(G)I-DLE、ITZY、BLACKPINK、OH MY GIRL……今年の夏を制する“サマークイーン”は?
2020年の夏を象徴する曲をひとつあげるとすれば、やはりBLACKPINKの「How You Like That」である。同曲は6月下旬に発売して2カ月以上経っているものの、現在までずっと主要チャートの上位にランクインし続けている。歌詞についてはすでにいろいろな解釈がなされているが、ガールクラッシュの代表格と呼ばれる彼女たちのイメージを強調した内容であるのは間違いない。ここでのメンバー4人はダークサイドからやってきたヒーローといった佇まいであり、善も悪も知りつくした上でポジティブに生きようとするその姿は、他のグループとは違うオーラがある。昨年リリースした「Kill This Love」ではサウンドの進化が著しかったが、「How You Like That」の場合は歌詞でさらなる深みを目指したようだ。
さらにBLACKPINKは8月28日に「Ice Cream (with Selena Gomez)」というシングルも発表している。アメリカの人気歌手、セレーナ・ゴメスとのコラボレーション曲で、こちらは「How You Like That」のシリアスなムードとは打って変わって、かなり陽気でライトな仕上がりだ。タイトル通りの涼しげなサウンドや、“このキスがいちばん冷たい/だから彼は私をアイスクリームと呼んでいるの”といった歌詞は、暑い季節によく似合う。軽やかなボーカルからは余裕と貫禄が感じられ、彼女たちが世界的なセレブリティーになったことを痛感させられる。
海外アーティストとの共演となると、OH MY GIRLも忘れてはならない。彼女たちも8月28日にドイツ人プロデューサーのKeanu Silvaとコラボレーションした「Rocket Ride」をリリースした。アコースティックギターとエレクトロポップによる穏やかなサウンドはK-POPというよりはユーロポップと呼ぶのがふさわしい。メンバーの歌声もその雰囲気に合わせたのだろう、とても優しく歌い上げている。今年4月に「Nonstop」のメガヒットで知名度を上げた彼女たちは、どんなスタイルでも自分たちのカラーに染めることができるという点で高い評価を得てきた。しかしながら「Rocket Ride」のようなサウンドでも難なく対応できることに驚きを禁じ得ない。
3密を避ける生活になって久しいが、こと音楽に関しては、新型コロナ以前よりもサウンドの密度が高くなっているようだ。セールス面や話題性に限れば、今年の夏はBLACKPINKのひとり勝ちであることは間違いない。ただし、他のグループも曲作りにおいてはトレンドを上手に取り込み、自分たちの色を打ち出したナンバーばかりで、勝敗をはっきりとつけるのは難しい。ガールズグループの真のトップ争いは、どうやら秋以降に持ち越しとなりそうだ。
■まつもとたくお
音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を開始。『ミュージック・マガジン』など専門誌を中心に寄稿。『ジャズ批評』『韓流ぴあ』で連載中。ムック『GIRLS K-POP』(シンコー・ミュージック)を監修。K-POP関連の著書・共著も多数あり。