コドモメンタル 今村伸秀氏が語る、独自のスタイルで“シーンの真ん中”を目指す理由 「垣根を越えた音楽業界になるのを見たい」

コドモメンタル 今村伸秀氏が語る、独自のスタイルで“シーンの真ん中”を目指す理由 「垣根を越えた音楽業界になるのを見たい」

レーベルには「これ絶対面白い!」という想いが溢れてる

ーーコドモメンタルを立ち上げた2015年あたりって、バンドシーン全体の潮流も2010年代前半とはまた変わってきた時期だったと思いますが、そこに対して敏感に反応されていたりしたんでしょうか。

今村:もちろん僕はそのあたりもすごく好きではあるんですよ。Suchmosさんとかネバヤン(never young beach)さんみたいなバンドが出てきたり、いわゆるギターロックにボンっと火がついた時もあったり、ニューメタルやラウドロックの流れを汲んでるアーティストが出てきたり、そことは別のところからネット発のボカロPが出てきたり。いろんな動きはあると思うんですけど、音楽業界の外に出て行くトピックスとして「とてつもない才能がたくさん出てきたね」っていう印象はそこまで強くないと思うんです。それは僕らが音楽が好きでディグってるから知ってるだけであって、一般で生活されている方のところには届いていないものも多い。やっぱりすごく閉塞感があるなって思いますし、これは日本にしても海外にしても似たようなことが言えるのかなとは思っていて。だから一般の人たちが、垣根を取っ払って「カッコいいよね」って言ってくれる世の中になるまで頑張りたいですし、そのためには音楽性やジャンルという言葉で括ったらダメなんじゃないか、ということもすごく思ってます。

 例えば、韓国のBTSさんが世界のチャートを席巻していて、背景にはブラックミュージックを背負ってやっているけれども、BTSさんならきっとどんなジャンルや音楽性でもできるし、言語だって超越してやっているから、「こういうジャンルだよね」って言うのは終わってるんじゃないかと思ってます。そう考えると、音楽は総ミクスチャーになってきていて、日本の女性グループミュージックも「端から端まで全部集めてバッと出してみたものが面白いかどうかだよね」みたいな話になってくるじゃないですか。たぶんバンドも同じで、ギターロックとかポストロックとか、肩書きはいらないと思うんですよ。とどのつまりスマホで聴いてよかったらそれでいいわけだし、音楽ってそもそもそういうもの(難しく考えるものではない)だから。日本はまだまだその辺が保守的な感じがしますね。僕はさっき女性グループはあまり聴かないって言ったけど、忙しくしてるから聴く時間がないだけで(笑)、聴きたくないわけでは全くないし、むしろすごくいいものがたくさんあるんです。でんぱ組.incさんやBiSさんが音楽業界の中の女性グループという観念を変えただろうし、今だったらBiSHさんあたりが流れを完全に変えたし、うちはうちで一生懸命頑張っているつもりだし、それを見ていて心強いと思うからこそ、逆に僕たちは僕たちなりのやり方で音楽表現を提示していきたい。そのためにCDや音源を出し続けているのかなって。

ーー音楽性という垣根を越えていくために、特にこだわっているのは具体的にどういう部分なんでしょうか。

今村:例えばétéがそうなんですけど、ギターロックからバンドを始めたけど、オルタナやハードコアの良さに気付いて、混ざり合って楽曲ができ上がっていったんですよね。それは当たり前に認めていくべきだなと思っていて。新しくいろんなものが生まれていく中で、イノベイティブであればあるほど、最初は世間からは認められにくいじゃないですか。だから、おきまりのフックで〈WOW WOW〉って言ってるようなものじゃない独自性の高い音楽を、僕らが率先して称賛していくべきだなと思ってます。CD出す時にも、僕からアーティストに「これ売れると思う?」ってあえて聞くんですよ。そうするとみんな「わかんないです(笑)」って言うんだけど、それがすごく面白いなと思っていて。わかんなくても本人がちゃんと気に入ってるなら、何の問題もないんですよ。popoqの新譜制作でも同じようなことを話していて、「僕らは売れるかわかんないですけど、楽しくやりました!」みたいなことを言ってるから、すごくいい形だなと思いました。「これ絶対売れるでしょ」とセールス至上主義を掲げていくような会社だったら、今すぐにでも解散したいですね。てかすぐ辞めると思う(笑)。

été “Bipolar” Official MusicVideo
popoq「crystal」Music Video

ーーそういう今村さんの視点からは、カッコいいと思えたり、憧れたりするようなレーベルは少ないんでしょうか。

今村:いや、でも僕自身は好きなレーベルがめちゃくちゃたくさんあるんですよ。コドモメンタルを始める時に全く意識していなかっただけで(笑)。パンクで言うと<Epitaph Records>、ニューメタルの流れで<Roadrunner Records>とか<Rise Records>あたりは好きだし、ヒップホップでいうとたくさんありすぎて困るけど昔の<Def Jam Recordings>が好きかな。最近なら<Pure Noise Records>、<Warp Records>、<Brainfeeder>も好きですし、本当にたくさんあります。日本では<UK.PROJECT><残響レコード>なんかは当たり前に大好きですし、いわゆるレーベルっていう単位で取り上げられた人たちはやっぱりチェックしてますね。

ーー幅広いですね。

今村:レーベル買いもよくしますよ。特に海外に関しては、一式レーベル買いしたりしますから。

ーー<Brainfeeder>から<UK.PROJECT>まで、レーベルというのは「あの人が目をつけた音源なんだ!」ってことが、目に見えてカタログとして分かるところが面白いですよね。

今村:そうなんですよね。どのレーベルの方もきっとみんな音楽好きで、エンターテインメント性はしっかりありつつ、売れそうよりもまず「これ絶対面白い!」っていう想いが溢れてるんですよね。僕はそれを信じてるんです。いわゆる商業ベースじゃないものまで、そのオーナーが面白いって言うなら、そりゃあ面白いよねって。そもそも音楽って比べるものでもランキングがつくものでもなくて、自分が感じるものだから。<Roadrunner Records>の中にSlipknotとNickelbackが一緒にいる面白さとかすごく感じてましたし、レーベルのオーナーは偉大だなと感じてますよ。

ーー確かに、レーベル内で意外性を持ったアーティストが共存していると、なおさら面白いですよね。

今村:僕からすると、そういうところで少しでもリンク点が多くなって、知る機会が増えていったらいいなと思います。それが自然とレーベルの色になっていくし、アーティストはもちろん、もっと作家や裏方の人たちにも光が当たってくれると、より開かれた音楽業界になるのかなって。

ーーその実現に向けてやっていくのがコドモメンタルだということがよく伝わるお話でした。最初の質問で「立ち上げ当初は未来像はなかった」とおっしゃっていましたが、5年経った今となっては変わってきているんじゃないでしょうか。

今村:そうですね。これから僕は、レーベルの中で多様性を表現していきたいんです。今うちの中にはブラックミュージックを背景に敷いているバンドとかいないし、いわゆる音楽レーベルの中でそれをやれているのは、はっきり言うとメジャー傘下のレーベルしかないんですよね。インディーレーベルでは、どうしてもそこがカテゴライズされてしまっていて。僕、日本のヒップホップシーンではYENTOWNさんも大好きなんですけど、Chaki Zuluさんがしっかり音楽性を提示していて、その中にまるでおもちゃ箱みたいに面白い人がたくさんいるじゃないですか。Awichさんは今年メジャーレーベルに行きましたね。自分のレーベルでもそんなおもちゃ箱みたいな感覚を持ってもらえたらいいなって思うんですよ。得意不得意とか、界隈の垣根が取っ払われていくのをとにかく見たいんです。あとは例えば、野田洋次郎さんがYENTOWNのkZmさんとコラボしていたり、宇多田ヒカルさんとKOHHさんのコラボもそうだけど、ああいうものはもっと見たいです。何百万枚も売ってるアーティストが、若手アーティストをフックアップするような夢ってやっぱりいいですよね。

 すごく酷なことを言いますけど、特にヒップホップなんてすぐ青田買いされてメジャーに出て行って、シーンがちゃんと育つ前に難しくなってしまった。実はギターロックもきっとそうで、ギターロックヒーローが生まれてからはあんまりバンドが出てこれていないんですよね。そのカテゴライズを大切にするよりも、もっともっとお鍋の中に入れていこう、もっとみんなが面白くできることってあるでしょって思うんです。より健全で純粋な音楽好きが楽しく集まっていけば、もう少し変わっていくのかなと思います。今年『VIVA LA ROCK』の鹿野(淳)さんが、popoqのCDをタワーレコード渋谷店のうちの棚で手にとってフェスに呼んでくれたんですよ。

ーーコロナ禍さえなければ、今年のビバラに出る予定でしたもんね。

今村:残念でしたけど、そんな面白いことってなかなかないよなと(笑)。あと、BATROICA METAL SUMMER JACKETっていう新しいバンドが所属してるんですけど、カナダのプロモーターが「絶対呼びたい」って声をかけてくれたんですよね。結局それもコロナウイルスでダメになってしまったんですけど、すごくワクワクした話だったなって。そうやって垣根を越えた音楽業界になって欲しいからこそ、自分が今やってるんだっていう感覚ですね。

コドモメンタル HP
コドモメンタル Twitter(@codomomental)

連載「次世代レーベルマップ」バックナンバー

Vol.4:<[NOiD]>永井優馬氏
Vol.3:<TRUST RECORDS>綿谷剛氏 
Vol.2:<murffin discs>志賀正二郎氏
・Vol.1:<small indies table>鈴木健太郎氏 前編後編

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