THE BACK HORN、1年ぶりの有観客ライブ『マニアックヘブン Vol.13』 “バンドの核”と“未来への希望”をかき鳴らした一夜に
この後も、THE BACK HORNの独創的な音楽世界をじっくりと味わえる場面が続いた。山田がアコギを弾いた「風の詩」(アルバム『リヴスコール』収録/2012年)では、穏やかにたゆたうようなメロディが流れ、どこか幻想的な音像を映し出す。どこまでも上昇するようなサウンドが印象的な「飛行機雲」(アルバム『暁のファンファーレ』収録/2014年)で〈その悲しみも喜びも共にあるさ また会えるから〉というフレーズを奏でたと思えば、「怪しき雲ゆき」(アルバム『何処へ行く』収録)では“和のハードコア”と称すべき爆音のなかで、怪奇的な歌詞を描き出す。
そして、解放感に溢れたアンサンブルと、〈正体不明の絶望に心が殺されぬように〉という今の状況に驚くほどぴったり合致している言葉が一つになった「旅人」(アルバム『ヘッドフォンチルドレン』収録/2005年)によって、ライブはクライマックスへ。ライブ本編の最後は、「サイレン」(シングル『世界樹の下で』収録/2002年)。世界に刃向かい、〈駆け抜けてゆけ〉とオーディエンスを鼓舞するアッパーチューンは、このライブにかけるメンバーの強い意思を象徴していた。
アンコールでも、『マニアックヘブン』ならではのステージが続いた。
まず「天気予報」(アルバム『太陽の中の生活』(2006年)は、山田がドラム、岡峰がギター、菅波がベースを演奏。松田が〈顔を上げて歩いてゆくには/太陽は眩し過ぎる〉と朗読するこの曲は、『マニアックヘブン』の定番だ。
ここで山田が観客と視聴者に向かって語り掛けた。
「ちゃんと決められたルールのなかでやれて、とてもいい時間を過ごせています」
「ライブができなくなって、“ライブに生かされていたんだ”と感じました。いつになるかわからないけど、必ずまた、エネルギーの交換をストレスなくできる日が来る。それを目指して、頑張っていくから」
そんな言葉の後で披露されたのは、「舞い上がれ」(シングル『シリウス』収録/2012年)。ラジオ番組をきっかけに、受験生のリスナーに向けて制作されたこの曲は、ストレートな応援歌。〈舞い上がれ 壁を越えてゆけ/桜咲く頃に笑い合えるように〉という一節は、このライブを観ていた全ての人の心に真っ直ぐに届いたはずだ。
最後に演奏されたのは「さらば、あの日」(インディーズ2ndアルバム『甦る陽』収録/2000年)。〈それでも又/空を見上げるだろう〉という歌詞は、20年前と現在を繋ぎつつ、この先の希望をはっきり示していたと思う。
アルバムの収録曲、シングルのカップリング曲を軸にしたディープな選曲、唯一無二としか言いようがない音楽の表現をたっぷり堪能できた『マニアックヘブン Vol.13』。それは同時に、オーディエンスに対する愛情と“自分たちは決して諦めない”というメンバーの意思を表す場でもあった。このライブのアーカイブ配信期間は12月13日まで。ぜひTHE BACK HORNの本質に触れて欲しいと思う。
■セットリスト
『マニアックヘブン Vol.13』
2020.12.6(日)新木場STUDIO COAST
1.フラッシュバック
2.カラス
3.ダストデビル
4.野生の太陽
5.プラトニックファズ
6.人間
7.再生
8.シアター
9.風の詩
10.飛行機雲
11.怪しき雲ゆき
12.ミスターワールド
13.旅人
14.サイレン
EN-1.天気予報
EN-2.舞い上がれ
EN-3.さらば、あの日
■配信情報
『マニアックヘブンVol.13』
・アーカイブ配信期間:12月13日(日)23:59まで
・StreamPass販売期間:2020年11月16日(月)12:00~2020年12月13日(日)21:00
・視聴価格:¥3,500(税込)販売はこちら