ジャスティン・ビーバーと信仰の関係性(3) ヒルソング教会が抱える問題と今後の行く末

ジャスティン・ビーバーと信仰の関係性(2) 最愛のパートナー、ヘイリー・ビーバーとの出会いより続く)

客演で参加したチャンス・ザ・ラッパーとジャスティンの共通点

 「Holy」には客演として、以前、DJキャレドの「I’m the One」や「No Brainer」といった楽曲で共演しているチャンス・ザ・ラッパーを招いている。彼もまた、幼い頃の日曜礼拝を歌った名曲「Sunday Candy」(Donnie Trumpet & the Social Experiment)やヒップホップにゴスペルを取り入れ、グラミー賞を受賞した名盤『Coloring Book』など、自らのキリスト教への信仰を楽曲に落とし込んでいるミュージシャンとして有名である。だが、ジャスティンとチャンスにはそれ以上に深い共通点が存在する。

Donnie Trumpet & the Social Experiment – Sunday Candy “Short Film”
ジャスティン・ビーバー『Holy [feat. Chance The Rapper] 』
ジャスティン・ビーバー『Holy [feat. Chance The Rapper] 』

 チャンスは、2013年にミックステープ『Acid Rap』を発表した後、2014年にロサンゼルスの豪邸に引っ越している。当初こそ創作活動に打ち込んでいた彼だが、やがて空虚感に飲み込まれていき、やがて処方箋ドラッグのザナックス中毒に陥り、何もしない期間が続いた。そこで彼は故郷であるシカゴへ戻ることを決め、かつてのガールフレンドと復縁し、結婚をし、娘を授かる。

 だが、出産に際して、ある一つの問題を抱えていた。それは、赤ちゃんが子宮の中にいた頃、心房粗動(不規則な心拍)を抱えていたことである。チャンスはひたすらに娘の無事を神へ祈り続け、なんとか健康な状態で出産を迎えることが出来た。この経験が、チャンスが自身の信仰を取り戻すきっかけとなったのである。その後、彼は再びクリエイティビティを取り戻し、カニエ・ウェストとの「Ultralight Beam」や『Coloring Book』の制作を開始するのである。『Acid Rap』以前と比較して、両作において信仰が非常に色濃く反映されている背景には、このような出来事があったのだ(参照)。そして、この「名声を得たものの、やがてドラッグに溺れ、ある時信仰を取り戻し、元の生活へと回復していく」というプロセスはジャスティンと大きく通ずるところがある。だからこそ、今回の「Holy」においてもジャスティンはチャンスを選んだのではないだろうか。

Justin Bieber – Holy ft. Chance The Rapper

 チャンスのバースには、前述のジャスティンと同様に「ルカによる福音書」を引用した、洗礼を示唆する様子が描かれている。この部分からも、本楽曲のテーマが「信仰によって生まれ変わり、新たな生活を迎えること」であることが見て取れる。そして、それは二人に実際に起きた出来事でもあり、聞き手に対するメッセージでもある。

「息子が最初の一歩を踏み出したら、父親はそれを誇りに思うだろう。もし君が水辺に辿り着いたら、彼は雲をかき分けるだろう。(〈I know when the son takes the first steps, the Father’s proud (Yes). If you make it to the water, He’ll part the clouds (Uh).〉)」(「Holy」)

 彼のバースは次の言葉で締めくくられている。これは、ジャスティンとチャンスによる、普遍的な信仰の表現と言えるだろう。この言葉を言えるからこそ、二人の現在の生活があるのだから。

「私は神を信じる。そして、神も私たちのことを信じてくれる。(〈I know we believe in God, and I know God believes in us〉)」 

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