Sexy Zone、『NOT FOUND』カップリング徹底解説 USポップス~歌謡曲まで拡大させた音楽性

 11月4日、Sexy Zoneのニューシングルとなる『NOT FOUND』がリリースされた。2020年3月のユニバーサル ミュージックへの移籍を経て、8月にリリースされた『RUN』に続いて2枚目のシングルとなる本作は、2018年11月以来となる松島聡が復帰した記念すべき作品である。

音楽性の幅を拡大する“カップリング”という手段

Sexy Zone
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 疾走感溢れる「RUN」から一転してアダルトな雰囲気を纏った重厚感のある「NOT FOUND」も素晴らしい楽曲なのだが、本稿では本作に収められた”カップリング曲”に注目したい。ドラマ・CMなどのタイアップや多くのメディア露出が前提となり、ファン以外の人々も多く触れるシングル曲と異なり、あくまで作品を購入した人だけが楽しむことが出来るカップリング曲は、ある種の「実験場」として、より自由にクリエイティビティやチャレンジ精神を爆発させることが出来る場所でもある。『RUN』の際も、近年の海外ポップスにおける大きなトレンドであるラテンを取り入れた「So Sick」や全英語詞のみならずダンスミュージックのジャンルの一つ、フューチャーベースを大胆に導入した全英語詞の「Small Love Song」といった、音楽性の幅を広げるような挑戦的な楽曲が収録されており、レーベル移籍の背景として語られていた「本格的な海外進出」も意識させる内容となっていた。そして、これは本作においても同様であり、「Sugar Step」、「Arms Around Me」、「Bad Girl」、「約束」の4曲はいずれもシングル曲とは全く異なる、それでいて新たな輝きを放っている。

 初回限定盤Aに収録された「Sugar Step」は、その中でも特に異色の楽曲と言えるだろう。力強いサンプリングのドラムのループと、あくまで添えるように鳴るピアノとストリングスを中心に構成されたトラックは、豪華なアレンジの表題曲と比較するとあまりにもシンプルだ。その上で個々のメンバーのラップと歌を織り交ぜたマイクリレーを繰り広げる本楽曲は、まるでA Tribe Called Questといった90年代のサンプリングを主体としたUSヒップホップを彷彿とさせるような温かい質感の仕上がりになっている。

A Tribe Called Quest – Can I Kick It? (The Last Dance – Official Audio)

 現代の海外のヒップホップシーンの主流がトラップビート中心のメリハリの効いた楽曲にあることを踏まえると、「Sugar Step」の方向性は少々意外なものでもある。だが、このトラックが持つ温かく優しい空気は、メンバーの寄り添うような歌声と非常に相性が良い。また、ラップ担当の菊池風磨だけではなく全員がラップとメロディを使い分けることで、個々の声の魅力も普段以上に堪能することが出来る。特にラストサビ前~ラストサビにおける、5人が様々な声色や編成を掛け合いながら全員のユニゾンに至るまでの流れはあまりにも見事に構築されていて何度聴いても惚れ惚れしてしまう。まさにカップリング曲だからこそ出来る贅沢な一曲だと言えるだろう。

中島健人の部屋でもヘビロテ中、本作中最もクールな全英語詞「Arms Around Me」

 一方で通常盤に収録された「Arms Around Me」は、「Small Love Song」と同様に全英語詞となっており、明確に海外を意識した楽曲と言えるだろう。しかし、今回は前回のダンスミュージック路線とは異なり、カッティングギターとうねるようなファンクビートが印象的な、80年代ポップスを彷彿とさせるディスコ/R&Bとなっている。ハリースタイルズの「Watermelon Sugar」やザ・ウィークエンドの「In Your Eyes」、デュア・リパの「Levitating」など、このような音楽性は2020年のUSポップスにおけるトレンドでもある。ファンキーなベースラインと歌い上げるボーカルのセクシーな絡みや、思わずハンドクラップを入れたくなるようなリズミカルなサビ、最後のピアノフレーズとサックスの締めの美しさと、どれを取っても痺れるほどに格好良い、本作において最もクールな楽曲となっている。

The Weeknd – In Your Eyes (Audio)

 本楽曲が前述の海外ヒット曲群と異なるのは、ややテンポを遅めに設定していることだろう。これによって、各メンバーの歌声がより深く空間を支配し、色気がさらに増しており、英語詞による発音自体の心地よさも相まって、聴いていて尋常じゃなく気持ちが良い。特に、マリウス葉は自身のトリリンガル(ドイツ語・英語・日本語)としての発音の良さを遺憾なく発揮しており、本楽曲の持つ美しさを引き上げている。これだけでも英語詞を続けてほしい理由と言っても良いだろう。ちなみに中島健人は本楽曲を非常に気に入っているようで、自身の部屋でもよく流しているそうだが、それも納得の見事な仕上がりである。年末の音楽番組で披露してみたいとも話していたようだが、是非実現してほしいと切に願う。

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