『CYNHN Streaming LIVE「Ordinary Blue」』
CYNHN、2部構成の配信ライブに感じた成長ぶり 映像演出とアコースティック、それぞれ用いて伝えた“歌”を聴いて
第2部の「Ordinary Blue -PM:2:00」は18時に開始。バンドセットが置かれたステージにCYNHNが再登場した。「水生」から「空気とインク」と続いたが、かつて「空気とインク」でメインボーカルを務めたメンバーはもういない。それでも、ミュージカルを見ているかのような感覚になるほど豊かな表情で歌いあげるメンバーたちの姿に心打たれた。
「トゥインクルスター」からは、アコースティックギター、ドラム、キーボードを伴奏にしたアコースティック編成へ。シンプルなサウンドになり、個々の歌の表情がより前面に出てくる。「アンフィグラフィティ」に続いて歌われた「So Young」では、メインボーカルを務める青柳透が実にいきいきとした表情で歌った。
CYNHNは、もともとオーディションのグランプリが崎乃奏音、準グランプリが綾瀬志希であり、審査員特別賞を受けたメンバーとともに結成されたという経緯がある。そのため、崎乃奏音と綾瀬志希がボーカルを牽引してきたが、歌のニュアンスも深くなった青柳透、表現力がより豊かになった月雲ねる、明らかに声量の増した百瀬怜と、全員による底上げも目覚ましい。そんな成長ぶりも配信ライブで再確認した。
緊急事態宣言中にリモート撮影したMVが公開された「Redice」では、やっと5人揃って生で歌われたことに感慨を抱いた。そして、綾瀬志希は背後のミュージシャンたちのほうを向き、演奏に呼応しながら歌う。
「リンクtoアクセス」からは再びオケに。「タキサイキア」ではメンバーがカメラに近づいて歌い、画面越しに見ているファンへと歌いかけていた。「ラルゴ」に続いて、この日3回目となる「ごく平凡な青は、」へ。ユニゾンは鮮やかにして美しい。ロシア語で「青」を意味するグループ名のCYNHNだが、未完を意味する「青」から着実に脱していることを感じさせた。
アンコールでは、この日が3rdワンマンライブだったことや、新体制で初めてのワンマンライブだったことも語られた。配信後に明かされたが、この日の会場は、1,100人キャパの横浜ベイホール。本来なら、ここにファンを集めるはずだったのだ。
CYNHNは、2021年9月23日までに3,000人キャパの会場を埋めるという目標を2019年9月23日の2ndワンマンライブ以来掲げているが、百瀬怜はその目標を諦めていないと明言した。崎乃奏音は涙が溢れるなか、「私たちをたくさん引っ張ってきてくれた曲で、3,000キャパにみんなとこの曲を連れていきたい」と語り、「はりぼて」が最後に歌われた。
コロナ禍は、エンターテインメントのあり方を根底から揺さぶっている。しかし、現在のCYNHNは、初期を知る者にとっては感慨深いほどの歌声を聴かせてくれた。それは希望に他ならない。無観客でも、配信でも、現在のCYNHNは歌で聴く者の胸を揺さぶることができる。そんなことを確信させてくれたのが『CYNHN Streaming LIVE「Ordinary Blue」』だった。
■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter