「Call Me Sick」「こんな世界にしたのは誰だ」インタビュー
鷲尾伶菜が語る、ソロプロジェクト“伶”での新たな挑戦 「自分の人生に音楽が付いてくるような感覚です」
E-girlsの鷲尾伶菜が10月2日、ソロプロジェクト「伶」名義の「Call Me Sick」と「こんな世界にしたのは誰だ」の2曲を同時配信した。記念すべきソロ作は、佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS from EXILE TRIBE)と橋本環奈がW主演する映画『小説の神様 君としか描けない物語』の主題歌と挿入歌として制作された。鷲尾は対照的な2曲が流れる本編を実際に観て「ぴったりでした」と感想を語り、自信をみなぎらせる。彼女の個としての才能に期待が高まるばかりだ。
今回はその鷲尾にソロデビューへの意気込みや経緯、配信曲への想い、理想のアーティスト像などをインタビューした。「伶」はどこから来て、何を見据えているのだろうか。(小池直也)
「ひとりで立っていられるようなアーティストでいたい」
ーーソロプロジェクトを立ち上げた経緯は?
鷲尾伶菜(以下、鷲尾):前々から決めていたわけではないんです。でも「もしグループ活動がなくなったら、自分は何をするだろう?」と考えた時にどんな形でも音楽はしたくて、ソロの活動も視野にはありました。26歳という年齢なので、ひとりで立っていられるようなアーティストでいたいという気持ちもあって。以前は現実的ではなかったですけどね(笑)。ふわっとイメージはしていました......。
ーー今はコロナ禍で音楽業界的には厳しい面もありますが、なぜこの時期に始動したのでしょうか。
鷲尾:いつスタートするかは完全にタイミングだと思っていました。本当はライブができればよかったのですが、ゆっくり音楽を聴いたりして準備ができる、という意味では悪い時期ではなかったと感じています。
やっぱり制作段階で写真や衣装を選んだりとか、自分で自分をプロデュースしていくというところはグループの活動とは違うところですね。積極的に意見を出すことでやりたいことに挑戦させてもらえて、楽しい気持ちでソロ活動もスタートできました。
ーーなぜプロジェクト名をご自身の名前「伶」に?
鷲尾:直感です。フルネームにしようかとも思ったのですが、この名前にほぼほぼ決めていました。今までE-girlsの鷲尾伶菜として頑張ってきたからこそ新たな名義でやりたいなと。「伶」という文字には「音を奏でる人」という意味があって、名付けてくれたのは母親です。お腹の中にいる時からクラシック音楽とかを聴かせてくれたみたいで。
ーーでは、今回配信される曲の制作について教えてください。鷲尾:伶としての曲を探すなかで、映画『小説の神様 君としか描けない物語』のタイアップのお話をいただいたんです。なので自分よりも、まず映画に合う曲を作らなきゃと(笑)。もちろん、自分も心地よいと思える曲で。今回はコンペでたくさんのなかから選びましたね。この2曲とは縁がありました。
「Call Me Sick」はタイトルにひねりがあるし音も可愛いですね。あとはバンドサウンドでベースもカッコいい。それとは真逆なものにしようと思ったのが「こんな世界にしたのは誰だ」だったんです。結果として心の内に秘めた負の感情で、言葉に出せないものを歌にぶつけているような曲になりました。映画のなかでは主人公が落ち込んだり、壁にぶつかった時にBGMとして流れます。形のないナイフが突き刺さるという意味で映画はもちろん、今の社会的にも合っているのではないかなと。
ーー実際に歌をレコーディングしてみた感想を教えてください。
鷲尾:難しかったですね。特に「こんな世界にしたのは誰だ」のイントロ部分は声でできているので、楽器っぽく聴こえるように重ねたのが難しかった。メロディも言葉が詰まっていて複雑ですし、レコーディングは苦戦しましたよ。今までE-girlsやFlowerでも録る時はひとりでしたけど、今回は新鮮に感じました。
あとは今までと違う表現が増えればと思ってチャレンジもしています。テイク毎に歌いまわしを変えて、レーベルの女性スタッフさんと「どれがいいかな?」と部分的に組み合わせたりして。そのスタッフさんは厳しくも優しい方で(笑)、意見を交換しながら作れたのが新しかった。
ーー映画『小説の神様 君としか描けない物語』もご覧になったとのことですが、自分の音楽が付いた映像を観て照れたりはしませんでした?
鷲尾:ぴったりだったと思います。やっぱり自信がないものは出せないですからね(笑)。もともと久保茂昭監督には「Follow Me」や「Celebration!」「One Two Three」などのMVを撮っていただいていたんです。今作をどのように描かれるが気になっていました。色彩の美しさはMVを観ているような感覚になりますね。
若者の痛みや傷、闇に自由を奪われてしまうという物語も現代にぴったりだなと思いました。恋愛映画かなと思っていたのですが、脚本を読んだり、本編を観たりして、小説で言葉を紡ぐことで伝えられるものが多いんだなと。アーティストとしても共感できました。
ーーソロプロジェクトで何かしらのパフォーマンスをする予定はありますか。
鷲尾:先日公開になった、YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』に出演しました。あいみょんちゃんの「猫」が心に響いたし、他にも好きなアーティストが出演していて、もともと好きな企画なんですよ。出演が叶って嬉しかったですが、すごく緊張しました。
静まった空間のなかにマイクが1本置いてあるんです。でもバンドの皆さんがいたので孤独感は少なかったです。もちろん反省点もありますが、ライブと同じくその時に出たものが自分の実力かなと(笑)。まずは楽しんでやれたので良かったです。まだ曲が少ないので集めてリリースして、ライブもやりたいですね。
ーー配信ライブなども期待したいところです。ちなみにE-girlsとして出演した、LDHの配信ライブ『LIVE×ONLINE』の手ごたえはいかがでしたか。
鷲尾:すごい時代になったなと思います(笑)。呼びかけても反応がないのは寂しいですが、カメラマンさんが頑張ってくれて感激でした。オンラインならではのステージングを学んでからお客さんを前にしたら、以前よりも良いパフォーマンスができるんじゃないか、という予感もします。