Aqoursが沼津から届けた最大限のエール “地元愛”精神に溢れた『シブヤノオト』SPでのパフォーマンスを観て

 実際のパフォーマンスも振り返っていこう。『シブヤノオト』のステージは、三津シーのイルカたちの演技を織り交ぜた内容だったが、イントロの時点でまず唸ってしまったのが、彼らの飛び込む水しぶきが、リアルな“水”の音として楽曲に新たなエッセンスを与えていたことである。まさに、海辺の町である沼津らしさをサウンドに還元した素晴らしいポイントだった。あわせて、ステージ上のパフォーマンスに影響を及ぼさぬよう、メンバーの足場を濡らすことなく巧みに演技をしていたのも高く評価されるべきかと思われる。

 一方、キャスト陣においても、鈴木愛奈(小原鞠莉役)のウインクをはじめ、全員のかわいらしいカメラ目線や、人魚をイメージしたような、MVそのままの光沢感ある衣装が非常に映えるひと時だった。長い梅雨を吹き飛ばすかのように、アッパーなトラックの上でピュアな恋心を表現する姿はとても印象的だったが、なかでもセンターを務める斉藤のとびきりに輝く笑顔は、間違いない“エール”として視聴者にも届いたことだろう。さらに、魚たちをキュートに手招く振り付けを経て、サビの〈Yeah!〉のコールでは、イルカたちが一斉に華麗なジャンプを披露するなど、まさに歌詞にある〈海色ゲート〉の光景を体験するかのようだった。

 そもそも、“Aqours”というユニット名だからこそ、いずれは“水”の演出を取り入れたライブがあることをぼんやりと期待もされていただろう。しかしながら、実際のライブ会場に水槽などの大掛かりなセットを組むハードルの高さは想像に難くない。だからこそ、今回の『シブヤノオト』でのステージは、ファンが以前から本当に見たかった光景を届ける最適解ともいえるのだ。

 もちろん、楽曲の華やかさを押し出すならば、スタジオに相応のセットを設けるパターンも考えられるが、Aqoursは今回のステージで、音楽を通して沼津から全国に贈る“エール”を、彼女たちの言葉で言えば“地元愛”精神を届けたかったのだろう。今回のオンエアとは関連しないながらも、今後開催予定のドームツアーの詳細がちょうど発表されたタイミングだっただけに、5周年プロジェクトの幕開けを飾るに相応しい会場選びだったに他ならない。

 また新しい思い出を沼津に刻み、“地元愛”精神を発揮してくれたAqours。今回のオンエアを機に、彼女たちが沼津に残している足跡を辿りながら、その土地の温かさに触れる夏休みを過ごしてみるのはいかがだろうか。

◼︎一条皓太
出版社に勤務する週末フリーライター。ポテンシャルと経歴だけは東京でも選ばれしシティボーイ。声優さんの楽曲とヒップホップが好きです。Twitter:@kota_ichijo

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