、意地張っていられるかって思ってたけど……世の中のプロダクツの変化を見ても、今やパソコンにCDスロットが付いてないとかね、もうCDは前時代のものなんだなって認めざるを得ない。ここはもう完全に白旗ですね。

ーーネット利用の話でいうと、5月にはYouTubeのライブ配信もありました。過去の映像作品が一斉に見られるという試み。(※現在は配信終了)

横山:そうそう。あれはウチの社員が考えてくれたこと。ライブがなくなったのは、みなさんにとって喪失感が大きい……ほんと言葉以上に大きな楽しみを奪われたことなんじゃないかと。しかもコロナの世相だと「だったら他を見つけよう」って話でもないじゃない、家にいなきゃいけないし。だったら過去、お金を払って買ってもらった作品であっても、「何時にパソコンの前に座ってたら見れるよ!」っていうお得感を味わってもらいたかった。

ーーアイデアは健さんではなく、スタッフから出てくるんですか。

横山:そう。いつの間にかそういう感じになってて。「やろうと思うんですけど、どう思います?」「うん、すごく素敵だね」って。僕もうザル社長なんで何もしてないですよ。だいたい俺が考えたところで案外ハネられる。「そんなことは実はずっと前に議論してます」みたいな。それはコロナに関係なく、遡ると震災の頃からかな? ここ10年はずっとそんな感じがある。

ーー意見が上がってきた時、それがピザらしいかどうか、というジャッジはあるんでしょうか。

横山:もちろん。刺激的かどうか。「あぁ、それ面白いね!」って言えなかったら「それってウチでやる意味あるのかな?」って俺も言うだろうし。そこは社長らしく判断してる。

ーー現実を考えたらサブスクもYouTubeも使うほうが便利、まぁピザといえどもそういう時代ですね、という感覚で見ていたんです。ただ、『BECAUSE IT’S 2020』に関してはピザオブデスの意地を感じました。(参考

横山:うん。原盤制作会社でもあり、マネージメントもしてるけど、簡単に言うと「バンドに生き生きしてもらう」場所なわけでしょ、ピザオブデスって。そういう会社の矜持ですよね、これは。

ーーこれもアイデアは健さんからではなく?

横山:全然俺じゃない。ただ話聞いて「あぁ面白いね」っていうのはあった。すごく素敵だなと思った。これが何の意味があるのかは後々さらにわかってくると思うし。で、ほんと言うとね、年内に全部リリースしきらないとちょっとパンチも薄れるなと思ってたの。2020って数字を打ち出してるわけだから。年内4バンド、来年に5バンドっていうギリギリの感じ。そこは物理的に無理だったみたい。そうやってちょっと漏れちゃうのもピザらしいところで(笑)。

ーー実際の無観客ライブはどうでしたか。

横山:うーん……やる側としては、とてもじゃないけど楽しいもんじゃなかった。やっぱり無観客って厳しい。さらに言えばKen Bandは1年ライブやってないまま、ずーっと新曲作りモードだったから。そこで過去曲を何曲か揃えて、人のいないライブハウスでバーンと演奏するって、簡単なようですごく難しかった。最初は漠然と「鉄板曲並べて、この際ベスト的なものを作っちゃおうかな」と思ってたんだけども。でも鉄板曲であればあるほど、お客さんみんなと歌う曲が多くてね。今の俺たちにとっちゃ「シンガロングも込みで曲なんだな」って身につまされるほどわかった。だからお客さんなしではできない曲がいっぱいあったかな。

ーーつまりレーベルの長として「素敵だね、ぜひ」と思えた企画でも、ミュージシャンとしては100%やりたいことではなかった。

横山:実はそう。そのギャップも埋まらないまま今に至ってる。でもやっぱりやるべきだと思った、レーベルの長としてもミュージシャンとしても、そういう機会を与えられたらやっておきたいと思った。

ーーそこにあるのは「レーベルって何?」という話ですよね。所属バンドの目から見て、ピザオブデスってどういう存在なんでしょうか。

横山:すごくユニークな発想をしてくれて、やる側としては面倒臭いけれど、「それはやったらきっと意義深いことだ」って思える可能性のあることを提示してくれるところ。よそのレコード会社、メジャーであろうとインディであろうと、なかなか発想できないことを考えてるなぁと思う。手前味噌になるからあんまり褒めたくないけど、ピザの連中と会話してていつも出てくるのは「何がバンドのためにいいか」っていうことで。それはみんな口にしてるし考えてる。

ーーそれは「レーベルの儲けになるか」とはまったく違う話。

横山:まったく違う。これは俺の理念だったりするんだけど、刺激的なことや楽しいことをやればお金なんか後から付いてくる。お金って結果論であって、いいもの作ったからといって儲かるとは限らないし、すっげぇくだらないもの作ってものすごく儲かることもあるし、そんなものは計算できないの。で、自分たちがレーベルの一員として働くなら、バンドと同じように、それぞれが生きる実感を得なきゃいけないでしょ? それはやっぱり楽しいことを探したり、あと目の前に置かれたものを一生懸命考えることだから。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる