新星シンガー Nazに初インタビュー ロンドンで受けた刺激、自身の音楽への理想を語る

新星シンガー Nazに初インタビュー ロンドンで受けた刺激、自身の音楽への理想を語る

 光と影の両方を含んだNazの声は美しく、アンニュイだが人の心のすっと染み入るような純粋な輝きを感じさせる。冨田ラボや江﨑文武(WONK)がプロデュースを手掛けたデビュー作『JUQCY』以来となる新曲「7-Knife(切)」が7月22日にリリースされた。引き続きプロデュースを担当したのは冨田ラボ、オーロラの光に包まれるような霊妙なエレクトロサウンドは、前作にはなかった壮麗さを持っている。彼女をより広い舞台へと連れ出すような分厚くダイナミックな音像は、Nazの「壮大な空間にしたい」という気持ちを具現化したものだろう。

 『JUQCY』をリリースしたのち、かねてから望んでいた語学留学のため渡英。ロンドンで生きたカルチャーに触れ、一層感性を磨いてきての新作である。年明けの帰国から故郷沖縄で制作を続けているNazに、リモートで話を聞いた。(黒田隆太朗)

ロンドンでの経験とコロナ禍で立ち返った“ルーツ”と“歌い始めた理由”

ーーロンドンにはどのくらいの期間滞在していたんですか?

Naz:3カ月くらいです。2019年の秋から今年のはじめくらいまで向こうの語学学校に通っていて、ハロウィン、クリスマス、お正月はすべて体験できました。学校には日本人が多くて、あとはトルコ人とブラジル人も結構いましたね。ロンドンは建物も可愛くて、歩いていると街の広告ひとつ取っても全部がアートでした。

ーーずっと憧れの街だったと言っていましたが、現地で音楽には触れていましたか。

Naz:ロンドンに行って一週間くらい経った時に、SOIL & “PIMP” SESSIONSのライブがあって、ソーホー(ロンドンのシティ・オブ・ウェストミンスターにある一地区)にあるロニースコッツというロンドンを代表するジャズクラブに観に行きました。あとは学校のイベントで現地のクラブに友達と行ったり、DYGLのNobuki Akiyamaさんと滞在期間が被っていたので、一緒にFKAツイッグスを観に行きました。

ーーご自身の歌う機会は?

Naz:Akiyamaさんに紹介してもらい、日本人の方が営んでいるFURUKI YO-KIMONO VINTAGEという着物屋さんのイベント、『Yokimono Japanese Christmas Market』で歌いました。そのイベントに出展していた他のお店の方とも仲良くなったのですが、そこにいたイギリス人の17歳の男の子がヒップホップをやっていて。自分の家に機材やレコーディングセットも揃っているから、友達を呼んでアルバムを次々にリリースしていたんです。それが刺激的でした。

ーー音楽の根付き方が(日本とイギリスでは)違いそうですね。

Naz:私はいつも歌う時には「よし、歌うぞ」と意気込んでしまうのですが、現地の人はとても自然に音楽をしていて自信があるし、リラックスして純粋に音楽を楽しんでいるように感じました。

ーー海外に行くことで、相対的に日本人としてのアイデンティティを確認したところはありますか。

Naz:憧れの地に実際に行ってみたら、洋服屋さんには和風のデザインが多くて。ドラゴンの刺繍が入ったワンピースとかをよく見ました。

ーーなるほど(笑)。

Naz:生まれ育った場所のファッションが、憧れを抱いていた場所でカッコよく取り入れられていて、アジアから来た自分も嬉しくなって、今までより自分のルーツやカルチャーに誇りを持てました。

ーーアジアのファッションが取り入れられているということは、音楽でも勝負できるとも捉えられると思うんですけど、Nazさんはどう感じましたか。

Naz:私は個性的なものを作りたいと思っています。海外で評価されるために、海外っぽいサウンドを追及するだけではないという、その部分は以前とは変わらないです。ただ、自分の音楽のままでも海外の方に聴いてもらえるかもしれないという自信は強くなりました。

ーー音楽の趣味が変わったりはしましたか?

Naz:それが、全然変わらなかったんです。きっと自分はロンドンに行って変身して帰ってくるんだろうなって、全部がバージョンアップするような魔法みたいなことを考えていたんですが、良い意味でも悪い意味でも自分は変わらなかった。音楽の好みとか自分の目標、作品を作っていく上での心持ちは変わらないまま、自分を信じようという気持ちが強くなりました。オリジナルなものを作りたい、誰も聴いたことがない新しいものを作りたいという気持ちでいます。

ーーそれで言うと、日本に戻ってからちょうどコロナ禍になり、気持ちを新たにした中、歯がゆい部分もあるのではないかと思います。ステイホーム期間は、どんなふうに過ごしていましたか。

Naz:制作は続けていましたが、コロナウイルスだけでなくいろんな社会的な問題が起こっているので、考えさせられることが多かったです。そしてそうした問題が起こる度に、私も何か発信しようと思い、自分はSNSをどうやって使っていこうか、そこでどんなことを書いていこうかと考えたんですが、インターネットだと話し言葉で自分の気持ちが書けなかったんですよね。でも、そう思った時に、元々自分が歌い始めた理由が「気持ちを言葉で伝えるのが苦手でも、歌でなら表現できると思ったから」だというのを思い出して。

ーー社会への関心も、あくまでも音楽で表現しようと。

Naz:はい。それで、この時期にだからこそ書けるものをちゃんと残していこうと思いました。自分の心と向き合って、今作れる作品を残せていけたらと思って曲を書いています。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる