まふまふ、約3万5千人魅了したメットライフドーム公演を振り返る “幻想的な空間演出”が生み出した華麗さと大きな熱狂
メットライフドームを埋め尽くす約3万5千人の観客にぐるりと囲まれ、和をイメージさせる瀟洒な衣装に身を包んだまふまふが、ドーム中央で移動型クリスタルのステージに立つ。レーザーが舞い、無数のペンライトの光が揺れる。代表曲「曼珠沙華」の歌詞の一節、〈「ボクと踊りませんか?」〉というフレーズに、大きな歓声が巻き起こる。
10月14日にリリースされた、まふまふ初のライブ映像作品となるBlu-ray & DVD『ひきこもりでもLIVEがしたい!~すーぱーまふまふわーるど2019@メットライフドーム~』の一場面だ。
昨年6月22日にメットライフドームで開催されたワンマンライブをパッケージ化した本作。個人的にも、いろんな感慨がわきあがる映像作品だった。その場に訪れていたファンならもちろん、そうでなくとも、まふまふや彼の周辺のシーンを追ってきたリスナーは、その華麗さと熱狂の大きさに感じ入るものはとても大きいはずだ。
その感慨には二つの側面がある。一つは、まふまふというアーティストが「ここまで来た」ということ。ネットシーンで「歌い手」として活動を始めたという出自もあり、決してメディアで大きな露出をしてきたタイプのアーティストではない。約3万5千人のチケットを即完するだけの人気と動員力がありつつも、世間一般に存在が広く知れ渡っているとは言い難い。それでも映像を観れば、彼自身のカリスマ性、魅力的な歌声、和のテイストをところどころに忍ばせたフックの強い曲調、独創的な歌詞のモチーフ、そしてステージパフォーマンスが放つ高いエンターテインメント性を感じ取ることができる。
ライブはアルバム『明日色ワールドエンド』収録の「輪廻転生」でスタート。中世ヨーロッパの城を思わせる豪勢なステージセットが異世界感を醸し出す。
映像で印象的なのは、どこか“非日常”で“非現実”の感覚が切り取られているということだ。カメラはまふまふを、バンドメンバーたちを、そしてドームを埋め尽くすオーディエンスたちを目まぐるしく切り替えながら映し出す。加えて、たとえば「君色々移り」や「恋と微炭酸ソーダ」などの楽曲では、当日のライブでステージの巨大なLEDモニターに映し出されたミュージックビデオのアニメーションがカットアップで挟まれたり演奏風景に重ね合わされたりして表示される。ライブのドキュメントでありつつ、そこに2次元の世界が重なり合うような演出がなされている。
さらに「朧月」ではバラードを歌い上げるまふまふの背後で巨大な満月が映し出されたり、「廃墟の国のアリス」ではホログラム姿のまふまふがステージに登場するなど、中盤以降も虚実が重なり合うような演出の数々が繰り広げられる。