声優 下野紘、アーティスト活動に区切り 成長と挑戦を繰り返してきたこれまでを振り返る

聴く者を熱くさせるチャレンジ精神

 ソロアーティストとしての下野は、多くの楽曲で作詞や作曲に参加し、熱いロックサウンドと共に力強い世界観を表現。親しみやすい人柄とは少し異なる、凜々しい一面でファンを魅了してきた。例えば、デビュー曲となった「リアル -REAL-」は、敷かれたレールの上を行くのではなく、自分の足で道を選んでいくことを力強く歌ったナンバーだ。「ONE CHANCE」や「Running High」といった楽曲でも、ソロの音楽活動という未知なる世界にチャレンジすることへの思いをパワフルに歌い上げ、そんな不安や葛藤を乗り越えて突き進む前向きさが、多くのファンの胸を熱くさせたのだった。

【期間限定 Full】下野 紘「リアル -REAL-」Music Video

 今作『WE GO!』には、「リアル -REAL-」のボーカルを新録したバージョンも収められている。発売記念生放送の中で下野は「当時はがむしゃらに歌っていた。いろいろな歌い方を経験し、(今では)楽曲に対する思いをより深く表現できた」と、この新録バージョンに対する思いを語っている。そんな成長を強く感じられるが、下野が作詞作曲を手がけたロックバラード「アトサキ」だ。別れた相手の幸せを祈る気持ちを哀愁たっぷりに歌った曲で、自分の道を脇目も振らず突き進むような姿とは一転、下野の優しさや一途さに触れることができ、この曲を通して彼のアーティストとしての伸びしろを感じたファンも多いはずだ。それだけに、今回の活動休止は残念でならない……。

下野紘「アトサキ」

 もともとソロとしてのアーティスト活動は、声優デビュー15周年を記念して活動の幅を広げるひとつの取り組みとして始めたものだった。人気作品を多数抱える今、その本分をおろそかにしては本末転倒であることから、音楽活動の休止を決めたのだそうだ。だが、アーティスト活動という新しい世界を経験したことが、今の声優としての下野の人気に繋がったと言えるだろう。そんな彼が脇目も振らず、今度は声優だけに向き合ったとしたら、一体どんな演技を見せてくれるのか興味が沸いてくる。その経験を糧に、再び音楽と向き合ったとしたら……下野の決断にエールを贈ると共に、新たなチャレンジを楽しみに待ちたい。

■榑林 史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も

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