BTS「Dynamite」は、なぜ爆発的大ヒットに? 新規ファン層獲得した音楽的仕掛けを解説
では「Dynamite」でBTSが気になりはじめたリスナーは次に何を聴いたら良いだろうか。実は同曲のような突き抜けた明るさがあるオリジナル曲は意外と少ないのが正直なところだ。躍動感あふれるサウンドを求めるのであれば、ソウルフルなアレンジと熱いラップが印象に残る隠れた名曲「Paldogangsan」(2013年)、「Dynamite」と同じく70年代ディスコミュージックにアプローチした「Boyz with Fun」(2015年)あたりを薦めたい。
軽やかなボーカルとラップがもっと聴きたいという人は、「Converse High」(2015年)やヒット曲「DNA」(2017年)、そしてAORのエッセンスを取り入れた「HOME」(2019年)、ユーロポップ風の「Inner Child」(2020年)が楽しめるかもしれない。中でも「Converse High」は、恋のときめきをスニーカーのブランド名で表現した歌詞がとてもユニークで耳を引く。
キレのいいダンスをもっと堪能したいのであれば、「ON」(2020年)のプロモーションビデオ(PV)は必見だ。特にサビでの上下左右に大きく揺れるカロリー消費が多そうな振り付けは、メンバーらの身体能力の高さを証明している。また「Dynamite」のPVと対照的なハードでクールな演出はBTS入門者にとってはフレッシュに映るだろう。
「Dynamite」の記録的な大ヒットで急速にクローズアップされることになった彼らの音楽性は、ディスコミュージックをはじめ、ヒップホップやEDM、R&Bなど様ざまなジャンルを内包しているため、簡単には言い表せない。これを機にデビューから現在までの人気曲・代表曲を聴いて、その独自性と奥深さをしっかりと味わってほしいと思う。
■まつもとたくお
音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を開始。『ミュージック・マガジン』など専門誌を中心に寄稿。『ジャズ批評』『韓流ぴあ』で連載中。ムック『GIRLS K-POP』(シンコー・ミュージック)を監修。K-POP関連の著書・共著も多数あり。