南條愛乃が語る、今だからこそ歌を介して伝えたいメッセージ「“みんなに”というよりは“あなたに”届けたい」

南條愛乃が語る、今届けたいメッセージ

 南條愛乃が、9月2日に初となるアコースティックアレンジアルバム『Acoustic for you.』をリリースした。同作には、南條本人がセレクトした楽曲を全12曲収録するほか、初回限定盤には2019年7月7日にTOKYO DOME CITY HALLで行われた『南條愛乃 Birthday Acoustic Live 2019』の映像も付属される。

 今作の制作に当たって南條は、「“みんなに”というよりは“あなたに”届ける」という点を意識したという。ツアーやバースデーライブなどでアコースティック編成を数々こなしてきた彼女だが、そんなライブとは異なるアレンジや空気感を取り込み、既存曲でありながらも新たな解釈で再構築されたまったく新しい作品となった。インタビューでは、今作の制作時に歌手として考えたこと、自身の歌との向き合い方、ライブが行えない中でも作品を通してファンに届けたいメッセージについて話を聞いた。(編集部)

去年のツアーは「経験としては蓄積されるものがあった」

【南條愛乃】NEW ALBUM「Acoustic for you.」初回限定盤特典ライブ映像(試聴用ダイジェスト版)

ーー今回、なぜアコースティックアルバムを制作することになったんでしょう?

南條愛乃(以下、南條):もともとオリジナルフルアルバムを作りかけている最中ではあったんですけど、こんな状況になってしまって。せっかく3年ぶりにフルアルバムを作っても、ツアーもやれるのかどうかという感じですし、作った楽曲たちを実際お客さんに披露できる機会がないかもしれないというのが、楽曲に対しても、ファンの人たちに対しても残念だった。

 とはいえ、何も作らないというのも寂しいからレーベルのプロデューサーと話したんですけど、去年はアコースティックライブツアー(『南條愛乃 Acoustic Live Tour Vol.1 17/47 ~わたしから会いにいきます!~ 』)を行った流れもあって、ファンの人たちから「アコースティックアルバムをいつか出してください」みたいな声もたくさん聞こえてきて。私やスタッフも昔から「いずれ出したいね」みたいな話はしていたんですけど、今年はバースデーアコースティックライブもできなさそうだし、「だったら今年は既存曲だけでアコースティックアルバムを作るのもいいかもしれないね?」ってことで、急遽路線を変更してこういう形になりました。

ーー確かに、ただ新曲を作って発表しただけで終わってしまうには勿体ないですし。

南條:そうなんです。もしまた来年新しいアルバムを出せて、ツアーができることになっても、来年作ったものと今年作ったものを一緒にツアーをやるときに披露できない曲が絶対に生まれるから。楽曲を作るからには大事に届けたいので。

ーー実際、昨年のアコースティックツアーも計17本とかなり多く回りましたが、そこで得た経験もかなり大きなものがあったんじゃないでしょうか?

南條:バースデーライブではアコースティックライブを何度かやっていたんですけど、去年初めてやったアコースティックツアーはライブハウスをまわったので、ファンのみんなとも距離が近くて。私のソロ活動は早い段階からホールツアーになっていたので、あのライブハウスならではの空気感や距離感でライブをできることは良い経験になりました。それに、ホールだとイヤモニを使ってバンドの音を聴いているけど、ライブハウスツアーのときは全部足元のモニタースピーカーで、かつバンドの実際の音も耳にしていたので、一緒に音楽をやるという意味では一体感がすごくて。それをお客さんたちと一緒の空間を楽しんでいる感覚が、去年のツアーでは一番色として濃かったかな。

ーーでは、そのアコースティックツアーの延長でアルバム制作に臨んだ感じでしょうか?

南條:でも、ライブとレコーディングとでは全然違って。やり慣れた曲だし、アコースティックライブもわりと回数を重ねていたので、今回のアルバムも「いつもライブでやっているようにやれば大丈夫」という気持ちで始まったんですけど、いざいつもどおりにやろうとするとどうにもしっくりハマらず。結構苦戦した曲もあったので、ライブとパッケージ化されてお客さんのもとに届けることは別モノなんだなと、改めて気づきました。

ーーなるほど。

南條:いつものライブどおりにやろうと思ってもできなくて、レコーディング中は「あれ、ヤバイ。なんだろう? 焦るな」という気持ちもありました。なので、最初に想像していたアコースティックアルバムの形よりも、また違った形……曲はすべて既存曲なんですけど、ライブをやることによって曲に対する理解度や馴染み方はリリースされた当時よりも深まっているし、それを蓄積した状態で再びレコーディングすることで、ライブにたくさん来てくれているお客さんが聴いても新鮮に感じられるアルバムになっているかなと思います。そういう意味では、思っていた形とはいい意味で違うものになったという手応えがあります。

「南條愛乃のアコースティックアレンジ、王道12曲」

アコースティックアレンジアルバム『Acoustic for you.』<全曲試聴動画>

ーー実はアルバムを聴く前は、もっとライブ感の強い作品になるのかなと思っていたんですけど、レコーディング作品として完成された内容になっていたので驚きました。

南條:ライブ感を強めにするか、CDとして作品寄りにするかは悩んだポイントではあるんですけど、初回盤に去年のバースデーアコースティックライブの映像が付くこともあって、ライブ感はそっちで楽しんでもらって、アルバムは曲自体を楽しんでもらえるものにしようかという話になったんです。

ーー収録曲はどうやって決めたんですか?

南條:私の中で「南條愛乃のアコースティックアレンジ、王道12曲」という感じで選びました(笑)。わりと想像つきやすいものだったり、去年のツアーで印象に残っている楽曲を12曲。中にはツアーでアレンジから変えているものもあるんですけど、全体的には去年のツアーの総括みたいな意味合いも含まれているのかなと思います。

ーーレコーディングはツアーメンバーの皆さんと一緒に行ったそうですが、アレンジに関してはどう決めていきましたか?

南條:歌録りより先に楽器録りがあったので不在でもよかったんですけど、アレンジのイメージが私がいるのといないのとでは違うんじゃないかってことで、楽器録りのときも一緒に参加させてもらったんです。先にバンドだけでプリプロという形である程度アレンジを固めつつ、思うことがあったらそこで修正してもらっていたんですけど、基本的にはツアーでやっていたアレンジにプラスする形で。

 ただ、ツアーだとどうしても腕の数も限られてしまって(笑)、出せない音もあるので、どうしても音を足したいバンドメンバーはベーシックトラックを録ったあとに追加していました。パーカッションの八木(一美)さんはハーモニカを吹いたり指パッチンしてみたり、ギターの星野(威)さんも「もう1本重ねていいですか?」と提案していただいたり、そこから抜き差しをしたりしたんですけど、そういう姿を見て「ツアー中、実はこういう音も入れたかったのかな?」という発見もあったりして(笑)。私自身も新鮮なレコーディングでした。

ーーそれもスタジオアルバムならではですね。

南條:はい。実際、足せば足すほど豪華にはなるし、派手にもなるんですけど、私としてはライブのときの音数に慣れてしまっているので、「あえてここはその音がないほうが、臨場感が出るんじゃないか?」と音を削ってもらったり、小さくしてもらったりもあったんですけど(笑)。そこは悩みつつ、相談しつつという感じでした。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる