ZOCはメジャーシーンでどんな人々に届いていくのか 再始動ワンマンライブ『AGE OF ZOC』で表出したグループの意義
その一方で、大森靖子ソロの楽曲をZOCが歌うと、ZOCというグループのコンテクストの複雑さも現れる。「イミテーションガール」は、うだつのあがらないオタクの男性の歌であるはずだ。そんな「イミテーションガール」を歌うことで、ZOCは「いまどきの女の子」というような文脈から外れていく。シンプルな構造にしないのは、大森靖子らしいとも感じる。
「IDOL SONG」は、アイドルの自己紹介を歌詞に大量に取り入れている楽曲であり、それをZOCが歌うと「アイドル」という概念そのものがメタ化されていく。「アイドル」当事者ではあるものの、自分たちを客観的にも見ている大森靖子の姿勢も感じる。
メンバーのソロ曲の披露を経て、大森靖子ソロの楽曲「死神」では、大森靖子の歌に、り子がダンスで加わった。2020年9月18日の『大森靖子生誕祭2020』での「死神」とはベクトルが異なる名演。大森靖子が、マイクを使わず肉声で叫ぶシーンもあった。
そして、大森靖子の活動を象徴する重要曲「マジックミラー」をZOCで歌うことは、コンテクストが複雑なグループであることを如実に物語っていた。「ミラー」ではなく「マジックミラー」であることの含意を、私たちは幾度となく読み解かなくてはならない。
結成から約2年、デビューシングル『family name』のリリースから約1年半にして、中野サンプラザでのワンマンライブを成功させたZOC。コロナ禍のため、アイドルのメジャーデビューの発表を聞くことも久しぶりの感覚だった。ZOCはメジャーシーンでどんな人々に届いていくのか? 油断できないことこそが、ZOCの最強の武器だと感じたのが『AGE OF ZOC』だった。
■ZOC「AGE OF ZOC」2020年10月1日セットリスト
01. ZOC実験室
02. SHINEMAGIC
03. 断捨離彼氏
04. GIRL'S GIRL
05. チュープリ
06. ヒアルロンリーガール
07. イミテーションガール
08. IDOL SONG
09. それな!人生PARTY(西井万理那ソロ)
10. 仮定少女(香椎かてぃソロ)
11. まろまろ浄土(巫まろソロ)
12. 紅のクオリア(藍染カレンソロ)
13. 非国民的ヒーロー(大森靖子ソロ)
14. 死神(雅雀り子ソロ w/大森靖子, sugarbeans)
15. マジックミラー
16. ピンクメトセラ
17. draw (A) drow
18. family name
19. A INNOCENCE
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20. AGE OF ZOC