嵐、“騒がしい未来”の訪れまでを感じさせる映像がここに 愛と感謝が詰まった『ARASHI Anniversary tour 5×20』を見て

 嵐のエンターテインメントの魅力は、まだまだそれだけではない。嵐の真骨頂といえば、何度も何度も称賛されてきた“メンバー仲の良さ”だろう。

 コンサートではそれこそ、バラエティや音楽番組で見るよりも遥かにオーバーなスキンシップを至るところで拝むことができる。いくらオーバーなスキンシップでも、これっぽっちも演出的な要素を感じないところが本当に真骨頂であると思った。肩を寄せ合い、額を擦り合って歌ったり、隣り合ったメンバーの背中から腕を伸ばしてその隣のメンバーの腕を掴んで引っ張り合ったり、ハイタッチからのハグや曲が始まってるのにふざけ合っていたり……とにかく終始楽しくて仕方ない笑顔が溢れていた。

 終盤戦の「Troublemaker」では、通常は大野智・櫻井コンビの定番となっていた〈ハートビート〉のハートマークを、櫻井・松本潤で披露したかと思えば、その後ろでは二宮和也・相葉雅紀コンビがユニット曲「UB」の密着シンクロダンスを披露したりと幸せなじゃれ合いが全開で、思わず顔を綻ばせずにはいられなかった。ラストの挨拶でも、各メンバーがそれぞれ「(他の)4人が本当に楽しそうな笑顔でよかった」と繰り返すほどで、お互いがお互いの笑顔を引き出す、幸せのループが完成されていた。

 そして、やはりこのツアーファイナルの最大の見所は、ラストのMCと、そこから繋がる「5×20」のパフォーマンスだ。ここはもう、ぜひ心して見てくださいとしか言いようがない。当日現地にいた方も、映画館で見ていた方も、もちろんライブビューイングすら見れなかった方々も。

 意外に思えるかもしれないが、映像作品として見ると「活動休止発表後のコンサートツアー、かつ(現時点で)活動休止前最後の“有観客”コンサート」を収めた唯一の作品となる。

 今このタイミングで見るからこそ、一瞬たりとも見逃せない、切実な熱量が詰まったメンバーからの真摯なメッセージが心に深く響く。「5×20」のパフォーマンスも含め、涙腺が緩むことを覚悟の上、どうかしっかりと目に焼き付けて欲しい。

 とはいえ、感動の涙だけで終わらないのが、やはり嵐のエンターテインメントだろう。本編が終わってからさらに幸せ度の最高到達点を更新してくるかのようなお祭り騒ぎのアンコールに、これぞ嵐と満面の笑顔にさせられる。「Happiness」を最終曲に持ってくる演出もニクすぎて、最後の最後まで本当に最高だな、と震えた。〈思い出の後先を考えたら 寂しすぎるね 騒がしい未来が向こうで きっと待ってるから〉ーーまるでこれからの休止期間のそのまた先に、“騒がしい未来”があるのだと教えてくれているかのように、あたたかく胸に響く。

 まさに最初から最後まで愛と感謝と幸せに満ちたエンターテインメント。嵐の真髄ともいうべきステージの、その熱気も衝動も感動も存分に楽しめる満足の一枚であり、嵐からファンへの愛情と感謝が余すところなくパッケージされた、ファン必携、珠玉の映像作品だ。

■佐久良夏生
1988年生まれ。茨城出身。日本の音楽・コミック・サブカルチャーが好きです。

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