黒崎真音が明かす、未曾有の事態に直面したアニソンシンガーの胸中 「歩みを止めるわけにはいかない」

黒崎真音、不安と期待入り混じる胸中

今は「ライブをやること」がうまくイメージできない

ーーそして黒崎さんのブログには「君を救えるなら僕は何にでもなる」のレコーディングは7月で、しかもそれがだいぶん久しぶりの歌録りだったとあります。

黒崎:久しぶりに歌えることはうれしかったんですけど、すごく疲れました(笑)。曲が曲ですし、最初と最後のコーラスパートのオペラのような歌い方はしたことがなかったことだったので。でも新型コロナの影響もあってボイトレに通うわけにもいかないし、オペラの先生に習いに行くこともできなかったから、“らしさ”を出すのはすごく難しかったですね。

ーー完成版の音源を聴くと、8分にわたってエモーショナルながらもスムーズに歌っている印象を受けたから、さすがだなあ、と思っていたんですけど……。

黒崎:これまでのレコーディングとは段違いに難しかったし、ハンパないほどコーラスを録っているので、かなり労力は使っていますね。コーラスを録るだけで丸1日かけて、主旋律はまた別の日に録って、という作業をしているので。だからよく耳を凝らして聴いていただくと、意外なところに私の声が入っていたりするんです(笑)。

ーーあと、アニメのオープニングでのこの曲の使われ方なんですけど……。

黒崎:あっ、私は事前に「オペラのパートしか使わないよ」って聞いていたので特に驚きはなかったです(笑)。

ーー対する受け手はビックリというか。僕自身『ヴァールハイト』の第1話で初めて「君を救えるなら僕は何にでもなる」を聴いたとき「えっ、黒崎さんの新曲ってコーラスだけ?」ってなりましたから(笑)。

黒崎:確かにみなさんに「あれで終わり?」ってよく聞かれました(笑)。

ーーその後、楽曲の先行配信が始まってからは、今度は逆の意味で驚かれたりは?

黒崎:ファンの方々からは驚きというよりも、「8分もあるんだ」「プログレじゃん」みたいな感想をいただきましたね(笑)。

ーー「黒崎真音ならこんな曲も歌ってのけるだろう」と思われている(笑)。であれば、なおのことステージでも観てみたいな、という気がするんですけど……。

黒崎:私はあんまりやりたくないんですけどね(笑)。

ーーそれはどうして?

黒崎:レコーディングのときにもプロデューサーやディレクターに「ライブのことはいったん置いておきましょう」って言われたんですけど、確かにこの曲をどうやってライブで再現するのか? って考えたら、不可能な部分が多いので。「ライブのことは置いとくの?」とも思ったんですけど(笑)、確かにライブでできるのかなあ? という気もしているんです。なかなかライブができない状況でもあるし、それでなくとも曲もMVもしっかり作った自信はあるので、今回のシングルについてはひとまず音と映像を楽しんでいただきたいな、と思っています。

ーーそしてカップリングは川田まみさん作詞、中沢伴行さん作曲、中沢さんと尾崎武士さん編曲のダンスロックナンバー「Dance of the Death」です。

黒崎:もう3年くらい前にレコーディングした曲なんです。

ーー2018年から稼働している遊技機「CRブラックラグーン3」のテーマソングですもんね。

黒崎:だから私自身、実は「そういえば、あの曲はいつリリースするんだろう?」って思っていました(笑)。

ーー川田さんの詞をほぼすべて英訳した、これまた新機軸といえる1曲だけに多くの人に聴いてもらいたいですよね。ただ、この曲はなぜ英詞に?

黒崎:『BLACK LAGOON』シリーズのテーマソングということもあって、アニメ版のオープニング曲だったMELLさんの「Red fraction」が英語詞だったので、その雰囲気にしたかったんです。

ーーなるほど。あの曲も英語詞でしたもんね。そして〈踊らせようぜ〉〈さあ踊ろうぜ〉の2フレーズ以外すべてのリリックが英語という楽曲が完成したわけですけど、レコーディングっていかがでした?

黒崎:すごく 練習した記憶があります。ちゃんと英語らしいんだけど自分なりに発音しやすくするにはどうすればいいんだろう? ってかなり考えたし、あとデモテープの仮歌をまみさんが歌ってくださっていたので、それも何度も何度も繰り返し聴いていました。

ーーしかもボーカルスタイルもまた新しいですよね。かなりワイルドに歌っていらっしゃる。

黒崎:中沢さんに「『BLACK LAGOON』シリーズの曲だから、やさぐれた感じで歌ってくれ」と言われたので(笑)。まさにヒロインのレヴィのようなイメージ。タバコをくわえながら銃を派手に撃ちまくっているんだけど、どこか冷静だし、けだるげな女性を連想して歌っていました。

ーー3年前の黒崎さんはその歌唱法をどう獲得したんでしょう?

黒崎:ちょうどミュージカル(2017年1月の「PREMIUM 3D MUSICAL『英雄伝説 閃の軌跡』」)に出た直後に録ったんですけど、そのお芝居を経験したことで少し考え方が変わったからかなあ……。

ーー以前にも、ミュージカルや映画で共演した役者さんたちがいろんな人格を演じながらも、ちゃんと1人の表現者として成立していることに大きな影響を受けたとおっしゃってましたもんね。

黒崎:はい。お芝居をしたことで私はなにを演じても黒崎真音で居続けられることに気付いたというか。どんな曲であっても私が歌えばちゃんと黒崎真音の曲になるという自信をもらったから「Dance of the Death」も歌えたんだと思います。

ーーアニバーサリーイヤーでありながらも周年ライブを中止する英断を下したことといい、「君を救えるなら僕は何にでもなる」の歌詞の内容といい、黒崎さんは今の社会状況と本当にシリアスに対峙している印象を受けます。

黒崎:そうかもしれないですね。

ーーそういう方には酷な質問かもしれないんですけど、ファンを代表して聞かせてください。11年目の黒崎真音、2021年の黒崎真音はなにをしましょう?

黒崎:うーん……。社会の状況もそうだし、私の気持ち自体もそうなんですけど、本当に未知数だし不明という感じですね。正直な心情をお話してしまうと、今は「ライブをやるということ」そのものがうまくイメージできなくなっていますし……。

ーーバンドを従えてステージで歌うご自身の姿が想像できない?

黒崎:ライブというものからだいぶ遠ざかっているので、以前のようなライブモードの自分を思い出すことがすごく難しくなっていて……。黒崎真音のステージをまた作れるのか? すごく不安なんです。それにやっぱり今、ファンの方に集まってもらうのは違う気がしますし。

ーーただ黒崎さんの創作意欲は止まっていない。9月には神田沙也加さんとユニット・ALICesを結成して、先日、その第1弾楽曲を発表したばかりです。

黒崎:だから「『来年はこれをやります』と、はっきりしたことは言えないよなあ」という気持ちもある一方で、ありがたいことに新しいチャレンジのお話をいくつかいただいていて、それに対して前向きになれてはいるんですよね。ALICesにしても沙也加ちゃんから「音楽をやるなら真音ちゃんと一緒がよかったんだよね」って声をかけてもらったところから始まったユニットですし、12月26日には「Innocent World」というロリータブランドさんのイベントに出させていただきます。まだまだ不安な状況ではあるんですけど、やっぱり黒崎真音としての歩みを止めるわけにはいかないので、そういう挑戦を繰り返していくべきだし、実際挑戦したいなと思っています。

Icy voyage / ALICes(神田沙也加×黒崎真音)

■配信情報
「君を救えるなら僕は何にでもなる」
配信はこちら

■リリース情報
16TH SINGLE
『君を救えるなら僕は何にでもなる』
2020年11月18日(水)リリース
TVアニメ『禍つヴァールハイト -ZUERST-』OPテーマ

初回限定盤(CD+Blu-ray)¥1800(税抜)
通常盤(CD)¥1200(税抜)

<収録曲>
1. 君を救えるなら僕は何にでもなる
2. Dance of the Death
3. 君を救えるなら僕は何にでもなる(instrumental)
4. Dance of the Death(instrumental)

<初回限定盤特典Blu-ray>
「君を救えるなら僕は何にでもなる」MV
MV Makingほか、収録予定

■関連リンク
黒崎真音 公式サイト
黒崎真音Twitter

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる