銀杏BOYZ 峯田和伸、“正気”で挑んだ新作と自由な音楽活動を続ける理由 「どこか一つに属さない、不安定な場所にずっといたい」

銀杏BOYZ峯田、自由な音楽活動続ける理由

「フロアのお客さんのど真ん中で、バンドで演奏したい」

ーー自分とは遠い存在として家族の風景を描写したアルバムの最終曲「アレックス」を聴いて思ったんですけど、40代に入った峯田さんは、これからパーソナルな幸せを手に入れたいと思ってるんですか?

峯田:すごいこと聞くね(笑)。もちろん幸せを追求してるよ。誰かを蹴落としてでも幸せを手に入れたいと思ってる。

ーーそうなのかな? 幸せを手に入れることによって、失ってしまうものがあることが怖いんじゃないですか?

峯田:「アレックス」はそういう曲だけど、作品には逆説的な意味もあるからさ(笑)。でも、今はとにかくこの状況を越えて、早くライブをやりたいね。でも、やるならお客さんとグチャグチャの状態でやりたい。ヨーロッパでもサッカーが始まってるけどさあ、ゴール裏にウルトラスのいないサッカーって、やっぱりサッカーじゃないから。

ーー映画もそうですよ。特に日本では、みんななんとなく状況が復活してきたように思ってるけど、水面下ではいろいろ大変なことになってますから。来年の後半くらいにならないと、今本当に何が起こってるのかは見えてこないと思う。

峯田:そうだよね。でも、変な焦りとかはないですね。心配なのは、ライブの音響チームとか照明チームとか、うちらゴイステ(GOING STEADY)の頃からまったく変わってないから。あと、もちろんライブハウスね。ライブを再開したらこれがやりたいっていうのは明確なビジョンとしてあるんですよ。今年全国ツアーが延期になってしまったけど、全会場でフロアライブをやりたい。

ーーフロアライブって、フロアの真ん中でやるんですか?

峯田:そう。もうステージにさえ上がらない。フロアのお客さんのど真ん中で、男の子の汗の臭いや、女の子の髪の匂いの中で、バンドで演奏したい。それが俺にとってのライブだから、もうここまできたら中途半端なことはやりたくない。音を浴びるだけだったら、スマホの縦画面を使ったライブ映像を配信できるからね。それは8月にもやったし、しばらくそれはやるかもしれないけど。俺個人の話をすると、一番キツかったのは前作『光のなかに立っていてね』のレコーディング終盤、何カ月もスタジオに篭り、まったく外に出ないで作品を作ってた時だからさ。今年も「こんなに何もできない1年ってないよな」って思いそうになるんだけど、あの時期を経験してるから、あれに比べてたら全然マシだなって。俺、数年前はずっとこんなだったなって。

ーーでも、今はとりあえずツアーにも出られないから時間があるわけですよね。毎日何をやってるんですか?

峯田:新曲作ってますね。

ーーそっかそっか。

峯田:アルバムの作業が終わって、8月以降、やっと曲がどんどん生まれるようになって。だから早く作りたいですね、次のアルバムも。

ーーでも、ライブ再開には自分から随分高いハードルを設けちゃってる気がするのが気がかりですが。

峯田:でもさ、なんかこういう状況でも、いろんなことができそうな気がしてるんだよね。コロナに関しても海外とまったく同じじゃなくて、「日本だけはこんなことになってる」みたいなことはあり得ると思うんだよね。

ーー今年の春以降、映画でヒット作がどんどん出てる国とか他にないですからね。それは、自国映画のシェアがもともと50%以上あったおかげでもあるわけですが。

峯田:そうそう。もちろん海外の状況もちゃんと見据えなきゃいけないんだけど、海外から見たら日本だけ変なことになってるみたいなことはあってもいいと思うし、それが日本の面白いところなんじゃないかな。まあ、そうじゃなくても、俺は家から一歩も出なくても平気だから。自分の部屋でレコード聴いて、映画観て、そうやって生きてきたから。

ーー峯田さんは、意外にそういう意味で柔軟ですよね。リリックにはロックとかパンクとかって言葉がよく出てくるけど、別にそれに殉じるようなところもないし。

峯田:うん、全然信用してないよ。なんでも最初は疑いから入るし。みんながそっちに行ってるってなったら、いつも違う方向に行ってたし。だから、今はフロアライブをやりたいの。

ーーいや、でも、それは本当に当分できないかもしれませんよ?

峯田:そうだね。やらせてくれる会場が見つからないかもね。でも、いくらでもやりようはあるから。

ーーそれこそ、最近また盛んになってるイギリスのレイブみたいにアンダーグラウンドでやるとか?

峯田:それもあるかもしれないね。

ーーNHKのドラマとかがない時に(笑)。

峯田:そう(笑)。その気になったら、なんだってできるんだよ。自分で責任を負えばいいんだから。そうやって、ロック、パンク、サブカルチャー、どこか一つの場所に属さない存在でありたい。不安定な場所にずっといたい。銀杏BOYZについて、いろんな人がいろんな場所で語ってくれる、そんな存在でいたい。俺はどこにでも行けるし、どこにもいないかもしれないし、とにかく一つの場所に嵌められちゃうのが嫌なんですよ。

ーーでも、銀杏BOYZって、ある時期まではサブカルチャーの代表のように見られていたわけじゃないですか。

峯田:それはさ、周囲で勝手に起こってきたことだから。俺たちのことを「青春パンク」って思う人が寄ってきてくれた時代もあったし、「サブカルチャー」だと思ってる人が寄ってきてくれた時代もあったけど、別に自分からはどこにも動いてないの。そうやって話題にしてくれるのは嬉しいけれど、こっちとしてはその場所はどこでもいいんだよね。

■リリース情報
銀杏BOYZ『ねえみんな大好きだよ』
10月21日(水)リリース ¥3,300(+税)

初回盤:三方背スリーブ、36ページブックレット
通常盤:36ページブックレット
※初回盤出荷終了次第、通常盤に切り替わり。

<収録曲>
01.DO YOU LIKE ME
02.SKOOL PILL
03.大人全滅
04.アーメン・ザーメン・メリーチェイン
05.骨
06.エンジェルベイビー
07.恋は永遠  feat.YUKI
08.いちごの唄  long long cake mix
09.生きたい
10.GOD SAVE THE わーるど
11.アレックス

『ねえみんな大好きだよ』特設サイト

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