SHE'S、KEYTALK、マカロニえんぴつ、Creepy Nuts…音楽愛とともに作り上げられた『SWEET LOVE SHARE』レポ

 2日目のWATER FRONT ch.にはホリエアツシ(ストレイテナー)が登場。普段はストレイテナーのフロントマンとして活動する彼だが、この日はソロでの出演。普段はバンドサウンドのストレイテナーの楽曲が、ホリエのキーボードやアコースティックギターの弾き語りで響くのは新鮮だ。ライブ後半ではホリエと親交が深く、昨年は共にツアーも開催したELLEGARDENの「金星」も披露。時折ビールを飲みながら、シンプルな弾き語りスタイルで進む彼のソロライブは思わず心が軽やかになる清廉さにあふれていた。 

ホリエアツシ(ストレイテナー)(撮影=関口佳代)

 SPACE SHOWER TV STUDIO ch.ではスペシャらしい様々なミュージシャンのトークが展開。きゃりーぱみゅぱみゅやヤバイTシャツ屋さん、04 Limited Sazabysや10-FEETなどが軽快なトークで盛り上げた。また、同チャンネルでは「SWEET LOVE SHOWER LIVE SELECTION 1996-2019」と題し、ライブアーカイブ映像が配信された。『SWEET LOVE SHOWER』が日比谷野外音楽堂で開催されていた当時の映像や、すでに解散したバンドのライブ映像など、普段は見ることのできない映像の宝庫で思わず釘付けになってしまう。

 Mt FUJI ch.では、復活後の彼らのテーマソングのように響く「千%」から始まったKICK THE CAN CREWのステージ。ソーシャルディスタンスをイジったり、今年の夏は暇だとユーモラスに語るMCから自然な流れで曲に入る様は彼らのエンターテイナーぶりを感じる瞬間だ。「なんとかなる、なるようになる」とシンプルながら説得力のあるMCの後にドロップされた「ユートピア」がシリアスに響くと、最後は「マルシェ」で圧倒的な幸福感を生み出してライブを終えた。

KICK THE CAN CREW(撮影=岸田哲平)

 2日間の大トリを務めるのはTHE BAWDIES。いつものライブと同じように揃いのスーツで身を固めた4人は曲が始まる前からフルテンションだ。ライブチューン「HOT DOG」からTHE BAWDIESらしさ全開のロックンロールで観る者全てを圧倒する。小噺のようなROY(Vo / Ba)のMCから披露された新曲も、60'sロックンロールへの愛とリスペクトが詰まった1曲に仕上がっていた。「ロックンロールは悲しみと苦しみのどん底から上がっていくために生まれた最高のダンスミュージック」。そう語るROYの姿が印象深い。このコロナ禍という状況だからこそ、ロックは、音楽は我々に必要だ。改めてそう確信したTHE BAWDIESの熱演と、TAXMAN(Gt/Vo)の「しぇわっしょい」の締めで『SWEET LOVE SHARE』は幕を下ろした。

THE BAWDIES(撮影=西槇太一)

 無観客ライブとアーカイブ配信の複合型フェスとして開催された『SWEET LOVE SHARE』。3チャンネルを自由に行き来できる構造なども含めて他のオンラインフェス以上にフェスらしさを作りだすと共に、オンラインフェスの新しい在り方を提示したフェスとなった。同時に、他のオンラインイベントではどうしても気になる課題であった音ズレや音飛び、画質の悪さなども無く、オンラインイベントの中でも格段に快適なフェスであったことも印象深い。

 昨今の情勢の中で音楽イベントを開催するということはそれだけでも価値のあることなのは承知の上で、それでも純粋に音楽を楽しめる心地よい空間をオンライン上に生み出そうと試行錯誤し、作り上げた出演者やスタッフには頭が上がらない。それもひとえに、このフェスを作りあげた一人ひとりが持つ音楽への愛があってこそ。しかしやはり来年こそは、山中湖の雄大な自然の中で、爆音のロックサウンドを身体中で感じたいものだ。その日まで、今回の各アクトが鳴らした音楽を糧にしながら生きていこう。

■ふじもと
1994年生まれ、愛知県在住のカルチャーライター。ブログ「Hello,CULTURE」でポップスとロックを中心としたコラム、ライブレポ、ディスクレビュー等を執筆。
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