BiSH、個性的なメンバーと“変わらない軸”が魅力に WACK所属グループの特性を分析
BiSHを愛着が沸くキャラクターにしているのはハシヤスメ・アツコの影響が強い。BiSHのワンマンライブではライブ中にコントのコーナーがある。コントの構成や内容は彼女が中心になって演じている。そこではハシヤスメ自身が様々な表情で演技をし、他のメンバーに絡んでメンバー全員の隠れたキャラクターを引き出している。当初はファンからも賛否が分かれていたが、だんだんとコントのクオリティは上がり、今では笑いもしっかりとれる上にメンバーの新しい一面も知ることができる重要なコーナーになっている。BiSHがカッコいいだけでなく親近感あるグループになったのは、彼女の努力の賜物だ。
2016年に加入したアユニ・Dは最後にBiSHに加入したメンバーである。加入当初は後輩で一番年齢も低いこともあり自信なさげで大人しかった。それが今では独特な歌唱と表現力で中心メンバーになっている。可愛らしくも力強い歌声は、唯一無二の魅力を持っている。ソロプロジェクト・PEDROではベースボーカルに挑戦したりと幅広く活動している。それは加入当初は想像できなかった。BiSHの活動はアユニ・Dの成長物語としての面白さもある。
彼女たちの魅力を最大限に引き出している楽曲も魅力だ。初期は歪んだギターが印象的なバンドサウンドだったが、現在はアリーナやスタジアムが似合う壮大なロックアンセムを次々と生み出している。メンバーの成長に合わせて楽曲も進化しているのだ。ユニゾンで歌うことが少ないことも特徴である。
しかし7月22日に発売される3.5thアルバムの表題曲「LETTERS」のサビは3人ずつユニゾンで歌われている。〈あまりに突然 世界が/予告もなく変わり果ててしまって〉というフレーズから始まる同曲は、コロナ禍の現在を歌っているようだ。サビでは〈全て届けるよ胸の中〉と宣言し〈見えない明日は待たない/今もあなたの無事を祈る〉とメッセージを送る。メンバー全員がユニゾンで歌うからこそ、より歌声が力強くなる。
歌割も含めてBiSHは変化と進化を続けている。しかし「楽器を持たないパンクバンド」としての精神を忘れずに、より真っ直ぐメッセージを伝えることを大切にしている。そこにおいて、BiSHは決して変わらない。変化しつつも軸は変わらないことがBiSHの最大の魅力だ。
■むらたかもめ
オトニッチというファン目線で音楽を深読みし考察する音楽雑記ブログの運営者。出身はピエール瀧と同じ静岡県。移住地はピエール中野と同じ埼玉県。ロックとポップスとアイドルをメインに文章を書く人。
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