My Hair is Bad『Youth baseball』で示したロックバンドの戦い方 シンプルな映像で際立つ“剥き出しのサウンド”の迫力

My Hair is Bad『Youth baseball』で示したロックバンドの戦い方 シンプルな映像で際立つ“剥き出しのサウンド”の迫力

 My Hair is Badがライブ映像作品『Youth baseball』を11月29日に配信した(12月6日23:59までアーカイブ視聴可能)。My Hair is Badは2019年8月より全国ツアー『サバイブホームランツアー』を行っていたが、今年3月以降の公演が延期に(うち、さいたまスーパーアリーナの振替公演は2021年4月に決定)。今回のライブがコロナ以降初のワンマンとなった。

 配信ライブでも、オンラインライブでもなく、“ライブ映像作品”と呼んでいるのがポイントだ。ライブは生中継ではなく、彼らの地元・新潟県の上越市高田城址公園野球場で収録したものであることが事前に公表されていた。パッケージしたライブを配信することには、曲やアルバムをリリースするときと近い感覚がある一方、画面の中にいる、本番当日のメンバーは確かに“ライブしている”という意識で鳴らしている。その絶妙な塩梅を“ライブ映像作品”という呼称で以って表現したのだろう。なお、12月4日から全国59カ所のライブハウスでの上映イベントがスタート。諸経費を引いた売り上げは各ライブハウスに還元されるそうだ。

 まず映されたのは、椎木知仁(Gt/Vo)、山本大樹(Ba/Cho)、山田淳(Dr)がいるグラウンド。ピッチャーマウンド付近にいる3人を囲うようにカメラ用の環状レールがあり、その外側に照明装置が配置されている。そこをめがけて一度ズームアップしたあと、得点板、その先にある街、山が映り、ギターのカッティングから1曲目の「優しさの行方」が始まった。椎木がギターを掻き鳴らすと、山田もシンバルを連打してそれに応じ……と、早速メンバー間での化学反応が垣間見える。アウトロでは椎木が音源にはない歌詞を追加。その際、彼が〈街〉と歌えば上越の街並みが映され、〈友〉と歌えばメンバーが映され、〈先〉と歌えば空が映された。

 歌に感情を落とし込む際、眉間に皺を寄せて歌う椎木。あるときはグッと腰を落として楽器を掻き鳴らし、あるときは自然と歌詞を口ずさむ山本。むんと唇を噛み締めながら叩き、バンドの土台を作る山田。演奏に向かう3人の姿をカメラが克明に捉えるなか、思わず出てしまった、マイクに乗らない叫びもたまに聞こえてくる。メンバーとしては中央を向きながらライブをするのが新鮮だったらしく、山田が思わず笑ってしまったとカミングアウトする場面も。終わり際には「こうやって球場で、いつかお客さん入れてやれたらいいね」(椎木)、「そうだね」(山田)、「やれるでしょう」(山本)、「この周りにお客さんがいてくれたら、どれだけ心強いか。もっともっと夢中になれる気がします」(椎木)と、確かな手応えとともに、同会場での有観客ライブ開催への希望も語った。

 ライブをするバンドがそこにいて、時間が進むにつれて、日が落ちていく。その様子をただひたすらに映したこの映像は、いわば究極のドキュメンタリーと言えるだろう。配信ならではの要素を強いて挙げるなら、「優しさの行方」でも見られたように、カット割り面での工夫があったこと。それから、客席からステージを観る普段のライブでは絶対に有り得ない上空からのアングル(ドローンによる撮影か?)が盛り込まれていたことぐらいしかない。多くのアーティストが配信ライブに臨んでいて、配信だからこその表現方法を探している現状において、ここまでシンプルな映像の在り方は珍しい。剥き出しのバンドサウンドが何よりもドラマティックなのだと、その音と佇まいで語る姿は頼もしい。最初のMCで「My Hair is Badが画面のなかでもMy Hair is Badでいられるように全て出しきっていきます」と語った椎木。発信のしかたは違えど、自分たちのやることは変わらないのだというロックバンドとしての矜持を体現した。

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